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(写真1. ホテルは意外と海に近かった 干潟で作業をする漁師たち)
(写真2. ホテル近くの八百屋)
(写真3. ホテル前で朝礼 今日はゴールのロカ岬まで行くかも知れない)
(写真4. アルファムブラ近く なだらかな起伏のある風景になってきた)
(写真5. 並木道をリスボンへと急ぐ)
(写真6. デリカも急ぐ)
(写真7. ついに「Lisboa」の表示が現れる)
(写真8. 夕陽が沈みそう ロカ岬まで行かれるのか?)

 荷物をデリカに積み込み、出発できる格好で朝食に行くことにする。昨晩のうちとっつぁんが調べておいてくれた、歩いて5分ほどのホテルでビュッフェの朝食。
 ここも老夫婦の宿泊客が多い。ライダー隊の格好が奇妙なのか奇異の目で見られる。
 けっこう肌寒い朝なのに、もうプールで泳いでいる夫婦もいる。昨日は気がつかなかったが、すぐ目の前は海岸だった。

 街中の広場には夏の間仮設遊園地があったらしく、その解体作業もほぼ終わりかけている。夏はもう終わりなんだ。8月の間ずっと肌寒いシベリアを走っていたわれわれにとって、今年は夏らしい夏はなかった。
 昨晩は2部屋に分かれて宿泊したが、ミカさん、博士、大ちゃん達は部屋のお湯の出し方がわからず、水シャワーを浴びて寝たらしい。昨晩とっつぁんがフロントのお姉さんに湯沸器の使い方を教わったが、それを彼らに伝えるのを忘れていたのだ。

 今日はいよいよ目的地リスボン入りの予定。うまく行ったらゴールに定めた、ユーラシア大陸最西端のロカ岬まで行くので、出発前に隊長による朝礼がある。
 今にも降り出しそうな天気の中を出発。われわれはエスクードを全く持っていないので、隣街のTaviraで両替をすべくN125に乗る。Taviraのはずれで女の子に銀行の場所を聞き、両替をする。こんな地図にも名前が乗っていないような小さな街にとても日本人が来るとは思えないが、ちゃんと日本円の換金レートがあった。

 両替後、オウトバーンIP1-E1に乗り終点まで。これは無料。比較的西海岸に沿ったN120で北上。道路脇の小さな小さなスタンドで給油。フルサービスのスタンドではスタンドマンの兄ちゃんがデリカのステッカーを見て「本当に東京から来たの?なんでまたこんなことしてるの?」と信じられないという顔をして人をつま先から頭までなめるように見る。
 「ただ、面白いから。」と答えてもけげんな顔をするだけ。「そう、ぼくらはクレイジーなんだ。」と答えると、ニヤっと笑い「とにかく気をつけてな」と言ってくれる。

 山の中の狭いワインディングの国道を行く。
 途中のアルファムブラで昼食にする。『アルファムブラの想い出』のアルファムブラ宮殿はスペインにあるはずだ。ポルトガルのアルファムブラで飯を食って『アルファムブラの想い出』にすることとする。
 山道の中ぽつんとあった食堂に入る。店のオヤジはテンポの良い英語をしゃべる人で、黒板に書いてあるメニューを次々と説明してくれる。『Chickin Pri-Pri』のPri-Priが気になったので皆それにする。『Chickin Pri-Pri』はその名の通り、骨付鶏肉のチリソースあえ。
 ぼくらは表のテラスのテーブルで食事をしたが、店内は結構な客で賑わっている。途中国道の工事があったが、そこの作業員たちも居る。
 なじみ客らしい黒人男性が興味をもって色々と聞いてくる。隊長がそれに答える。会計のときに店のオヤジは『Pri-Pri』ソースを1本くれた。

 とっつぁんの運転でしばらく眠ってしまうが、目覚めると天気が良くなっており、両側の風景はなだらかな起伏の北海道風。路面状況はあまり良くないが、両側に並木がありまずまずの風景。
 いよいよ、〈リスボンまで100数十キロ〉の表示が出てくる。
 途中の小さくてボロいドライブイン風カフェで、博士が海運関連で日本へ国際電話を入れるが、うまく行ってないらしい。電話代の支払い時は2人のおばちゃんのポルトガル語攻撃で、3200エスクード(約¥2,688)もしてしまった。

 陽射しが強く蒸し暑い。
 地図上では完成していなかったA2に乗りリスボンを目指す。当初16時頃までにSetubalという港に着いて、海運会社と打合せする予定だったが、話がまだまとまっていないのでSetubalへ行く必要がなくなり、リスボン近くで連泊出来るホテルを探して、時間があればロカ岬まで行くことにする。

