子供の頃住んでいた、今の家に建て替える前の家での話です。
私は二階に上がるのが怖かった。
幼稚園の頃も、中学生になってからも何かずっと怖かった。
うちの家はとても古い作りの家で、そういう家特有の階段の急さと、やたらと長い廊下。
建物が古いため、二階を歩くと足音が凄かった。
私の家のイベントで一番嫌なのが戸締り。
いつもは親が全部やるけど、外出中で家には自分達しかいない時は『ちょっと二階の戸閉めといてー』なんて感じで電話で頼まれる。
造りが古いため電気のスイッチは無く、基本的にどの部屋もヒモを引っ張って電気をつける。
ヒモを引っ張って電気をつけて、戸を閉める、ヒモを引っ張って電気を消す、一瞬真っ暗、急いで部屋を出る
って感じでいつも泣きそうになりながらやってた。
ある雨の日、二階の戸締りを頼まれたのは当時中学生の姉でした。
姉も二階に上がるのが苦手でいつも苦戦している。
まぁでも行かなきゃしょうがないので、行こうと階段に足をかけた時、
『トタトタトタ…』と小さい物音がしました。
二階には兄の部屋もあり、兄が廊下を歩いたのかなと思いましたが、うちの二階は人間の重さだとギシギシと大きな音がなります。
でもそれは何か小さい足音のように感じました。
姉は勇気を振り絞って二階に上がりました。
上がってそっと廊下を見る。
長い廊下の一番奥の左手が寝室。右手がトイレ。廊下のちょうど真ん中が母親の化粧室。廊下の反対側が兄の部屋。
姉はその母親の化粧室のドアが閉まりかける瞬間を見ました。
化粧室のドアは、うちの家の中でもトップクラスに建て付けが悪く、ドアノブをしっかりと回し力を入れて閉めないと無理です。
ちなみに閉めると『ガシャーン…!』という大きな音が出ます。
姉が見たのは何だか軽く閉める感じ。
軽くなので閉まり切らず、少し隙間が空いた状態になりました。
何か小さい足音のようなものと、弱々しく閉まろうとしたドアが怖くなってしばらく動けませんでした。
しかし一番奥の寝室だけでもと、寝室までダッシュして急いで戸締り。急いでダッシュして一階に降りました。
母親が帰宅後に姉は事情を話し、一緒にその化粧室へ行きました。
電気をつけて部屋を見ましたが、特に変わった様子は無かったように思えました。
姉が何か勘違いしたのかなと思いながら、化粧台の鏡を見た時、鏡越しに写った背後のタンスの上、
そこにあった赤いドレスを着た人形が倒れているのが見えました。
いつもはアクリルの箱のようなものを埃が付かないように被してあるのですが、それごと倒れていました。
他のものは倒れていないのに、それだけ。
姉は小さい足音と、弱々しくドアが閉まる光景を思い出して鳥肌が止まりませんでした。
母親の話によるとそれは結婚記念で友人から頂いたものらしく、今まで地震以外で倒れたことはないとのこと。
それからも時々足音の様なものと、人形が倒れている事がたまにあり、そんな事が続きいつの間にか人形は無くなっていました。
母親が処分したと言っていました。
それからは足音もすることはなく、今では家を建て替えて以前のような事はもう何もありません。
しかし去年、昔録画した番組が観たくてビデオテープを探しに行った屋根裏の物置で、布を被せられたその人形を見つけた時は戦慄しました。
母親はさすがに人形を捨てるのには抵抗があったらしく、出来なかったそうです。
しかし気味が悪かったので、その日のうちに近所のお寺に持って行って適切に処分してもらいました。 終