第63回メリーモナーク・フェスティバルが、すべての日程を終えました。
今年もヒロの街は、この1週間だけ特別な空気に包まれていました。 朝から人が動き、夜までフラの話が尽きない。 この街にいるだけで、「フラの中心にいる」という感覚になります。
その熱気の中で、すべての競技を現地で見てきました。 今回は、結果を考察する前に、まずは「ジャッジ(審査員)との繋がり」について考えてみたいと思います。
写真は、いつもお世話になっているKaulikeと、バックステージで。
■ 今年のジャッジと、その系譜
(敬称は省略します)
1. Maelia Loebenstein Carter
祖母 Mae Ulalia Long Loebenstein。マウイ島・ロベンスタイン系。 祖母から母、そして本人へと受け継がれた家族の伝統を持っています。
3. Vicky Holt Takamine
Maiki Aiu Lakeの愛弟子。まさにマイキー系のど真ん中と言える存在です。
4. Noenoelani Zuttermeister Lewis
家系継承の系譜。 中心にあるのは母 Emily Kauʻi Zuttermeister(カウイ・ズッターマイスター)。カウイは、アメリカの伝統継承者としてアンクル・ジョージよりも早く表彰されている、強烈な影響力を持つクムフラです。また、Samuel Pua Haʻaheo の hula pahu tradition(フラパフの伝統)の継承者とされています。
Hōkū Zuttermeisterの叔母にあたる。
5. Nani Lim Yap
最初のクムは母 Mary Ann Neula Lim。その後、本格的に長く学んだのは Margaret Kaleolani Moku です。 さらに、ハワイ島のクムフラ達(ʻIolani Luahine、George Nā‘ope、Edith Kanakaʻole)や、Kahaʻi Topolinski、Darrell Lupenui、John Kaʻimikaua のスタイルにも触れています。
今回、ナニ・リムのクムでもあるカハイ・トポリンスキーがメリーモナークに戻ってきました。90歳近い自分のクム、カハイさんに対し、審査員としてご自身のクムを審査しなければならないのは、クム、ナニ・リムにとって少し辛いことだったのではないかと推察しました。 私自身も期待して拝見していましたが、率直に言うと、現在のメリーモナークの入賞レベルには達していなかったように感じました。
5. Etua Lopes
最初の入り口は Lokelani Anderson。 1971年以降は George Nā‘ope のもとで学び続けており、主たるクムはアンクルジョージです。 他にも、Henry Pā、Lokalia Montgomery、ʻIolani Luahine、Edith Kanakaʻole、Eleanor Hiram Hoke からも学んでいます。
カイルア・コナの、フリヘエパレスで長年レッスンをやっています。
6. Wallis Punua
母 Kuʻulei Punua の系譜、カウアイ島のスタイルです。私の知識不足で申し訳ないのですが、お母様までは分かるものの、その先までは深く把握できていません。
7. ʻIwalani Kalima
George Nā‘opeから長年フラを教わり、ヒロで活動しています。(個人的には、足の外反母趾が少し心配になりました)
■ ジャッジの系統まとめ
これらの系譜を大きく分けると、以下のようになります。
・家族継承(オハナ系) マエリア、ノエノエラニ、ナニ・リム、ウォリス。 親や祖父母から直接「家伝」としてフラを受け継ぐスタイルです。
・マイキ・アイウ・レイク系 1970年代のハワイアン・ルネッサンスを牽引したマイキ・アイウ・レイクの教え。
・ジョージ・ナオペ系 メリーモナーク創設者の系統で、ハワイ島の力強さと古来の儀式的なフラを大切にするスタイル。
これらジャッジの背景を知った上で、出場ハーラウ(および出場者)との間にある「師弟関係」や「同じ系譜(リネージ)」という深い関わりについて考えてみます。
■ 今年の入賞結果と「繋がり」
今年の主要な結果は以下の通りです。
・総合優勝: Hālau Hiʻiakaināmakalehua(クム:Robert Keʻano Kaʻupu IV) ・ミス・アロハ・フラ 2026: Faith Kealohapauʻole Paredes(Hālau Kekuaokalāʻauʻalaʻiliahi) ・ワヒネ総合優勝: Hālau Mōhala ʻIlima(クム:Māpuana de Silva)
ここで見えてくる「繋がり」があります。
