●森晶麿『黒猫の刹那あるいは卒論指導』早川書房 | 新・駅から駅までウォーキング

新・駅から駅までウォーキング

歩けるうちは歩きましょう!

森晶麿『黒猫の刹那あるいは卒論指導』
       ハヤカワ文庫  2013.11.15発行 
 

黒猫の刹那あるいは卒論指導 (ハヤカワ文庫JA)/早川書房
¥735
Amazon.co.jp


★本の内容(Amazon.co.jpより引用)


大学の美学科に在籍する「私」は卒業論文と
進路に悩む日々。
そんなとき、唐草教授のゼミでひとりの男子
学生と出会う。
なぜか黒いスーツを着ている彼は、本を読み
耽るばかりでいつも無愛想。
しかし、ある事件をきっかけに彼から美学と
ポオに関する“卒論指導"を受けて以降、
その猫のような論理の歩みと鋭い観察眼に
気づきはじめ……。


『黒猫の遊歩あるいは美学講義』の三年半前、
黒猫と付き人の出会いを描くシリーズ学生篇。


★ここだけの話


森晶麿の黒猫シリーズが発売されると、必ず
読みます。
第1回アガサ・クリスティー賞を受賞した
「黒猫の遊歩あるいは美学講義」。
次の作品は、
「黒猫の接吻あるいは最終講義」。
3作目は、
「黒猫の薔薇あるいは時間飛行」。


不思議な魅力をもつ「黒猫」は唐草教授がつ
けたあだなで、本名はわかりません。
同様に、この物語の1人称の主人公も「付き
人」として登場します。
この2人がいろいろな謎に対して、実に美し
い解答に導いてくれます。


名前のよく分からない2人の最初の出会いを
さかのぼって教えてくれるのが、今回の作品
『黒猫の刹那あるいは卒論指導』です。
形式は文庫オリジナルなので手軽に買えます。

ただミステリとして読むより、2人の間を読み

解くほうが楽しいかもしれません。


タイトルにもある通り、卒論を書かれる方に
は、まさに打ってつけの内容です。
巻末のインタビューにも載っていますが、
「研究とは何か」について作者の持論=黒猫
の指導はなるほどと思わせてくれる箇所が、
たくさんあります。
結構役に立つのではないでしょうか。


しかし大学卒業後、パリに2年間留学。
帰国後はわずか24歳で母校の教授に就任。
黒猫はスーパーマンですね。
一方、同級生だった主人公の「付き人」は
ごく普通に進級し、今は博士課程1年生。
ポオの研究者の道を歩んでいます。


この2人の現在はというと、着物を着て一緒
に初詣に出かけたところです。
黒猫と付き人の未来はどうなるのか。
次の作品が楽しみです。