天狗はため息をついた。

突然死を迎えた命は、とまどってすぐには淡いへと入れずに、さまようことが多いという。てんぐはさまよう霊をみつけると、ゆっくりと霊守りに託す。

霊守りは満月の夜になると、迷っている霊を集めてゆっくりと月の光ですすいでいくのだ。

すすがれた霊はあわいへと落ちていき、他の霊にと同じように精霊となって、この世の自然界に宿るものと消えゆくものに分かれる。

霊はおよそ何にでも宿っている。

木々や草花はもちろん家や車、飛行機などの人工物にも宿ることができる。

ただし、命のないものに宿ると無機物に少し彩が加わる。

人の目には分からなくとも天狗の修行を受けたものには、すぐに見分けがつくのだ。

 

てんぐはそうしたたくさんの精霊を感じながら、人間界に目配りする任をおっているのだ。

 

たくさんの幸福を貯めている命はその役目を終えたてあわいへと落ち、そこから精霊を経て再び世に出るときに「光の子」となるものがいる。

光の子が多く生まれる時代は、穏やかで幸福な色合いが強くなる。

苦しみや悲しみが癒されずに残り、あわいへ落ちた後精霊とならずに再び命を得るものがときおりある。

これが「闇の子」となって、人の世界で様々な問題を起こす引き金になってくる。

このバランスが崩れないように、闇の子が多くなりすぎないように目配りしているのが大天狗の重要な仕事なのである。

 

多くの霊は精霊となって、この世に宿ることで喜びも悲しみも苦しみもゆっくりと溶かされて再び生まれ出る命となっていくのだった。