総合優勝を果たした Hālau Hiʻiakaināmakalehua のクム、ロバート・ケアノ・カウプの師匠の一人は、Ray Fonseca(レイ・フォンセカ)です。レイ・フォンセカと、ジャッジのエトア、イワラニはとても仲良しのフラシスター&フラブラザーでした。どうしても、点数に良い影響があったのではと想像してしまいます。
マイキ・アイウ・レイク系を見ると、ジャッジの Vicky Holt Takamine と、ワヒネ総合優勝の Hālau Mōhala ʻIlima(クム:Māpuana de Silva)は同じマイキ・アイウに属し、ウニキも同時期の伝説のレフアクラス出身。伝統的な「アロハ・スタイル」を深く共有しています。
ミス・アロハ・フラの Faith は、Haunani & ʻIliahi Paredes の娘です。ジャッジの Maelia Loebenstein Carter とはマウイ繋がりがあり、演奏はケアリイ・レイシェルでした。
カウアイ島繋がりでは、ジャッジの Wallis Punua と、Hālau Ka Lei Mokihana o Leināʻala(クム:Leināʻala Pavao Jardin & Breeze Pavao)が同じカウアイ島拠点です。(クム・レイナアラは逝去されましたが、その後もクムの名前として記載されています)
■ 今年の大会を振り返って
【 圧倒的な結果 】 今年の団体部門は、Hālau Hiʻiakaināmakalehua がカネ・ワヒネともに圧倒的な強さで総合優勝を果たしました。完成度の高さは間違いなく素晴らしいものでした。
ただ、実際に現地で見て、自分なりに採点していた感覚からすると、「ここまで点差が開くのか?」「今年はカネ(男性フラ)部門が50周年という節目の『カネ祭り』だったからなのか?」という感想を持ったのも正直なところです。
【 「繋がり」と「流れ」 】 よく言われる「繋がり」。 誰から学んできたのか、どの系譜にいるのか、どう継承しているのか。その背景があり、今回はカネ50周年という事実も、確実に評価の一部になっていたと感じます。
さらに、その年ごとの「流れ」や「空気」。これに乗っているハーラウと、そうでないハーラウの差も見えました。(今年はHula Pahuが非常に多かったですね)
表彰式前の一コマ。
■ コンペティションという現実
メリーモナークはコンペティション(競技会)です。 だからこそ、大会前からある程度「流れ」が存在し、本番はその確認作業のようになる。これは善悪の問題ではなく、一つの構造として現実に存在していることなのだと感じます。
また、審査員を務める7人のジャッジ自身も、かつては出場者としてこの舞台に立ったクムもいます。その中には優勝経験のあるクムもいれば、入賞が叶わなかったクムもいます。「実績」という物差しが多様な中で、彼らが現在の出場者に審判を下すという形には、善し悪しではなく、何となくのモヤモヤ感があります。
■他、印象に残ったこと
AHAのワヒネアウアナ。全力で、伝統に沿ったフラにチャレンジしたのかな?
今まで通り?ではなく新たなチャレンジかと。でも入賞できず。
クアナトーレスも演奏、クム・マーク・ホオマルには期待をしていましたが、残念。
それから、Ka kai o ka hikiは、カヒコ、アウアナ、両方で入賞。オブライアンエセル時代以来の2部門入賞。カヒコは素晴らしかった。
■ 指導者として考えること
この結果をどう受け止めるべきか。 フラを指導する立場としては、「評価されるためのフラ」と「本質としてのフラ」、この二つを明確に分けて考える必要があると痛感しています。
順位はあくまで一つの結果に過ぎず、それがフラのすべてではありません。しかし、「その結果がどのような力学で作られているのか」を冷静に理解しておくことは、極めて重要なことだと思っています。
■ 最後に
今年のメリーモナークは、その美しさと同時に、コンペティションとしての「リアルな側面」を見た大会でした。
ハワイであれ日本であれ、先人との繋がりや系譜、積み重ねてきた努力は、一体どのように花開くのか。あるいは、それらは無駄になってしまうのか。
今のフラ界に目を向ければ、ハワイのクムたちが「黒船」のように来日し、強い影響力を持ち続ける状況があります。
これもまた、良い悪いではなく、その土壌を作ってきたのは日本人であり、知っているか、知らないか、正しいか、正しくないか、の取捨選択の前に、ハワイ人だから、ということで歓迎してしまうクセが、良くない方向に誘導させているような気がします。
今回の経験は、今後どのようにフラと向き合うべきかを考えるヒントになりました。
このヒロの空気と肌で感じた感覚を日本に持ち帰り、日々のレッスンの中で生徒たちに伝えていきたいと思います。
Mahalo
ヒロせきね