第39稿 「声楽の世界:Addio,Corindo(さようなら、コリンド)」
前回ご紹介した通り、彼はオラトリオの最初の作曲家であるジャコモ・カリッシミのお弟子さんです。
師弟そろって素晴らしい作曲家だったという事ですね。
私個人の意見ですが、お師匠さんのカリッシミよりもお弟子さんのチェスティの方が好みです。
この曲は「オロンテア」というオペラの第二幕9場で、エジプト女王オロンテアに仕えている侍女シランドラが、恋人のコリンド→アリドーロに心変わりする場面のアリアです。(恐ろしいですねw)
しかもその後、よりを戻そうとしたりするのでハチャメチャです。
まあ、その変が「劇」の面白い所ですよね。
背景は分かっても、歌うときは悲しげに歌ってください(笑
この曲は大まかに言うと3部構成になっており、最初にレチ(セリフ的音楽)が来て、その後に本当のアリアが来て、最後はレチの再現で構成されています。
なので、あまり出だしから無理しないでください。
慣れるまでは、「最低限の響きだけ+呼吸を流しながら」を意識するだけで良いと思いますね。
アジリタ(音楽の話し言葉として、『よく動くパート』を指す言葉です)などが大変になりますが、本来の魅力は第二部のアリアに凝縮されていますので、そちらの解釈・発声技術向上を進めた方がスムームに慣れると思います。
前回の曲といい、かなり私好みの曲です。
お師匠さんのカリッシミより好きかもw
悲しみを秘めたメロディーに漂う、バロック独特の美しさをご堪能ください・・・。
★動画批評
声種:リリコ・スピントのソプラノ(ちょっと重い発声な気がします)
歌唱法:だいぶハデな歌い方ですね。できればバロック音楽的に叙情的に表現して欲しいかも。
発音:正直「何人?」と思います。「アッディオ」が「アッヅィ(?)オ」になってます。この特徴はよくアメリカ人に見られます。(この人はどこの人か分かりませんでした)
発声:かなり呼吸を酷使して声量と音域を確保しています。ちょっと無茶ですね。そのかわりに、声の響きを当てる場所(ポイントとかアンザッツの呼び名で使われています)に、かなり当て馴れていますね。だから美しく響いて聞こえます。
※歌詞
(recit) (叙唱)
Addio,Corindo,addio! さようなら、コリンド、さようなら。
Rivolto ad altra sfera, あの世に向かった今、
della fiamma primiera 私の不幸な心は
non si rammenta più l'egro cor mio. もはや昔の炎を思い出しはしません。
Addio,Corindo,addio! さようなら、コリンド、さようなら。
(aria) (アリア)
Vieni,Alidoro,vieni, 来て、アリドーロ、来て。
consola chi si more! 死に行く者を慰めて。
E temprando il mio ardore そして私の熱情を鎮め
godi in grembo a Silandra i dì sereni! シランドラの胸で爽やかな日々を楽しんで、
Vieni,mia vita,vieni! 来て、私の運命であるひとよ。
※参考「イタリア歌曲集」より 歌詞対訳:戸口 幸策

第38稿 「声楽の世界:Tu mancavi a torment armi」
今回ご紹介する曲はアントニオ・チェスティによる作品です。
この方は、前回ご紹介したジャコモ・カリッシミさんのお弟子さんらしいです。
この曲もバロック期における作品ですので、現在のピアノ伴奏では味わえない独特の哀愁に満ちています。
ただし、声楽の初心者の方には少々難しいかもしれませんね。なぜならば、
第一に、半端に高い音が連続している事。(そこがまた良いんですけどね)
第二に、音と音の高低差が少なく、発声が重くなってきやすいです。(全声種に適応)
第三に、第二主題的役割の中盤が高度な技術を必要とします。(そこがまた面白い)
これらを解決するには、基本的に発音・発声技術の向上を目指すことが大事ですが、同じくらい「自分の呼吸」を大事にした方がいいでしょうね。