 リスボン市内のホテルは、海洋博開催中なので高いに違いない。リスボンとテージョ川を挟んで反対側にCosta de CAPARICAというリゾート地があることを地図上で発見。「ここならリゾートアパートメントがあるのでは」というとっつぁんのカンを頼りに、そこを目指す。出来れば昨日のようなリゾートアパートメントが良い。途中道が混み、薄暗くなってきた。ロカ岬行きをあきらめ宿探しに専念する。
 Costa de CAPARICAに入り1軒目のアパートは断わられたが、そこで紹介してもらった〈APARTAMENTOS TURISTICOS CAPARICA OCEANO〉に決める。4人部屋と3人部屋を一部屋づつ。
 4人部屋は海岸に面した3階の角部屋。キッチンリビングに2つの寝室、ベランダが2つも付いている。もちろんバストイレ付。建物に入るにはオートロックの鍵を開けるか、入口の部屋番号を押してインターフォンで部屋にいる人に開けてもらう方式。
 地下と1Fには様々な商店が入っている。新築ではないが立派なところ。ただし困ったことに駐車場が無い。1階の一角にあるレセプションのお嬢さんたちは親切。特にメガネの彼女はチャーミングで早くもミカさんのお気に入りとなる。ミカさんここにも住むか?
 彼女たちは「ここらへんでもたまに盗難事件があるわ。駐車のことだったら警察署に相談してみるといいわよ。」と教えてくれる。

 荷降ろしをしている間にとっつぁんが警察署に交渉に行ってくれた。結果はBAJAのみ警察の柵の中に入れてくれるとのこと。デリカの入るスペースはないらしい。デリカはピロピロを付けて部屋から見える真下の路上に駐車するしかなさそうだ。警察には21時半頃来いと言われたとのこと。

 レセプションのお嬢さんに教わった近くのレストランへまず夕食へ行くことにする。教わったレストランは歩いて1分くらいの所にあった。1階は一杯なので2階席に通される。英語のメニューで注文。〈COFFEEステーキ〉がうちの自慢だと言っているので、だまされたつもりで注文してみる。
 みんなもそれぞれ注文。特に『オジャ』に入った魚介類のトマト仕立ておじやはちょっと覚えたものだから自然と人気が高い。
 COFFEEステーキのお出まし。深めの皿にビーフステーキが横たわっていて、それがコーヒー牛乳色したソースに浸っている。恐る恐る食べてみると、ミルクコーヒーソースと柔らかいステーキ肉が絶妙に合っていて珍味美味。これを注文しなかった人達にも少しづつ分けて差し上げて好評。

 警察にBAJAを持っていかなくてはならないので、みんな「酒は飲めないね」なんて言ってたのに、結局いつもより少なめとは言え白ワインを2本空けてしまう。
 食事を終え帰ろうとしていると、隊長の後ろの席のなぎら健壱にそっくりの男が、隊長の着ていた隊のTシャツを見て話しかけてくる。なぎらさんは夫婦でドイツからバカンスでここに来ていて、ここへ来る前にドイツのテレビでわれわれのことを見て知っていたという。ドイツで取材された記憶は無いので、きっとロシアでのニュースソースがドイツに流れオンエアーされたのだろう。なぎら夫妻にきららを差し上げる。

 結局、警察署までBAJAを押していくことにする。アパートから警察署までは歩いて5分程だが、ゆるい坂をあがり、また下った下にある。坂の両側にはカフェやレストラン、みやげ物屋やゲームセンターが並び、22時半だというのにあちこちで盛り上がっている。 客たちが何事かと、BAJAを押しているわれわれを見る。
 警察署脇の金網で仕切られた一角の駐車場にBAJAを入れる。なるほどこのスペースではデリカは入らない。とっつぁんが警察官に事情を話しきららを1箱上げる。

 思えばこの旅ではずいぶんと警察に世話になった。中国で先導をしてくれた公安をはじめ、ロシアではГАИに宿泊場所その他で相談に乗ってもらった。ドイツでは保険の件で取り調べを受けたがそのあとグリーンカード取得まで面倒を見てくれたし、フランスの警官はとっつぁんの酒気帯び運転を、粋な計らいで不問に付した。バルセロナではバイク好きの警官ととっつぁんがサグラダファミリア前で長話をしたと聞いているし、そのほかでもあちこちで世話になった。日本の警察はこの様な異国からの旅人にどの様に接するだろうか?

 部屋に向かおうと歩いていると、路上駐車したデリカの前でなぎら夫妻と再会。なぎらさんはしきりにデリカのルーフに積んであるものが盗まれやしないかと心配してくれる。
 もはやルーフにはナベカマの類と蚊取り線香や乾電池などの荒物などしか乗ってなく、盗まれて困るものなど何も乗ってない。一番価値の有るものと言えば唯一、アイさんから借りている発電機くらいのものだ。これにしたって盗まれても明日のゴールに何の支障もない。デリカごと盗まれたって明日はロカ岬にゴール出来るんだ。そう思うと何だか気が楽になってきた。
 なぎら夫妻には「どうせ古いものだし、価値は無いから、もう盗まれたっていいんです。」と答えると「そりゃ、面白いことを言うね。あともう少し、がんばってね。」と励まされる。

 部屋にエッちゃんから電話があり明日13時にコメルシオ広場で会うことを再確認する。
 部屋のリビングで精算をし、明日以降の行動を打合せ、すでに午前3時。
 明日はいよいよゴールのロカ岬を目指す。 
 
 あと1日だけ西へ、西へ。

        本日走行 422km  ウラジオストークから15,438km