homepage 久保田篤正建築空間工房|一級建築士事務所
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障害福祉センター「うぽぽい」
令和8年3月末にお引き渡しが完了した羽生市における、障害福祉センター「うぽぽい」。
地域福祉の充実を目的とした身障者福祉施設の新築計画において、設計・監理業務まで携わらせていただいた。
本計画は、補助金事業として進められ、関係機関との協議、事業計画の整理、入札対応を経て、無事に竣工を迎えることができた。
今回は、計画の経緯を振り返りながら、竣工に至るまでのプロジェクトの流れをご紹介する。
本計画地は地元の地主さんから無償譲渡された農地を計画地とし、事業初期段階から農地転用および開発許可に関する行政協議を進めた。
福祉施設という公共性の高い用途である一方、周辺環境への配慮や排水計画、接道条件など、多角的な検討が必要となる。
特に、農地転用許可申請では、事業の必要性や土地選定理由、周辺農地への影響対策などを整理し、関係機関との協議を重ねながら地元測量事務所と協力し手続きを進めた。
こうした許認可業務は、事業スケジュール全体に大きく影響するため、設計業務と並行し、補助金に関しては埼玉県との協議の上、進行管理を行った。
■計画の背景
事業者様とは、7年前に加須市における障害者グループホーム、理事長ご自身の住宅に続き3件目の設計依頼となった。今回は、身障者福祉施設として利用者数増加への対応を目的として、新たな身障者施設の整備計画となる。
施設には、利用者の安全性・快適性だけでなく、職員の動線計画や地域とのつながりも求められた。
また、補助金事業としての採択を前提としていたため、限られた予算の中で必要機能を整理し、事業実現性を高める計画が重要となった。
■基本計画・補助金申請
事業初期段階では、施設運営者様と綿密なヒアリングを行い、必要諸室や運営方針を整理に重点を置いた。
- 利用者動線と職員動線の分離
- バリアフリーへの配慮
- 災害時の安全確保
- 将来の運営を見据えた可変性
- 地域との交流スペースの確保
これらを踏まえ、補助金申請に必要となる事業計画書や配置計画、設計者による工事費の検討を進めた。
■実施設計・コスト調整
補助金採択後は、実施設計へ移行。
近年の建築コスト上昇もあり、機能性を維持しながらコストバランスを整えることが大きなハードルとなった。
また、福祉施設特有の設備や法的要件も多く、当初は不慣れな設計見積となる部分もあったが、関係業者や専門メーカーと協議を重ねながら、一つひとつ仕様を整理し纏め上げ、補助金事業では限られた予算内での調整が求められるため、必要機能とコストのバランスを丁寧に検討し、事業者様と方向性を共有しながら設計を進めた。
特に以下の点について重点的に検討。
- メンテナンス性を考慮した材料選定
- 省エネルギー性能への配慮
- 利用者が安心できる空間デザイン
- 職員負担軽減につながる設備計画
施設利用者にとって、毎日を過ごす大切な場所となるため、温かみのある空間づくりを意識した。
■入札・工事着工へ
設計完了後は、入札資料の作成および入札対応を行った。
ここまでの業務において、基本計画における建築士のクリエイティブな発想に費やす時間とは別に、事業を確実に実行するための補助金申請の書類作成や面積調整、担当者との折衝に多くの時間を費やした。同じく補助金事業だった7年前のグループホームでの業務における悪夢の再現となった・・・。(泣)
入札業者からの質疑応答への対応や工事内容の整理を進め、施工者決定後は工事監理業務へ移行。
工事費高騰の中、なんとか予算内での工事費となったこと、胸を撫で下ろす。
工事期間中は、定例会議を重ねながら、品質・工程・コスト管理を実施。
そして補助金事業であるが上、着工、上棟、竣工と3回にわたる埼玉県による検査に係る精神的な疲労・・・。
現場では、実際の使い勝手を確認しながら細部調整を行い、施設運営者様と施工会社様と連携しながら完成を目指した。
■竣工
本事業は補助金事業であったため、年度内竣工が求められる厳しいスケジュールの中で進行。