その理由として、この曲は全体的にベルカント・オペラ期(約18~19世紀)(ベッリーニ、ドニゼッティなど)に似た音の並びになっていますので、「流れる呼吸、なめらかな発音、美しい響き」を念頭に置くと、この作品を克服する上での助けになるかもしれません。
詩的表現と哀愁に満ちた、味わい深いバロックの曲をご堪能ください。
★私個人の動画批評:
声種:軽めのバリトン声ですね。重いテノールもできそうな声です。
歌唱法:少々ビブラートが揺れすぎて安定感が少ないです。
発音:発音はよく聞こえますが、イタリア人的な発音とは少々違うポジションで発声してます。
発声:アクートが美しくありません。マスケラも弱く、まだアゴ声(0:04の「マ」など)が残っています。とはいえ、高い発声技術をうかがわせるのは、共鳴と呼吸がうまくバランスが良いからだと思います。
※歌詞
Tu mancavi a tormentarmi, お前は私を苦しめていなかったのに、
crudelissima speranza, 限り無く残酷な希望よ
e con dolce rimembranza 甘い追憶をもって
vuoi di nuovo avvelenarmi. 私を新たに苦しめようとする。
Ancor dura-la sventura 灰になった炎の災いは
d'una fiamma incenerita, 今も残り、
la ferita-ancora aperta まだ口を開けている傷は
par m'avverta-nuove pene. 私に新たな苦しみを告げているようだ。
Dal rumor delle catene 私は鎖の響きから
mai non vedo allontanarmi. 遠ざかれそうもない。
※参考「イタリア歌曲集」より 歌詞対訳:戸口 幸策

第37稿 「歌手の音域・声種について」
そういえば最近、何人かの方々から声の種類についての疑問があったので掲載しときます。
もちろん、これは半分くらい私の独断も入りますが、基本的には声楽界でよく使われる声の「基準」です。
まず、音域ですね。
声域(キー)を重い順番からご紹介すると
声域:
男声:バス⇒バリトン⇒テノール⇒カウンターテナー(以下略)(アルト)⇒(メゾ)⇒(ソプラノ)
女声:アルト(別名コントラルト)⇒メゾ・ソプラノ⇒ソプラノ
となっています。
さらに、それぞれの中にもちょっとした種類があります。
それが「重い(強いと表現する人もいます)響き⇒軽い(細いと表現する人もいます)響き」の「声種」と呼ばれるものです。
以下に掲げるのがそうです。
声種:
ドラマティコ⇒スピント⇒リリコ⇒レッジェーロ
となっています。
もちろん、世の中には「特別な声」を持った方々もいらっしゃるので、必ず当てはまるわけではありません。
そのことについては以前に掲載した記事URLをご紹介しておきますので、気になる方はそちらをご覧ください。
http://ameblo.jp/kuni15/entry-10847390653.html
要するに、パヴァロッティやマリア・カラスのように、レッジェーロ(最軽量の声)なのにドラマティコと呼ばれる方々もいらっしゃいますし、フィッシャー・ディ・スカウのようにテノーレ・スピントなのにハイ・バリトンをする方もいらっしゃいます。
ちなみに話し声から推測すると、日本の芸能人で例えると次のようになります。
話し声だけから推測した芸能人の声:
バス:中尾明、お笑いコンビ「麒麟」(の声低い人)、ミッツ・マングローブ
バリトン:V6(井ノ原)、ネプチューン(原田泰造)、市川海老蔵
テノール:タモリ、藤原竜也、ダウンタウン
アルト:MEGUMI、和田アキ子
メゾ・ソプラノ:小池栄子、お笑いのハリセンボン(太い人)
ソプラノ:山口もえ、小林麻耶、山崎バニラ
という感じですかね?
実際にはしっかり発声している状態からじゃないと、バスとバリトン、バリトンとドラマティコ・テノールの区別は難しいですので、これはあくまで推測になります。
少々長くなりましたが、他にもそれぞれの音域で表現される声種もまだ沢山あります。
興味のある方はそれぞれの声種についてググってみてくださいね。