●三上延『ビブリア古書堂の事件手帖4~栞子さんと二つの顔』メディアワークス文庫 | 新・駅から駅までウォーキング

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三上延 『ビブリア古書堂の事件手帖4
             ~栞子さんと二つの顔』



      メディアワークス文庫 2013.2.22発行 

ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)/アスキー・メディアワークス
¥599
Amazon.co.jp


★本の内容(本の裏表紙より)


珍しい古書に関係する、特別な相談――謎めいた依頼
に、ビブリア古書堂の二人は鎌倉の雪ノ下へ向かう。
その古い家には驚くべきものが待っていた。
稀代の探偵、推理小説作家江戸川乱歩の膨大なコレク
ション。
それを譲る代わりに、ある人物が残した精巧な金庫を
開けてほしいと持ち主は言う。
金庫の謎には乱歩作品を取り巻く人々の数奇な人生が
絡んでいた。
そして、迷宮のように深まる謎はあの人物までも引き
寄せる。
美しき女店主とその母、謎解きは二人の知恵比べの
様相を呈してくるのだが――。


★ここだけの話


文庫書き下ろしの作品で、シリーズ4冊目になります。
今までとは違い、長編のスタイルをとっています。

CX系列でテレビドラマ化されているので、一躍誰も
が知っている有名な小説になってしまいました。
でも、本とテレビではかなり違っている部分も多く、
ガッカリさせられているところもあります。


主人公の五浦大輔が働くビブリア古書堂。
この店の店主、篠川栞子が客の持ち込む謎や秘密を
鮮やかに解き明かします。
もちろんここは同じなんですが、彼ら2人のキャス
ティングが、今までイメージしてきたものとかなり
違います。
また篠川栞子の妹・文香が弟に設定変更されています。
せどり屋の志田にいたっては、橋の下で暮らしている
のに、テレビではビブリア古書堂に住んでいることに
なっています。
古書堂のある場所も北鎌倉駅の線路沿いでホームから
すぐ見える位置にあるのですが、テレビでは住宅街の
中になっています。
これらが今後の展開に影響しなければ良いのですが。


作者は文章の中にかなり伏線を張りめぐらしています。
上に書いたいくつかのことも、物語の進行上とても
大事な部分だと思いますが、テレビドラマ化すると
そうした細かい箇所は変えてしまわれるのかもしれま
せん。


ミステリとしての『ビブリア古書堂の事件手帖』は
とても好きです。
まず、「謎」とその解き明かす過程がおもしろいと
思います。
人物もよく描けています。
古書の周辺情報に詳しくなります。
しかし何より、私の生きてきた世界を表現してくれて
いるのです。
戦後に生まれ、小学校の図書館で「江戸川乱歩」を
すべて読み、そのあと「ホームズ」と「ルパン」の本
を残らず読みつくすと言った内容が書かれていますが、
まさにその通りでした。


今回ビックリしたことと言えば、「二銭銅貨」の点字
部分に誤りがあり、それを改訂時に改めていたこと
でした。

江戸川乱歩のこともかなり詳しく書かれていて、巻末
に記された参考文献だけでも膨大な量となっています。
作家の方って大変だなと思いました。


そしてこの4作目の目玉。
それは10年以上音信不通だった母親の篠川智恵子が
登場することです。
最大の「謎」がここなのですから、物語は後半に突入
したと言えるでしょう。
さらに2人の初デートもうまくいったようです。


次回作がとても待ち遠しいです。
でも、このシリーズ、永遠に終わってほしくないと
思うのは私だけでしょうか。


『ビブリア古書堂の事件手帖』は、ここ最近のミス
テリの中で一番好きです。