国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官は、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃を巡り、戦争犯罪などの疑いでイスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相の逮捕状を請求すると5月20日に発表した。2023年10月から戦闘が始まって以来、ガザ側の死者数が3万5034人になった。米CNNによると、ガザ当局は推定で約1万人の遺体が、がれきの下に埋まったままである。今回、ICCは2023年10月以降にガザ地区で犯された戦争犯罪や人道に対する罪を問うことになり、逮捕状の発行を判断することになる。

 

そうなれば戦争犯罪が強く疑われる人物が率いるイスラエルの国際的な孤立が深まるのは必至だ。バイデン大統領はイスラエル支援へ向けて窮地にたたされることにもなる。米国のユダヤ人からの支持はかかせないが国内的にも反イスラエルの暴動が各地で起こっているところだ。

 

また、そのタイミングであるがイランのライシ大統領とアブドラヒアン外相の搭乗していたヘリコプターが墜落し死亡した直後である。最高指導者ハメネイ師の後継候補とみられていたライシ師が不在となりイランの国内情勢は不安定化する。イランはイスラム教シーア派の聖職者が国を統治する地域大国で、イスラエルや米国と対立する。パレスチナでイスラエルと衝突するイスラム組織ハマスの後ろ盾としてイランの大統領や外相の死が地域情勢に影響を与えるのは間違えない。

 

もし、これが事故でなかったり、さらにはイスラエルがやったフェイクニュースが流れた場合は、いっきに中東全体が火の海になり、それはアメリカをはじめとするその同盟国に対しても世界中でテロや紛争が勃発することになろう。それを押さえるような動きでもある。

昨日から不穏なニュースが流れている。

 

「イランのエブラヒム・ライシ大統領とホセイン・アブドラヒアン外相らが乗ったヘリコプターが19日、北西部の東アゼルバイジャン州の山中に不時着した。大統領らの安否は不明だ。」単なる事故であったらよいのであるが、これにイスラエルがからんでいるということになれば事態は深刻であるし、また、そのようなフェークニュースが拡散する可能性もある。中東は火の海となる。

 

また、トランプ政権でのマイク・ポンぺオ国務長官は、18年春に訪朝した際、 金正恩キムジョンウン 朝鮮労働党委員長(現・総書記)が「私を殺そうとしていたことは知っている」と冗談を飛ばしたと近く出版する回顧録に記した。米韓軍は、先制打撃により正恩氏を暗殺する「斬首作戦」で体制崩壊を目指すOPLAN(作戦計画)を立てているとされ、金正恩委員長は神経をとがらせている。北朝鮮は南進の機会をうかがっていることは確かである、その抑止効果を狙うことになるのであろうが、朝鮮半島は現在非常に不安定である。

 

さらに、ロシアでクーデターの動きがあるとの報道が流れている。ウクライナ国防省の情報機関「情報総局」トップのキリル・ブダノフ局長は英民放スカイ・ニュースのインタビューで、プーチンっ大統領は「心理的にも肉体的にも非常に状態が悪い」と指摘し、「がんやその他の病気を患っている」と述べた。さらに、 ウクライナで苦戦が続いているため、ロシア国内では「クーデター計画が進行している」「止められない動きだ」と語った。英紙ザ・タイムズも14日、米誌を引用し、プーチン氏が「血液のがん」を患っていると報じた。ザ・タイムズが引用した米誌「ニュー・ラインズ」は、プーチン政権に近いオリガルヒ(新興財閥)の発言として、プーチン氏が2月24日のウクライナ侵攻開始前にがんの手術を受けたと伝えた。これはウクライナや欧米のロシアに対する情報戦の一環であるかもしれないが、仮に事実だとすればロシアで内乱がおこる可能性もある。

 

これらの動きや報道が事実であれば世界情勢は軍事的衝突が一触即発の状況にあると言えよう。

 

 

 台湾総統の就任式が目前である。頼清徳新総統はもっともアメリカ寄りとされ、新政権がスタートすれば台湾独立へ向けての動きをみせるのではないかと、中国は神経をとがらせている。アメリカでは大統領選挙のまっただなかであり、台湾をめぐる危機的動きがあればバイデン大統領もトランプ候補もすぐさま応じる気配がある。

故安倍総理がいったように「台湾有事は日本有事」であり、沖縄の先島諸島や尖閣諸島がまっさきに戦闘に巻き込まれる可能性が高い。そのために、日ごろからの抑止はかかせない。

そのような中、5月17日にエマニュエル米大使が日本最西端の沖縄県・与那国島を訪れた。駐日米大使の公式訪問は初めてであり、台湾総統の就任式を前に台湾に対する軍事的な威圧を強める中国をけん制した。エマニュエル大使は日本産水産物の輸入禁止措置を取る中国が日本近海で漁を続けているとした上で、「中国の言葉は偽善的で、言っていることとやっていることが違う」と非難した。

与那国と台湾との距離は110キロしなかなく、与那国から台湾は目視できる。台湾有事の際にはPLA軍と台湾軍の戦闘機がドッグファイトをこの近辺で行った場合は、与那国上空が侵犯され、航空自衛隊はスクランブルを行わねばならず日本は戦闘に巻き込まれる可能性が高い。

また、その状況では与那国など先島諸島からの住民避難が行われていよう。先島諸島の5市町村から九州各県と山口県に住民約11万人を避難させる計画を巡り、政府が8県で計約36万7千人の受け入れが可能だと見積もっている。

先島諸島からの公共機関による避難には、航空機および船舶を利用するが、沖縄県資料によれば平素の輸送力は、八重山地域で5261人/日、宮古地域で3250人/日であり、先島諸島から沖縄本島または県外への避難にかかる日数は、最短で八重山地域からは10.6日、宮古地域からは14.3日かかる 。沖縄県は最大限の派遣を民間航空会社およびフェリー会社等に要請し、なんとか2倍の輸送力の確保に成功した。概ね約5日で避難が完了する見込みとなった。

沖縄県の図上訓練では、輸送力の確保努力により、最大1日あたりの輸送力を約2.36倍の21700人程度と見込んでいる。ただし航空機については、運航に必要な人員体制等の検証はなされていない。船舶については、通常定員の2倍が乗船するものとして試算している 。

しかしながら、戦闘が起こってしまってからの先島諸島からの退避はほぼ不可能であり、戦闘が起こるまえに米軍のEABOで海兵隊が離島に展開した場合の住民の反発は充分に予想できる。さらに、逃げ場のない住民の避難場所も十分に確保できない。

それらのことを十分に考慮したうえで、政府は外交政策を展開させねばならない。抑止と対話、それに戦争を引き起こさない外交政策が必要となろう。