ロマンス小説の七日間 (角川文庫)/三浦 しをん
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こういう構成は、大好きです。
古巣である演劇集団キャラメルボックスの代表作の一つに、『スケッチブック・ボイジャー』というのがあるのですが、構成が近いです。
現実(作家)とフィクションの世界(作品)を交互に描いていき、いつの間にか、フィクションの世界と現実との境目が曖昧になっていくという。
ありがちと言えばありがちだけど、うまくやらないとどっちらけになってしまうけっこう大変な構成の作品。
中世騎士ロマンス物語のお話と、現実の翻訳者のお話。
これこれ、こういうの好きなんです。
その昔、先の『スケッチブック・ボイジャー』を作った師匠に、「僕もこういうの好きなんで、いつかこういうの作りたいんですよねえ」とぼやいたことがあります。
なぜぼやきになるかというと、そのままやったらただの「師匠の猿まね」といわれてしまうので、悲しいかな師匠の使ったネタは使えないという意味不明な縛りを自分自身に設けてるからであって、あれ、よく考えたら自分で気にしてるだけで他に誰も気にしてる人はいないし、別に気にせずやっちゃえばいいじゃんと今思った。
そりゃそうかー。
とはいえ、この『ロマンス小説の七日間』も、「こういうの」である以上、今度は逆に、両作品から影響を受けずに果たして新作をかけるものかどうか。いや影響は受けるだろうけど、その上で自分のものにしないとね。何の話だ?
そのうち、自分にちょうどいい形でネタが固まったら書くことでしょう。
構成だけじゃなくて、本編も面白いです。
なんと言っても、現実に戻ってきたときの、翻訳家あかりのざっくばらんな物言いが面白くてたまらない。
女性って、人前であくびするしあぐらもかくし放屁もするしげっぷもするし、男が夢見るお姫様な女性なんて、フィクションの中にしか存在しなくて、もっと現実見ろよ、と思うのですが、三浦しをんという女性作家はその辺り、男にこびるタイプの女性を描かないので、非常に胸がすくというか、気持ちいいです。
P150、四日目の冒頭を読んだ段階で、もう、ギブギブ、ギブアップ。
すこぶる付きで、このあかりという女性は、素晴らしいと言わざるを得ない。
すこぶる素晴らしい!
え? 何が書かれているかって?
読め。買って読め。面白いから。
面白くなくても責任はとらないけど、僕はこれが好き。好きなんだよおおおお。
あともう一つ。
一番爆笑したのが、あとがきです。
あとがきで楽しませてくれる作家って、最近は減ったなあと言うか、あとがきもあまり書かない人がいるけど、僕は、あとがきが面白すぎるが故に、各作品のあとがきだけを集めて一冊の本にまとめてしまった菊地秀行御大が大好きなので、あとがきが面白い作家さんは、それだけで好きになれます。
だから、大丈夫。
この作家も作品も、大好きです。
レビュー登録日 : 2012年05月03日