里山と熊鈴と私(北泉ケ岳~大倉山) | 里山と熊鈴と私

里山と熊鈴と私

朝寝坊と山を愛するあなたへ。日帰り、午後のゆるゆる登山。

 寝坊した。今日もだいぶ、ゆっくりの出発。

 

 みんな違って、みんないい。(金子みすゞ「私と小鳥と鈴と」より)。

 

 よね。山登りも、人それぞれ。

 

 私の場合、10時ころから登り始め、山頂でちょうどお昼を迎える、または、正午から登っても、明るい時間に帰ってこられる、くらいの、標高1,000m台の山を相手にしております。

 

 これのメリットとしては、朝、ゆっくり寝ていられる、というのもさることながら、

 

1 あまり人に会わないので、しずかに山歩きできる

2 下山者に、山のコンディションを尋ねることができる

3 さんざ、先行者が通った後なので、熊さんが遠くに逃げてくれている(多分)

 

などが考えられましょう。

 

 あまりにも天気が良いので、まったくのノー・プランのまま、車にリュックと靴を放り込み、とりあえず東へ。

 

 右手前方に、泉ケ岳(1172.1m)がきれいに見える。最近登ってないし、今年最初の山行きにはちょうど良い。根白石方面にハンドルを切る。

 

 泉ケ岳スキー場の、広大な駐車場に車を置き、10時、ポクポク歩き始める。

 水神コースを行こうとしたら、青年自然の家取り壊し工事の関係で、う回路が作られているようだ。

 はじめての道。森の中、渓流を眺めながら歩いていたら、早くも道を見失う。右へ向かえという表示を見落としていたようだ。引き返し、ちょっと、タイムロスした。

 

 ふうふう。今日の脳内BGMは、ハービー・ハンコック『SECRETS』の「people music」から、なぜかビートルズの「A Day in the Life」への流れ。

 

 10:50、水神様に到着。

 ここで思案。このまま泉ケ岳頂上に行くのも面白くないということで、北泉ケ岳方面へ向かう。

 

 渓流のほとりでは、オバチャン2人が休憩中。かっこよく石を渡ろうとしたら、思いっきりバランスを崩して右足がくるぶしまで、見事にきゃっぽる。

 

 ちなみに、「きゃっぽる」っていうのは、この辺りの方言で、「水たまりにはまる」ってことを指します。

 

 なんでかは不明。

 

 なお、「きゃほず」っていう言葉もあって、川の一部をせき止めて、手づかみで魚を捕る漁法、またはアトラクションを指す。

 

 そういえば前の職場で、魚のつかみ取りイベントを企画した際、「きゃほずくん」ってゆるキャラをこしらえたんだけど、わりと評判は良かった…。

 

 山の話でしたね。

 

 わあ。オバチャンたちが心配顔でこちらを見つめている。赤面しつつ、何事もなかったかのように、先を急ぐ。幸い、水のブーツ内部への侵入はなかった模様。

 

 11:29、三叉路到着。ここを右に曲がれば泉ヶ岳頂上方面。そこをさらに直進。

 ちょっと道幅が狭まり、傾斜も急になってきた。だけど、そんなにキツくはない。雁戸山の登り始めくらいのグレードか。小学生ぐらいなら、楽勝で登るだろう。

 

 だんだん、傾斜が緩やかになり、12:03、山頂(1,253.1m)着。

 ちょっとした平場になっていて、オジサマが2人、お弁当中。

 見晴らしは、そんなに…良くない。大和町方面がちょっと見える程度。

 なので、先に進むことにする。

 

 オジサマに、「船形山に行くの?」ってニコニコ訊かれたけれど、いやいや、そんなそんな。ここから14kmも歩くなんて、とてもとても、今からでは無理ですって。でもいつか、チャレンジしたいですね。

 

 ちょっと急な坂を下っていく。

 12:26、三峰山と、大倉山との分岐に到着。

 そう分かったのは、後の話。ついつい三峰山方面に直進してしまい、またもタイムロスしてしまった。

 

