●森晶麿『葬偽屋は弔わない 殺生歩武と5つのヴァニタス』河出書房新社 | 新・駅から駅までウォーキング

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森晶麿
 『葬偽屋は弔わない 
      殺生歩武と5つのヴァニタス』
        河出書房新社  2015.10.30発行



葬偽屋は弔わない: 殺生歩武と5つのヴァ二タス/河出書房新社
¥1,728
Amazon.co.jp



★本の内容(Amazon.co.jpより)
   
自分が死んだら周りの人たちはどんな反応す
るんだろう。
その願い<葬偽屋>が叶えます。
人の本音が見えてくる本格人情ミステリ!


どうしても知りたいあの人の本音、断たねば
ならないこのご縁、死んだらどうなるか…
“葬偽”でのぞいてみませんか!?


★ここだけの話


葬偽屋の「偽」の字は決して間違っているわ
けではありません。
偽の葬儀を行なって、自分の死んだあとの世
界やまわりの人の反応を見たいと願う人たち
のお手伝いをするのです。
これは商売ですから、決められた料金を払っ
てもらいます。


こうした発想はすごくおもしろいです。


阿佐ヶ谷駅北口にある臨済宗のお寺・煩悩寺。
あまりはやっていないこの寺の現在の住職は
殺生歩武(せっしょう・あゆむ)といいます。
そして突然この仕事のアルバイトになったの
がセレナです。


この2人を中心に5つの偽の葬儀を持ちかけ
られる短編が収録されています。


いつもの黒猫と付き人が主人公の小説とは違
い、小難しい要素は極力省かれていますが、
それでも作者特有の芸術に関する概念は、登
場人物の言葉として現れます。
例えば、アレゴリー。
これは芸術において抽象的なものに一つの具
体的な形象をあたえることだそうです。
また、タイトルにも登場しているヴァニタス
とは、日本風にいうと「もののあわれ」とな
ります。


やはり難しいと思って読んでいると、その部
分は流し読みしても何ら問題のないことがわ
かりました。
軽妙な会話に心地よさを感じて、最後は納得
してしまうという作者の思惑通りの読後を味
わうことができます。
芸術論だの美学だの図像学といったことは、
はしょってかまわない。
これが森晶麿ミステリの正しい読み方だと思
いました。