ちょっと遠出をしようということで、R48を山形方面に。
県境を越えてしばらくすると、右側が開け山形の名だたる名山が顔を出す。
48号線沿いにローソンを発見し、そこで昼食を買う。
向こうに水晶山(667.9m)が見える。
ちょっと歩いて山の姿を撮る。
向かって右、西側はなだらかな裾野で、おそらくここが登山コースなのだろう。東側はやや、急に切れ落ちている。
カーナビを取り替えて、初の遠出。
ちょっとボタン類がちゃちなような気もするが、十分に使える。すでにカーナビなしに生活できない自分に気づく。
そんなこんなで、ゴルフ場付近の石鳥居を過ぎると、すれ違うのが難しいような一本道。
ちゃんと舗装はされているが、時折、両脇に伸びた草が車体を撫でていく。対向車が来ないよう祈りつつ、進む。両脇は果樹園になっていて、心なごむ風景である。
それにつけても、山形といい、福島といい、フルーツ大国の名をほしいままにしているのに、我が県の体たらくといったら。単に、気候のせいばかりにもできないような気がする。
12:36、駐車場着。「登山者駐車場」となっていて、気兼ねなく置けるのが良い。砂利敷きで10台は置けそうである。後で分かったのだが、ここからさらに進んだ道路脇にも10台程度置けるスペースがある。
えーと、何かの農村整備モデル事業で建てられたらしい、立派なトイレまで整備されている。やや虫は入り込んでいるものの、その清潔さに好感を持った。
さてさて、炎天下の中、出発。車道をちょっと歩くと、「水晶山入口」の標識がある。
ここは川原子登山口、というのだそうだ。
すぐに見えてくるのが、二神仏石碑。葉陰に隠れそうな、小ぶりな石碑。
この山はかつて、信仰の山であった模様。大権現、そして観音様について刻まれているようだ。1817年というから、江戸後期に建立された模様。
この山の開山は702年とか。
この辺りには、大小の寺院がかつて建てられていたようだ。今は、昔日の面影は知る由もなく。
蛇行する車道を離れ、まっすぐに続く山道に入る。山頂まで1,830mとのこと。まあ、それほど苦労はしなさそうだ。
今日の脳内BGMは、スティーリー・ダンのギタリスト、ウォルター・ベッカーの『11の心象』(11 tracks of whack)。「心象」なんて、生易しい内容の音楽ではないが・・・。
「lucky henry」は、はじめ変拍子かな、と思ったけれど、よくよく聴くと4/6拍子みたいだ。6拍目を16分音符でクッてるので、複雑なリズムに聴こえます。
ベッカー先生は、歌がヘタだと言われるけれど。個人的には、このアメリカンに乾いた感じが、嫌いではないのです。それにつけても、同様にヘタウマなドナルド・フェイゲン先生とのコンビで、あれだけの音楽を構築したんですから、凄い存在ですよね。
山の話でしたね。
杉林をしばし歩くと、山姥さま2体に出会った。唇には紅までさしておられる。
ちょっと手を合わせ、先へと急ぐ。
六角堂を過ぎた辺りから斜度が増し、山登り、という雰囲気になってくる。
だがそんなにきつくはない。小さい子でも頑張れば登れるだろう。
七曲がり、っていうジクザグな道を抜ければ、13:14、見晴らし台着。ちょっとしたベンチなんかがあって、一方向に視界が開けている。
眼下に街並みが見える。いつの間にか、そこそこ、登ってきたのだった。
5分くらい登り続けると、滑石、っていう地点。
所々に、すべすべした石が露出していて、なるほど、このまま踏んだのでは、角度によってはツルンと行くだろう。
要は、石以外の場所を選んで登ればよいのである。
そんなこんなで、道が平たんとなり、水晶山神社の祠が見えてきた。
871年に大和朝廷から従五位下の位を授かった利神、なのだとか。小ぶりな木造づくりの瀟洒な佇まいである。
ここには眺望はなく、頂上はその裏の、ポッコリした岩石の上であるようだ。
裏側に回り込むと石段があって、そこを登りつめれば石造りの奥の院。
左側に道が見えたんで、そこの崖を登りつめれば、頂上。13:29着。1時間ちょっとで到着。
ゴツゴツした岩場で、片方が切れ落ちて視界が広がっている。
なかなか良い眺め。黒伏、面白山などが見渡せる。
日差しは強いけれど、吹き抜ける風が心地よい。
しずかである。そういえば、ここまで、誰にも会わなかった。
山の由来は、ここで水晶が採れたからだそうだ。
道すがら探したのだが、それらしいものは見つからなかった。
だけど、山頂の標識の足元に、なにやら白い石があって、これが水晶であるようだ。誰かが、ここに置いてくれたのだろう。
さてと、手ごろな石に腰かけて、昼食にしましょう。ふもとのローソンで買った麦茶は、まだ冷えていた。
しばらくのんびりしていたら、背後から中年の夫婦が登ってきた。
リュックを背負い、場所を開ける。このまま直進すれば猪野沢口に降りていくのだが、そこから車道を延々歩いて川原子登山口まで戻るのは遠慮したい。
とりあえず、ちょっとだけ降りて、修験道の霊窟であった「御室」へ。
なるほど、岩石がせめぎ合う中に洞窟が覗けた。なんとも不気味な雰囲気である。
そこから神社方面への道があるようだ。神社経由で、川原子まで戻ることにする。
見晴らし台でこれまた中年夫婦に会った以外は、特にこれと言ったことも起こらず。
14:44、六角堂を過ぎ、かつて西の院があったあたりを歩いてみるも、その痕跡を見つけるのは容易ではない。ただただ、杉林がうっそうとするばかりである。
森の中の一本道を抜け、懐かしい駐車場に着いたのは、14:47。
ちと物足りない感もしたけれど、今年度最初の山歩きとしては、このくらいが妥当だろう。
車の中が猛烈な温度になることを覚悟していたのだが、上手い具合に木陰になってくれていたようで、それほどでもなかった。
しばらく天候不順だった昨今、久しぶりの日差し。日向ぼっこしながら、さっき山頂で食べ残した菓子パンを平らげる。
なかなか、味わい深い里の山であった。
寝坊しても楽々、明るいうちに下山できること。
しっかりした駐車場があること。
山頂に、そこそこの展望があること。
この3条件を満たす山を目指すことをコンセプトに、東北の短い夏を味わいたい。(2020.8.16)