設計段階から確認申請・開発許可・入札スケジュールを逆算し、関係機関との協議を早期に進めることで、工程遅延の防止に努めた。
工事期間中も、施工者・事業者・行政との連携を密に行いながら工程管理を徹底し、無事に年度末での竣工・引渡しを迎えることとなった。
福祉施設は、単に建物をつくるだけではなく、利用者の日常や安心を支える大切な社会基盤。今後も地域に根差した建築づくりを通じて、安心して利用できる施設整備に取り組んでまいります。
■感謝
今回のプロジェクトでは、補助金事業特有のスケジュール管理や行政協議、コスト調整など、多くの検討事項が山積みであった。
その中で、関係者の皆様と丁寧に協議を重ね、無事に竣工まで進めることができたのも、事業者様、施工担当者、設計ブレーンとのより良い建築を創り上げる気持ちの共有がなされたことと改めて感謝いたします。
設計の詳細については次回に続く。
小さな調剤薬局のかたち
これまで院内で機能していた薬局を、院外の独立した調剤薬局として計画する開発申請を伴うプロジェクト。
規模としては決して大きくありませんが、医療と地域をつなぐ拠点としての役割を担う、鶴ヶ島市における調剤薬局の計画が今月末で竣工となります。
院内から院外へ移行するということは、単なる「場所の移動」ではありません。患者さんにとっては動線が変わり、心理的な距離も生まれます。外観は過度に主張せず、既存医院、周辺建物に溶け込みながらも「入りやすさ」を大切にしています。
内部は限られた面積の中で、待合・受付・調剤・投薬という機能を無理なく整理する必要があります。その中で意識したのは、単なる効率性だけでなく「居心地」と「安心感」です。家具造作はその重要な要素となりました。
受付カウンターは、患者さんと薬剤師の距離を適切に保ちながらも、圧迫感を感じさせない高さと奥行きに調整。待合のベンチは壁面と一体化させ、空間に広がりを持たせています。また、木質の素材をベースにすることで、医療施設特有の緊張感を少しでも和らげることを意図しました。
調剤スペース側の造作は、機能性とメンテナンス性を重視しつつ、外から見えすぎないよう配慮しています。視線の抜けと遮りのバランスを取りながら、働く側にとってもストレスの少ない環境を目指しました。
私にとって調剤薬局の設計は初めてで保健所、調剤器具メーカーとの調整等、小さな建築ではありますが、その中に求められる要素は決して小さくありません。
空間構成、コスト等限られた条件の中で、どこまで質を高められるかが問われます。
今回の調剤薬局も、そうした設計の積み重ねによって、ご利用いただく皆様にとって長く必要とされる場所になることを願っています。
生成AIに驚愕ーCGパースを描いていただく
知り合いの建築家のSNS。
クライアントの前で作成した手描きのインテリアスケッチを生成AIに読み込ませCG風の完成度の高いプレゼン技術を紹介していた。
そんな馬鹿な!と思いつつ、これまで描いてきた「手描きパース」を生成AIに読み込ませてみた。
正直な感想は――驚愕・・・「マジか!」
↓今月末、竣工予定の羽生市福祉施設におけるスケッチパース
鉛筆のタッチ、遠近の癖、陰影の付け方。
それらを読み取り、わずか数分でCGへと変換してしまう。
↓2016年作成 北本市宗教法人整備計画における鳥瞰スケッチ
↓2018年 北本市デーノタメ遺跡の考察における鳥瞰スケッチ
コピー用紙に色鉛筆やマーカーなど、淡く色付けをしたスケッチパースが色濃くリアリティーが増した商品となる完成パースに昇華する。
通常(私の認識では)、手描きでメリハリのあるパースに仕上げる場合、厚みのあるボードに下図を転写し、不透明水彩の絵具やエアーブラシを使い仕上げていくため仕上に数日を要することとなる。
多少、意図とは違う表現もあるが、時代が変わったことを、肌で感じた。
生成AIはすごい。
生成AIは脅威ではなく、強力なプレゼンツールとなる。
手描きで構想を練り、AIで瞬時にビジュアル化し、さらに設計精度を高める。
これは、小さな設計事務所にとっても大きな可能性を感じている。
また新しい武器を手に入れたような感覚。
驚きと同時に、少しワクワクしている。
え!同業の皆さん、もう知ってるって?
