佐藤泰志の原作「海炭市叙景」に続く映画化作品。「海炭市叙景」は観ましたが、重い雰囲気の中にもちょっとユーモラスな部分があった様な印象が残っていましたが、この作品「そこのみて光り輝く」の登場人物達を取り巻く状況はとてもヘビーでハード、「海炭市叙景」の比ではない押し潰されそうな位の感じを受けます。
採掘現場の発破作業の事故が原因で毎日を当てもなく暮らす様になった達夫(綾野剛)はパチンコ屋で拓児(菅田将暉)にライターを貸した縁から拓児の姉、千夏(池脇千鶴)と知り合い惹かれていった。千夏の一家は父親が寝たきりで母親は看病に疲れ、拓児は仮出所の身で辛うじて千夏の不倫相手の中島(高橋和也)の元で仕事を当てがわれており、千夏は昼は食品加工、夜は身体を売って一家をなんとか支えていた。或る夜、達夫は偶然入ったスナックで千夏の夜の仕事を知ってしまうが・・・
池脇千鶴が凄く良かったです!
生活に、全てに疲れでもどうする事も出来ない諦め感を漂わせながらも、ムチムチボディーでフェロモン匂わせまくりで男が放っておかないであろう千夏を熱演。
8000円、安っっ!!!
リアルであれば目を背けるであろう千夏の施す父親への世話。トコトン、ドン底感を味わさせられます(>_<)
愛人中島を演じた高橋和也。元アイドル「男闘呼組」からもう何年なんでしょう?
色々な作品でチラホラと脇役で顔を見掛けてはいましたが、もう元アイドルと言ったら失礼なんじゃないかって位の熱演。
千夏と別れたくないと「他に男が居てもいいから・・・」と懇願するシールや車中でのDV、祭りでの罵り具合は中島の千夏に対する「可愛さ余って憎さ百倍」の心情が真に迫って感じられました(≧∇≦)
そして馬鹿な弟、拓児を演じた菅田将暉も好印象でした。あの意味もなく身体を揺らす落ち着きのなさ、どの外れた明るさ、初めはオーバーな演技だとハナにつきましたが祭りでの中島とのやり取りのシーンでようやく拓児は馬鹿を装っていただけだと気づけました。
姉の愛人の世話にならなければ仕事もままならず、まして仮出所も取り消されてしまう。だけど、どう足掻いても自身ではどうする事も出来ないもどかしさ。だからこそせめて努めて明るく振る舞っていた拓児の心中を察すると涙目、そこに追い討ちを掛けた祭りでの出来事、山での仕事の話で僅かな希望も見え始めていた矢先だったのに(T_T)
この3人の熱演の為か主演の綾野剛が一番当たり障りのない演技だった様に感じました。達夫の抱えるトラウマにまで焦点を当て過ぎると物語のポイントが分散してしまうから、敢えて省いたのかなとも思いましたが、どうなんだろう?
最後の最後まで酷い展開が描かれますがラスト、画面が暗転しタイトル「そこのみにて光り輝く」が出た時にはこの作品を観て損は無かったと感じれました。光り輝く二人に幸あれ(≧∇≦)
「そこのみにて光輝く」 オススメ度 ★★★