義母の入所 | kuminsi-doのブログ:笑って介護

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≪義母の入所 ≫

 

義母の入所は突然に決まった。 

 

今年の田植えは午前中2時間ほどで終わった。 

そこで義父の施設に行った。 

 

義父が車いすで連れて来られる。 

 

「どうしてあんなことになっちまっただな」 

義父は私たちの顔を見るなり言い出す。 

 

え??? 

 

「どうしてあんなことになっちまっただな」 

義父は再度訴え頭をひねり、項垂れ寂しそうである。 

 

え??? 

どういうこと??? 

 

「どういう事?」 

私は夫に聞く。 

「じいちゃんは、ばあちゃんの顔が見えないから、ばあちゃんが具合が悪くなって入院したと思っているんいるんだよ」 

夫は義父の言葉に納得できているらしい。 

「じゃあ、おじいちゃんは今どこに居るの?」 

私は理解できずに聞く。 

「じいちゃんは、自分の家に居るんだよ」 

夫は笑って答える。 

「え?だってこの施設には他の入所されている方が沢山いるんだよ、この人たちは誰になるの?」 

私はますます分からなくなり聞く。 

「じいちゃんには他の人は眼に入っていないんだよ」 

夫はいかにも父親を熟知しているかのように語る。 

 

流石息子である。 

父親の性格を知っているんだ~ 

 

「じゃあ、『どうしてあんなことになっちまっただな』てことは何時の事件なの」 

私は夫に聞く。 

「そんなの、じいちゃんの妄想だよ、ばあちゃんが見当たらないから適当に妄想してるんだよ」 

夫は平然と答える。 

 

ほー! 

そうなんだ。 

 

「おじいちゃんは、一人で寝ていて寂しくないの?」 

そこで私は、70年も連れ添って一緒に寝ていた義母が居なくてどうなのか義父に感想を聞いてみる。 

 

「うるさくていけねえで、静かでいいわ」 

義父はニヤニヤしながらも照れ臭そうに答える。 

 

え! 

うるさくていけない??? 

 

「うるさいって?」 

私は再度夫に聞く。 

「じいちゃんは、ばあちゃんがうるさかったてことだ」 

夫はニヤリッとして答える。 

「70年も連れ添ったのに、そうなんだ」 

私は驚いた。 

 

確かに毎日毎日うるさく義父は指示を受けていた。 

しかし、義父は慣れっこになっていて、それが義父にとっての幸せだと思っていたが、流石に義父も辛かったんだ。 

 

夫婦とは分からないものだな~ 

 

「おじいちゃんは、昼間何やってるの?」 

私は更に義父の様子を聞く。 

「おら、昼間少しばかり外に出て、後はゴロゴロやってるだ」 

義父は嬉しそうに言う。 

「少しは歩いてるだか」 

夫が少し強い口調で意見をする。 

「おお、少し歩いてな、後はゴロゴロしてるだ」 

義父はご機嫌である。 

 

このゴロゴロが義母のお小言がなく快適なのかな~ 

こうして私と夫は義父の本音?を聞いて施設を後にした。 

 

 

 

「グループホームの空きがあるって昨日ケアマネから連絡があったんだけど」 

夫は帰りの車の中で唐突に言い出す。 

 

何それって義母の話??? 

 

「どうするかな」 

夫は独り言を言う。 

「見に行くでしょ」 

私は即座に答えた。 

 

昼を食べると直ぐに私と夫はケアマネから連絡のあったグループホームを見に行った。 

 

驚いたことに次の日、面談となり、義母の入所が決まった。 

 

こんなに早く、こんなにも簡単に入所が決まりいいの??? 

 

しかし、義母の数々の徘徊、怪我を考えれば安心安全な施設で、静かに暮らすのもいいのかな~ 

 

「いいのここで? おばあちゃんを今、入れて?」 

私は施設の方が帰った後、夫の気持ちを聞く。 

 

「いいよ、施設に入れるときが来ていたんだよ、だからこんなに簡単に決まったんだよ」 

夫は静かに答えた。 

 

そして義母の入所の当日を迎えた。 

 

朝、義母がいつも行っている向かいの床屋に髪を切ってもらっている隙に、私と夫は、義母の布団、服、諸々を車に積み、上からタオルケットをかぶせて見えないようにした。 

 

義母が髪を切って帰って来ると、丁度お昼時、一緒にお昼を食べた。 

 

1時過ぎ 

「お医者様に行くよ」 

 

夫が声を掛ける。 

「姉さん悪いね、わしゃ行ってくるから留守をよろしく」 

そう言うと義母は夫の車の後ろの座席に座った。 

私は家の戸締りをして最後勝手口のカギを閉め、車に近ずく。 

 

「姉さん、前に乗りましょや、わしは後ろに乗ったで」 

義母はご機嫌で声を掛けて来る。 

 

「ハイハイ」 

私は返事をしながら助手席に乗る。 

 

義母は車の移動中 

「車がいっぱいあるわね」 

「道は車だらけだ、なにがあるだや」 

「あそこも大きな車がいっぱいある」 

義母は楽しそうに車を眺め、一人ではしゃぎながら施設に着いた。 

 

「ここだよ」 

夫が声を掛ける。 

 

「ほうかね」 

義母は素直に車から降りる。 

 

「よろしくお願いします」 

夫が言いながら施設の玄関に入る。 

 

「こちらにどうぞ」 

施設の方に声を掛けられ義母は施設に入って行った。 

 

私たちは施設との契約をし、義母の部屋に荷物を入れた。 

 

これで入所の準備は整った。 

 

「よく見てもらうだよ」 

夫が、椅子に座ってテレビを見てくつろいでいる義母に声を掛ける。 

 

「そうかね」 

義母はテレビから目を離しこっちを見る。 

 

「今お昼休みだから、これから人が出てくるからね」 

私も声を掛ける。 

「また迎えに来るで」 

夫が言う。 

「遅くならないように帰ってくるだよ」 

義母は答える。 

 

「遅くならないようにするで」 

夫は何時も家を出るときのような口調で答える。 

 

「遅くなりゃ、わしも待ってなくちゃいかんで、早く帰ってくるだよ」 

義母も家に居るときと同じように答える。 

 

「じゃーね」 

夫が言った後、私たちは施設を出た。 

 

「もしかしておあちゃん、家に居ると思ってる?」 

私は車に乗り込みながら夫に聞く。 

「そんな感じだな。なじんでるんだ、もう」 

夫も静かに答える。 

 

施設の空気が家と同じなのかな~ 

 

良かった良かった。 

 

こうして義母は、義父とは違うグループホームにすんなりと入所したのだった。