建築とコミュニケーション能力
羽生市における身障者福祉移設の現場では足場の撤去が進み、ようやく建物の全貌が現れた。
図面や模型で何度も確認してきた外観ですが、実際に空の下で立ち上がった姿を見る瞬間は、設計者として何度経験しても特別もの。
プロポーション、開口のバランス、外壁の質感。スケール感が最終確認される重要な局面でもある。
内部では仕上工事が本格化している。
仕上材は、単なる“見た目”ではなく、耐久性・メンテナンス性・コストバランスまで含めた総合判断となる。
特に公共性や利用頻度の高い建物では、素材選定が将来的な維持管理費に直結重要な工事となる。
今回の計画は開発申請を伴う案件でもあり、設計と並行して膨大な行政協議を進めてきた。
敷地測量、排水計画、雨水処理計画、緑地率などなど…。
設計図面の裏側では、法令と技術基準との整合を一つずつ確認する地道な作業が続いている。
建物そのものだけでなく、敷地全体の成立性を担保することが、設計事務所の重要な役割となる。
今回の計画は開発申請を伴う案件でもあり、設計と並行して膨大な行政協議が必要となる。
設計期間もタイトだったことから、クライアントから紹介をいただいた地元の測量事務所の協力を仰いだ。
情報を共有していたつもりであったが、開発図面と現場にて手違いが発生してしまった。
原因は単純な伝達不足。
監理業務は、クライアント、施工者、行政、近隣、関係会社など、多方面との情報ハブでもあります。
今回改めて感じたのは、
「図面以上に、言葉と確認が重要」ということ。
メール一本、電話一本、事前共有の一枚資料。
その積み重ねが現場の安定につながることを痛感する出来事であった。
外部足場が外れ、内部も仕上げ段階に突入。
いよいよ竣工が視野に入ってきたた。
最後まで気を抜かず、納まり・品質・工程を確認しながら進めてまいります。
外構工事含めた完成後の姿を、また改めてご報告いたします。
2026年 新年のご挨拶
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2026年を迎え、設計事務所及び、当ブロブは開設から17年目に入りました。
改めて振り返ると、決して平坦な道のりではなく、その時々で悩み、立ち止まり、考え続けてきた時間の積み重ねだったように思います。
建築設計は、人、土地、状況と向き合う総合的な判断を要する仕事だと感じています。
敷地の環境、クライアントの想い、制度や予算、工事の現場——それら一つひとつに正解があるわけではなく、毎回が手探りです。
17年という時間の中で、社会の状況や建築を取り巻く環境も大きく変わりました。
法制度、補助金、求められる性能や説明責任は年々複雑になり、設計者に求められる役割も広がっています。
そうした中でも、流行や効率だけに流されることなく、「その場所にとって本当に必要な建築とは何か」を考え続ける姿勢だけは、これからも変えずにいたいと考えています。
時間を重ねる一方で、まだまだ学ぶことは多く、設計事務所として人として未熟だという自覚もあります。
だからこそ慢心せず、一つひとつの仕事に緊張感を持ち、丁寧に積み上げていく一年にしたいと思います。
これまで関わってくださったクライアントの皆様、施工者の方々、ブレーンやスタッフの大矢ちゃん、そして日々このブログを読んでくださる方々に、心より感謝申し上げます。
本年も、設計の現場で感じたことや考えていることを、できる限り正直に発信していくつもりです。
2026年が、皆様にとっても実り多い一年となりますように。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
令和八年 元旦
補助金申請による着工検査
羽生市にて着工いたしました身障者福祉施設。
着工時に、補助金の対象条件を満たしているかを確認する「着工検査」が県の監査課担当立合いの元、基礎配筋完了時である先月の中旬に実施されました。
