日本サッカーのDNAを探る国「ビルマ」から伝えられたパスサッカー | ロメロの言いたい放題

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日本代表の伝統と“感覚”に頼る傾向

私がミャンマーに行っていた当時、日本マスコミや日本サッカー協会からも執拗に「チョー・ディン」の出生地を探してくれと問い合わせがあった。ハッキリとした出生地は分からなかったが色々と探して貰った思い出がある。

私が知っている「日本サッカーの父」といえばデットマール・クラマーが有名だが、明治から大正にかけて広くサッカーの技術を教えた伝道師といえば、チョー・ディンの名が挙がる。ビルマ、つまり現在のミャンマーから来た留学生だった。当時のビルマは英国領で、チョー・ディンのサッカー観はスコットランド由来だったという。 

イングランド式とスコットランド式。サッカーには2つの流派があった。ロングボールを蹴って追いかけ、ドリブルで突撃していく勇猛なイングランド式に対して、スコットランド式はショートパスをつないでいく技術のサッカーです。イングランドのジェントルマンたちは「男らしさ」を重視しており、パスですら「男らしくない」と批判していた。もし彼らが今日のポゼッションだのポジショナル・プレーなどを目にしたら、「軟弱極まりない堕落したフットボールだ」と憤慨するに違いない。

ただ、英国人が世界各国へ広めていったスタイルはスコットランド式が優勢だった。チョー・ディンが理路整然とした指導で技術を教えた日本も、スコットランド式の流れを汲んでいる。

ロシア・ワールドカップ(W杯)直前に解任されたバヒド・ハリルホジッチ監督は、「縦に速い攻撃」を志向していた。解任理由はいろいろあったと思うが、これも一つの遠因ではないかと想像している。

 

攻撃的3バックとはは...?

 引いたミャンマー代表を前に手にした収穫とは、何だったのか?攻撃的な3バックをテストしたと森保監督は、言っているが….GK前川黛地、そして橋岡大樹・谷口 悟・伊藤洋輝の3バック、そして攻撃的ウイングなので、ウィングバックという表現は、如何なものか?と思う。右に管原由勢、左に中村敬斗を配置した。中央は守田英正がアンカーに入り、鎌田大地と旗手央が流動的に左シャドーと中央を担当する。右は堂安律が右ウイングから内側へ入って右のシャドーになる。前線ワントップに小川航基を配置した。

これまでは、守備のために使っていた3バックだが、ボール支配率が高くなると予想された今回の試合では、攻撃のためのシステムとして試している。

GK以外は同じメンバーで、3-4-2-1と4-4-2を時間によってチェンジし、ミャンマー代表も最初は4-4-2、そこから3-4-2-1に替わる仕組みとなっていた。

久保建英(レアル・ソシエダ)であれば3-4-(2)-1なら2シャドーの右側、4-4-2では右サイドハーフという形です。

一方で橋岡大樹(ルートン・タウン)は4-4-2だと左サイドバック、3-4-2-1なら右センターバックといった興味深いポジションチェンジも見られた。

こうしたトレーニングから、2試合の中で3バックをテストすることは確実だろう。森保監督によると、今回は守備的なシチュエーションで用いた、5バック的なオーガナイズではなく、攻撃的な思考の強い3バックであると考えられる。

カタールW杯ドイツ代表戦の後半から試みたような、前からボールを奪い、左右のウイングバックを高い位置に上げて攻め切るオプションとしても想定しているようです。

ウイングバックの人選も、今回はカタールで、同ポジションを担った伊東純也や三笘薫がいない代わりに、相馬勇紀(カーザ・ピア)や前田大然(セルティック)、中村敬斗(スタッド・ランス)といったサイドアタッカーを主にテストしていることは注目に値する。逆にサイドバックでも伊藤洋輝のようにセンターバック経験が豊富にあり、守備能力の強い選手は3バックに回る。橋岡が3バックの右で起用されているのも、その意図が強いだろう。

その一方で、堂安 律、(フライブルク)や久保のような2列目でスペシャルなタレントは、3-4-(2)-1だと2シャドーがメインポジションになりそうです。もちろんこのシステムが本格的に組み込まれて定着してくれば、所属クラブでウィングバック経験のある堂安などが同ポジションで使われるケースも出てくるかもしれないが、まずはオーソドックスに選手のタイプから当てはめているように見受けられる。

 

リトリートした相手に対する収穫とは?

前半は左の中村による単騎突入という従来型だったが、後半から連続したパスワークでテンポを上げる場面が増えていく。川村の運動量とスピードのあるパスがテンポアップに貢献していた。同時に、前半は守備面で相手のカウンターを刈り取る能力が光っていた守田が、攻撃の起点としても機能しはじめる。

62分、右ウイングバックの菅原に代わって相馬勇紀。これで右サイドアタックは左同様にウイングバックに一任される形に。さらに左は前田大然がウイングバックに入り、中村が左シャドーに移動。しばらく決定機がなかったが、70分に鈴木のパスがDFに引っかかってこぼれたところを前田がってシュートする(GKがセーブ)。鈴木のパスはDF の「門」を通しかけていて、中央突破の形が出てきていた。

中央の脅威が増せばサイドも空いてくる。76分、右サイドから相馬が左足でファーポストへ蹴ったクロスを小川がヘディングで決めて3-0とする。

前半はほとんどパスを貰えず、ほぼ「空気」になっていた小川が突然現れての得点だった。小川は84分にもこぼれ球をゲットして自身 2点目、チームの4点目とした。さらにアディショナルタイムの5点目もアシスト。限られた機会に爪痕を残す勝負強さを印象づけた。その点は途中出場でアシストした相馬、2ゴールの中村も同様だった。

アディショナルタイムの5点目は守田に代わって久々にボランチでプレーした板倉滉から小川へズバッと入れた縦パスから。小川は倒れながら中村へボールを残し、中村がダイレクトで巻くシュートを決めている。ようやく中央突破からの得点をとれたのはチームとしての収穫だろう。

引いた相手に対して、パスのテンポを上げての中央突彼は手数からしても十分とは言えなかったものの、試みとして不発ではなく、今後へつなげることはできた。中村の得点力は相変わらず高く、小川、川村、相馬、前田の活躍も選手層の厚さを改めて見せつけていた。復帰戦となった鎌田も存在感を示した。

次のシリア代表戦は遠藤航、南野拓実を軸とした別バージョンになるだろうが、やはり何らかのテーマを持ってのテストは行われるのではないか。