 引き返し、桑沼方面に曲がる。

 あら。冷静に見れば、ちゃんと、「桑沼」っていう表示があったんですね。見落としておりました。

 

 ほとんど平坦な、気持ちの良い道。すこしずつ、高度を下げる。

 13:00、右下についに、桑沼が見えた。うつくしい青緑色。

 13:25、ものすごい樹齢のブナの木の脇に、大倉山の頂上へ向かう道があった。危うく見落とすところだった。

 あるブログに、頂上への道は分かりづらい、とあったんだけど、確かに。

 

 笹ヤブを掻き分けて細い道をちょっと進むと、大きな看板があり、そこを右に曲がると、立派な東屋が見えた。ここが大倉山山頂(933.9m)。展望は、まあ、そこそこ。

 このまままっすぐ行くと、「氾濫原」っていう湿地帯に行けるんだけど、今日は見合わせる。引き返し、桑沼方面に一気に降下。ところどころ、ロープが張ってある箇所はあるけれど、そんなに危険な道ではない。


 13:57、林道に出た。ここから10分ほど歩くと、木々の間に、エメラルドグリーンの桑沼が見えてきた。

 しずかだ。

 

 こんな、天気の良い日だというのに、誰もいない。

 

 水辺まで降りて、しばし休憩。だけど、ヤブカの編隊がプアンプアンやってきて、じっとしていられないのが残念。

 

 これでは、昼食もままならない。仕方なく、立ったまま、パンを口に放り込む。

 

 遊歩道をテクテク歩く。この先にかつて、急登して北泉ヶ岳と大倉山の中間地点に出る道があった模様。今は道が荒れて通行不可であるようで、しっかりバリゲートが張られている。

 木々に囲まれ、「しん」とした雰囲気。

 日が差すと、翡翠のような湖面が白く輝き、なんとも美しい。

 

 名残惜しいけれど、14:54出発。ちょっとした広場があって、車が15台くらい停められるようだ。

 ここから泉ケ岳スキー場まで、8.8km。まあ、歩けないこともない。

 林道をポクポクと進む。

 

 砂利道は3kmほどで舗装道になる。途中、数か所に車を置けそうなスペースがある。

 

 桑沼からヤブカさんたちを連れてきてしまったようで、しょっちゅう、プアンプアンが耳をかすめる。

 うっかりすると、手の甲にさりげなく、とまっている。慌てて、叩き落す。

 

 それにしても、蚊さんたちは、一体、いつ、人間の血が美味しいことに気づいたのだろう。

 こんな山奥で、人間と遭遇することも稀だろうに、しっかり我々を「獲物」と認識してまとわりついてくる。

 

 生命の不思議。DNAの謎。

 

 それに気を取られているうちに、いつの間にか4kmを歩き、15:40、スプリングバレー泉高原スキー場着。

 さすがに夏場は閑散としている。芋煮会の客が1組、寂しそうに屋外のテーブルで鍋の準備をしていた。

 

 ちょっと休憩の後、試しにバスの時間をチェックしたら、あら。土日祝日のみの運行とのこと。

 残念。再び、地道に歩きだす。

 

 冬、スキー場への行き来に使う、馴染みの道。こうしてゆっくり歩くのも、なかなか良いものです。

 この辺りになると、脳内BGMはバングルスの「Manic Monday」になっていた。明日は仕事だ…。

 

 16:44、泉ケ岳スキー場着。ふう。沈みゆく太陽がまぶしい。

 結局、泉ケ岳自体には登らないで、山体をぐるっと回るようなコース取りになった。こういう行程をたどる人は、あんまりいないかも知れない。

 

 スプリングバレー泉高原スキー場から泉ケ岳に登り、北泉ガ岳~大倉山~氾濫原~桑沼、ってコース、あるいはその逆が良いのかもしれませんね。

 

 仙台市内からほど近く、比較的気軽に行けるけれど、船形連峰の南端に位置しているだけに、ブナ林の幽玄さ、深さをしずかに味わうことができる道です。

 桑沼の美しさも忘れがたいし、秋の紅葉シーズンに、もう一度来たいですね。

(20170919)