設計事務所の業務には、図面作成や監理だけでなく、クライアントが利用できる「補助金制度」の手続きサポートも含まれています。特に県が実施する補助金制度は種類が多く、年度ごとに要件が細かく変わるため、毎回の確認作業が欠かせません。
個人事務所と云うこともあり、入札を条件とする公共建築の実績もなく非常に難儀を要するこの手の検査。
図面一式、各種申請業務、設計見積内訳、入札資料、構造関係の計算資料、性能証明書、監理体制に関する書類・・・などなど、着工時なのに膨大な書類・・・。
制度側のチェック項目を一つ一つ満たしていく作業は手間がかかりますが、補助金自体は本当にありがたいもので、施主様の工事費負担は軽減できますし、性能向上にもつながり、活用すべき制度なのは間違いありません。
そのため私たちも、制度の解釈に間違いがないか、最新のガイドラインに変更がないかを確認しながら、慎重に資料を整えていきます。
検査を無事に通過したあとは、小さくガッツポーズ。
補助金が適用される安心感とともに気持ちよく工事をスタートできます。
設計事務所の仕事は図面作成だけではなく、こうした「見えない調整」の積み重ねでも成り立っています。クライアントのメリットにつながる仕組みは積極的に活用していきたいと考えますが、すでに来週の中間検査の準備を始めなければならない師走時・・・。
現場は「あっという間」に上棟。
現場事務所からの定点観測です。↓
手描きパースの魅力 ─ 平行定規で描く
建築設計事務所というと、CADやCGでパースを作るイメージを持たれる方が多いかもしれません。
もちろん私たちも3Dソフトを活用していますが、実は手描きの完成パースも根強い人気があると感じております。
羽生市にて着工いたしました障害者福祉施設の外装材の色選定にあたり、手書きの外観パースを週末に作成しました。仕事ではなく、若干趣味の範囲かもしれません・・・。
平行定規を使った手描きパースの制作風景を少しだけお伝えします。
前回のブログにて、ご紹介いたしました模型写真を利用して、画像の上にトレーシングペーパーを重ねます。
2消点図法により、下描きの上から黒と赤、2色のホルダーで輪郭を丁寧に描き込みます。
平行定規を使うと、躯体ラインや窓枠などの水平・垂直が確実に揃うので、手描きでも図面の精度をきちんと保つことができます。
あえてラフさを残した細かな揺らぎが、人の手で描いた温度を生みます。
ペン入れの後、コピックや色鉛筆で少しずつ色を重ねていく。
コピックは補充インクを継ぎ足ししながら35年は使っています。
もはや老舗鰻店、焼き鳥屋の秘伝のタレ・・・。良い味が出ます。
光の差す方向を考えながら、床や壁に陰影を加えていくと、白い紙の上に空間が立体的に浮かび上がってきます。
「ここに暮らすと、こんな光の入り方になるのかな」
利用者、スタッフの皆さんのこれからの生活を感じ取れる瞬間が、手描きパースの魅力です。
CGパースは正確で美しく、仕上がりもスピーディ。
一方で、手描きパースには “余白” や “温度” を感じることができます。
線一本の強弱や、色ムラさえも空気感になり、CGとは違う、“人の息づく仕上がり”
を感じ、クライアント、現場での明日の定例会議ではアイデアや会話がどんどん膨らんでいくことでしょう。
平行定規を使うと、図面の精度と手描きならではのやわらかさを両立できます。
完成パースは建物ができる前の大切なコミュニケーションツール。
これからも、案件ごとに一枚一枚ていねいに描いていきたいと思います。
羽生市障害者施設「うぽぽい」着工へ
羽生市で進めておりました障害者施設プロジェクトが、このたび実施設計を完了し、着工の運びとなりました。
先週に地縄、杭芯位置の現場検査を終え、柱状改良による地盤改良工事が始まっている。
長い検討の時間を経て、ようやく工事が始まるこの瞬間は、設計者としても感慨深いものがある。
