『プチ・ポリソン―魔界都市悪童伝』 (菊地 秀行) | エンタメ演劇の劇作家演出家の奇妙な日常

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O-MATSURI企画merrymaker主宰。 脚本家・演出家。 ドイツ文学修士(ゲーテ『ファウスト』)。 元・演劇集団キャラメルボックス脚本演出補。(過去作はいくつか、ブクログにて電子出版してます。 http://p.booklog.jp/users/kumabetti )

プチ・ポリソン―魔界都市悪童伝 (FUTABA NOVELS)/菊地 秀行

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魔界都市では、未だにフロッピー使ってるのか!

と驚くなかれ。

魔界都市だからこその、魔界都市ならではの、謎のフロッピーをめぐって、主人公・十羅綺由裸夫は、まるで八頭大のエイリアンシリーズのような、冒険の魔戦を繰り広げる。

哀切と暴力と性戯と悪の混沌とした新宿で、次から次と襲いかかってくる、チンピラからCIAから大金持ちに謎の美女まで、誰分け隔てなく、命の価値は平等に薄っぺらく。

誰もが、必死で、生きている。

新宿を舞台にした、これは、ジュヴナイル活劇なのだ。

もっともジュヴナイルからほど遠いであろうチェコ第二の魔道士の棲息も確認できますが。

大鴉、かつての勇姿はどこ行った!?

またとなけめ。

このあほうめ。

初めて新宿に行ったとき、歌舞伎町に足を踏み入れたときの、あの、まるで自分が生きている世界が変わったかのような錯覚は、吸い殻もあまり落ちていない、怪しいところなどどこにもないような小綺麗な新宿に変貌した今になってなお、ここに、ある。

昔も今も、そこにある。

それが、<魔界都市>――新宿。

レビュー登録日 : 2012年05月16日