ブログ主です。当ブログへのご訪問ありがとうございました。
日中の気温がぐっと下がり、すっかり秋。気がつけばスーパーマーケットの棚には様々な鍋のスープが並んで・・
食卓には鍋が置かれ、湯気の向こうには笑みを浮かべた家族の顔が・・・
熱い鍋をハフハフ言って皆で食べる幸せ。
ふと思う今年も後3ヶ月。一年の四分の三が過ぎた。
年老いた両親は、今年はここまで大きく体調を崩さずやって来れた。
このまま大過なく年が越せたら・・と想う。ある日。
閑話休題
はい、それでは本の紹介へと参りましょう。本日紹介する作品は・・
降田天さんの『事件は終わった』です。
いつも通りあらすじ紹介から参りますのでよろしくお願いします。
【あらすじ】
年の瀬の地下鉄電車内、男は、奇声を発しながら刃物を振り回して妊婦を切りつけ、助けに入った老人を刺殺した後取り押さえられ逮捕された・・・時は過ぎ、事件に偶然居合わせてしまった人々には、日常が戻ってくるはずだった・・
【解説】
①本作の著者は降田天さん
本作の著者は降田天さん(ふるた てん)は、執筆担当の鮎川 颯(あゆかわ そう)とプロット担当の萩野 瑛(はぎの えい)による作家ユニット。
2007年、鮎川はぎの名義で『横柄巫女と宰相陛下』が第2回小学館ライトノベル大賞(ルルル文庫部門)期待賞受賞。メジャーデビュー。
2014年、『女性は帰らない』で第13回『このミステリーがすごい!』大賞受賞。
2018年、『偽りの春』で第71回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。
日本推理作家協会員
代表作
・女王はかえらない
・すみれ屋敷の罪人
・朝と夕の犯罪
【感想】
本作は、ある日の日常に突然起こった凄惨な無差別殺傷事件に遭遇した人々の《その後》を描いた連作短編集です。お話は6つ。※ネタバレあり
《事件》
年の瀬に都営地下鉄S線車内で起きた通り魔による無差別殺傷事件の様子を生々しく描かれる。
《音》
事件が起きて真っ先に逃げた動画がSNSでupされ拡散された和宏は、SNSで酷く非難され、心を病んで会社を辞め引きこもりに・・。日々生活を支える母に悪態を付く毎日だったが、ある日から和宏の頭に奇妙な音が聞こえ始めて・・
《水の香》
近頃、身籠っている妻の千穂の様子がおかしい。妻はあの事件で通り魔に斬り付けられた被害者だ。そんなある日妻の千穂が「霊が見える」と言い出して・・
《顔》
あの事件で車両から逃げ出した時に負傷したテニス部レギュラー選手の池淵亮が3ヶ月にも及ぶ治療とリハビリを終えて復帰した。そんな復活劇を報道部の野江響がドキュメンタリー映画にする事になって・・
《英雄の鏡》
ホストクラブの新入りユウは昨年起きた地下鉄殺傷事件以来、鏡に自分そっくりの「勇気」の幻を見るように・・ある日自分を嬲る事でストレス解消してくる嫌な客がストーカーに付け狙われている事を知ったユウに鏡の中の「勇気」がある事を囁く
《扉》
3つ目のお話《顔》のスピンオフエピソード。野江編。模試の後、カフェで勉強に勤しむ野江と池淵。すると池淵が「未来ドア」という都市伝説的な話を野江に持ちかけ、是非その都市伝説話へのチャレンジに野江も付いてきて欲しいと持ちかけるのだが・・
《壁の男》
ある怪現象からイラストが描けなった閉店休業中のイラストレーターの雄一は、散歩先に目が止まった廃工場に忍び込み、大きな壁に好き放題に絵を描くが、ある日見知らぬ老人が雄一のイラストを眺めている所に遭遇。以後絵を描く雄一と絵を眺める老人との交流が続くのだが・・
自分は本作のこのタイトルを見て「こんな話ではないのか?」という想像をして、この本を取った。
①凄惨な事件に遭遇した事件の人々が、事件後に発症したPTSDから立ち直るお話。②逆に、凄惨な事件に遭遇した人々が事件後に発症したPTSDにより人生を狂わせていくお話
で、結果は・・
①凄惨な事件に遭遇し心病んだ者が立ち直っていく話。
②あの事件を自身の負傷原因に利用したものの、それで気に病んでしまた者のお話。③あの事件の発生する前にある事に影響され、事件発生時に積極的に絡んだ者のお話だった。
そして思いがけずファンタジーでスピリチュアルなお話だったのには、「びっくり!」
もっとどろどろで、心が重くなるだけのエピソードだらけかと思っていたら、意外にも前向きなお話ばかりで拍子抜けした。
そして伏線の張り方とその回収の見事さは、著者が、プロットを考える方と実際に小説を書く方、2人で構成されているユニットである事が影響しているのか?と感じた。
本作のエピソードの中で一番のお気に入りは《英雄の鏡》!
読者を巧みにミスリードさせていく事でラストまで読んだ時の「驚き」への効果がばっちり!良い意味で「やられた~」でした。
本作のタイトルを見て、「重そうな話だなぁ」と、手を伸ばす事に躊躇している方がいたら、「大丈夫!そこまで重くない!むしろスピリチュアルで、ファンタジーで、希望が持てるお話だよ」と言ってあげたい一冊です。
と言う事で本日はここまで!じゃあまたね!
※当ブログ記事にはCranberryさん、まさぷすさんのイラスト素材がイラストACを通じて提供されています。