本プロジェクトは、地域に根ざした障害者支援の拠点となる施設であり、単なる「建物」をつくるのではなく、利用者の生活の質を高め、地域社会とつながる「居場所」をどう実現するかが設計のテーマであった。
基本設計の段階から、運営法人のクライアントと幾度となく打ち合わせを重ね、特に課題となったのは以下の点となる。
・動線計画:車いす利用者が安心して移動できる幅と、介助者が寄り添って動ける余裕をどう両立させるか。廊下を単に広げるだけでなく、視線の抜けや曲がり角の処理など細部まで検討を行った。
・共用空間の居心地:食堂や居間といった人が集まる場では「にぎやかさ」と「落ち着き」を両立させることが求められました。音環境や照明計画にも配慮し、安心感を持ちながら人とつながれる空間づくりを目指した。
・防災・安全性:避難経路をどう確保するかは大きなテーマとし、緊急時にスムーズな誘導ができるよう、ルートを明確化するとともに、各所に待機スペースを確保した。
実施設計段階では、建物の性能や法規に基づく安全性を満たしながらも、日々の暮らしに寄り添ったディテールを重視。
・開口高さを意識し、座ったままでも外の景色を眺められるように。
・屋外には季節の移ろいを感じられる庭を計画し、利用者が気軽に自然と触れ合えるように。
・設備面では、空調や給排水計画を「快適さ」と「メンテナンス性」の両面から検討。
設計は「美しい線を描くこと」だけではなく、日常の細部を想像し、そこに寄り添う作業の積み重ねであることを改めて感じたプロジェクトとなった。
着工に向けてこれから始まる工事では、数多くの職人さんや技術者の力が加わり、机上で描いた線が現実の建築へと変わっていく。
現場の熱気や工夫の積み重ねが、図面以上の豊かさを生み出す瞬間を、私たち設計者も楽しみにしている。
完成は2026年春。地域に開かれ、利用者が安心して過ごせる「日常の拠点」として、この建物が長く愛される地域の拠点となることを目指して。
草津アトリエ開設のお知らせ
このたび、群馬県草津町にてアトリエを新たに開設いたしました。
草津といえば温泉地として知られていますが、標高が高く夏は埼玉と気温が10度近く低く、四季折々の自然がとても豊かで、設計活動のインスピレーションを受けるには最適な場所であり、私たち自身の仕事場であると同時に、訪れる方々と交流する小さなアトリエとなります。
こちらの別荘は、長く使われていなかった築50年の建物を知人から無償譲渡いただいたもの。
「亡き父が大切にしていた建物で思い入れが強く、他人に売却したくない。大切に利用いただける方にお渡ししたい。」という知人の気持ちを受け、建物を引き継ぐこととなった。使われなくなった建物を継承し、建築を残しつなぐ取り組みは、私たち設計事務所としても非常に意義深いもの。
絶望的な酷暑であった8月は、毎週末草津に足を運び、換気を促しながら少しずつ建物に手を加え、気持ちよく過ごすため必要な部分に自身で手を入れるプチリフォームを行った。
古い造りなので、別荘と云うよりは和室メインの民宿に近い空間であるが、家内からは過剰な費用を掛けないこと、愛着が過ぎていつの日か手放すことができなくならないことが譲渡いただく最大の条件であると云われており・・・。
・照明器具を交換:旧式の器具を撤去し、調光可能なLED照明に更新。
・床下補強:外部出隅の束柱の柱脚が外に開くことで床が下がり傾斜が生じている。現況維持のため外部の束に最低限の補強材を施し安全性を担保。
防腐塗装剤の色が薄い箇所が今回の補強箇所。
色違いは在庫品にて、ご容赦ください。(笑)
その他、細かいことではあるがキッチン扉のツマミの交換や、ベランダで焚火を楽しむための焚火台の購入など、前オーナーが愛した建物の魅力や空間を残しつつ、快適性と安全性を兼ね備えた空間へと少しずつ時間をかけて整え始める。
この建物の最大の魅力は何と云ってもベランダからの眼下に広がる樹々の眺望。
四季ごとに移り変わる景色は、仕事の合間に気持ちを整え、創作活動に新たな刺激を与えてくれることであろう。都市部では得られない静けさと豊かさが、この場所の大きな財産となります。
