●竹本健治 『かくも水深き不在』 新潮社 | 新・駅から駅までウォーキング

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メモ人格を 暴いた医師も 消えてゆく本 
 
竹本健治 『かくも水深き不在』 
                 新潮社 2012.7.20発行 


かくも水深き不在/新潮社
¥1,680
Amazon.co.jp


★本の内容(Amazon.co.jpより引用)  


見られた者が鬼になる――。
精神科医・天野不巳彦が遭遇した4つの怪しい物語。
最初は子どものころの冒険だった。
そのとき僕は鬼の眼を見たのだ。
闇に咲く光。
記憶の底に浮かぶ人影。
忌まわしい事件の謎。
それらは何を伝えようとしているのか。
物語に引き寄せられる天野の、暗い淵を見つめるまな
ざしの行方は? 
最後に解き明かされる真相もまた深い淵の二重写しに
……存在の不安を呼び覚ます、鬼才の恐怖譚。


★ここだけの話


久々に竹本健治の小説をとりあげます。

竹本健治と言えば、『匣の中の失楽』でデビューし、
あの中井英夫の『虚無への供物』と同様の感動を覚え
ました。
その後『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』『トランプ
殺人事件』のゲーム3部作を発表。
さらに小説の中に本人や綾辻行人、小野不由美、島田
荘司ら現役の作家が登場する『ウロボロス』シリーズ
や牧場智久、キララ・シリーズなどで活躍しています。


この作品『かくも水深き不在』は最初に4つの短編が
登場します。
そのどれもが一見つながりのない小説に見えますが、
登場人物は精神科医・天野不巳彦の治療を受け
ているという共通点があります。

最後の1編で天野不巳彦による集団療法で謎の解明が
始まります。
4つの小説の主人公である4人の男たちが集められ、
医師の手で事件の真相にせまっていきます。
結論は多重人格、交代人格ということでしょうか。


そして医師も本人ではないと言う。
なにやら人格の迷宮に迷い込んでしまったようです。
竹本健治らしい、すべてをスッキリさせようとしない
やや難解な小説です。
でも、おもしろい。
そこがこの作者のすばらしいところだと思いました。