クリナム
今年はもう咲かないかと思っていた兵庫島の北向きの斜面の
クリナムが、ヒガンバナ科の植物の特徴である、根元から数日で急激に
伸ばす茎の先端に、ユリのような形の純白の花を放射状に咲かせている。
全世界で180種類を数えるクリナム(Crinum)の仲間達。
我が国でよく見かけるハマユウは Crinum asiaticum種であり、
日本植物園協会誌No.38 Page.79-87 (2004.03)で坂崎信之さんは
「1900年当時、小石川植物園で栽培されてい外国産のクリナムが誤って
Crinum latifoliumと同定されたため“インドハマユウ”と名付けられたが、
その後、2001-2002年に,残されていた標本について再同定した結果,
本種はCrinum.bulbispermum=アフリカハマユウであることが判明した」
と記載している。
Crinum.bulbispermumの和名は“アフリカハマユウ”であり、
Crinum latifoliumはインドハマユウ。
誤って同定されるほど良く似ているアフリカハマユウとインドハマユウ。
今週から花を咲かせている兵庫島のクリナムはアフリカハマユウのように思う。
彼岸花と同じく窒素原子を持つ天然塩基性物質のアルカロイドを
含むクリナム類。南アフリカの原住民である狩猟民族にとって、この地を
原産とするアフリカハマユウから抽出したアルカロイドは矢毒の格好の素材だった
ようである。
冬の雪で一度地上部は姿を消すが、また春になって大きく成長する
アフリカハマユウ。
例年より遅いが、その白い花達が今年もニセアカシアの木陰を
明るくしてくれている。
極道めし
どこか心惹かれるタイトルの「極道めし」。
本作は、“食べる”という人間の根源的欲求をテーマに、
黄身が輝く新鮮な卵、蓋を開けた土鍋から立ち上る炊きたての
真っ白いご飯、地場の野菜の糠漬けなど、日本人が最も食べたい
食材・料理を、最も美味しそうな色彩、形で映像化することに
成功した作品である。
それと同時に、本作は、少年時代から親の愛を知ることなしに育ち、
ヤクザとしての生活の中で料理に込められた愛情を理解する心を
忘れてしまった男が、お正月のご馳走を賭けて、同じ房で刑期を
務める男達が繰り広げる人生で一番美味しかった“料理”の話の輪に
加わることで、その心のひび割れを修復していく過程を描いている。
料理を題材にした映画が数ある中で、本作ほど、
日本の庶民の味を美味しそうに写し取りまた食べる作品は希有であろう。
一番美味しかった料理はその人の過去の人生そのもの。
前田哲監督の思いを色濃く反映しているヤクザの心象を演じるために
徹底的な役作りを命じられた永岡佑を始め勝村政信、麿赤兒の姿が
秀逸であり、食材・料理が一番美味しそうな状態を撮影するため、
スタジオに隣接するキッチンに集められた料理の専門家集団
そして数々の場面で光る照明・斬新なセット製作のプロ達。
日本の文化に根ざした日本映画の実力を感じた作品であった。