このアトリエは、設計活動の拠点であると同時に、クライアントとの打合せなどにも活用していく予定であり、「空き家・別荘をどう活かしていくか」という社会的な課題に対しても、実例のひとつとしてご覧いただければと考えている。
建物を受け継ぎ、手を加え、再び息を吹き込むという経験は、私たちにとって大きな学びであり、新しい拠点を通じて得た知見を、今後の設計活動や建物再生の取り組みに活かしていきたい。
そして、森の住人「カマドウマ」(別名:便所コオロギ)と軒裏に穴を開けるキツツキとの果てしない戦いが続くのであった・・・。(泣)
北本市 矢口造園様自己用倉庫
北本市の株式会社矢口造園様の自己用倉庫。
建物自体は2023年の年末に完成しておりましたが、施主工事である外構の完成を迎え外観の竣工写真を先月撮影。
造園会社における自己用倉庫は、資材や道具を整理して保管するだけでなく、毎日の作業を効率的に進められる拠点として機能するよう建築を計画した。
造園の業務は、植栽や庭石など重量のある資材を扱うことも多く、また天候に左右されながらの作業が少なくない。そんな中で、作業の合間に立ち寄りやすく、資材をすぐに出し入れできる倉庫は、働く方々にとって“頼れるパートナー”である存在が義務付けられた。
倉庫計画の4年前に竣工し、設計をさせていただいた同社の木造社屋。
L型の社屋配置プランと向き合うように倉庫を配置し、同様にL型とし全体をコの字型とすること、壁仕上は異なるものの色調を合わせることで建物の一体感が増した。
倉庫というと「無機質でシンプル」というイメージを持たれる方が多いかと思う。今回は「業務に寄り添う使いやすさ」と「既存建築と馴染む佇まい」の両立をテーマとした。
・内部の見通しを良くし、作業動線を短くするレイアウト。
・周囲の緑や街並みに自然となじむ落ち着いた外観。
こうした工夫によって、日々の仕事が少しでも快適になり、長く使っていただける倉庫になるよう心がけた。
クライアントとの当初の打ち合わせでは「とにかく丈夫で、たくさん資材が置ける倉庫を」という話から始まった。
ただ、それだけでは“ただの大きな箱”になってしまう。
「どうすれば造園会社らしい機能的な倉庫になるか?」を考え導いたのが、
・作業効率を上げるレイアウト。
・コストと耐久性のバランス
・緑に映える外観デザイン。
特に、入口の大きさやシャッターの位置は、現場スタッフさんの動きをシミュレーションしながら検討。倉庫は毎日使う場所だからこそ、小さな不便が積み重なると大きなストレスとなりうる。3箇所の電動シャッターは使用用途に合わせ高さを変えている。
「これまで資材を分散して置いていたため、探すのに時間がかかることもありました。新しい倉庫のおかげで、整理しやすく、必要なものをすぐに取り出せるようになりました。外観もシンプルで、街並みや周囲の景色に違和感なく馴染んでいるのがとても気に入っています。」
クライアントからこのようなお言葉をいただき、設計者として大きな喜びを感じている。
施工を担当してくださった地元業者には、限られた工期の中で丁寧かつ確実に仕上げていただいた。
細やかな配慮や現場での柔軟な対応のおかげで、設計意図をしっかりと形にすることがでた。改めて心より感謝申し上げる。
倉庫は一見「裏方の建物」ではあるが、働く人にとっては日々の作業を支える大切な拠点。
今回のプロジェクトを通して、建築が業務を支え、日常の活力になることを改めて実感している。
これからも「街の建築家」として、地域に寄り添いながら、暮らしや仕事を支える空間づくりに取り組んでまいります。
■建物データ
用途:自己用倉庫(造園資材・道具保管用)
構造:鉄骨造 2階建て
延床面積:981.26㎡
建築面積:710.33㎡
工期:2023年5月〜2023年12月(約8か月)














































