homepage 久保田篤正建築空間工房|一級建築士事務所
住宅とは選ぶものではなく創り出すのものです。
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ボリューム模型から考える建築 ― 住宅と保育園、2つの案 ―
設計の初期段階で、図面を描く前に模型をつくることがある。
今回、連休中に作成したのは、住宅と保育園、それぞれの計画についてのボリューム模型である。
建物の大きさや高さ、配置、周囲との関係を、立体として確認するための模型である。
材料は断熱材のスタイロフォーム。
これを熱線ヒートカッターで切りながら、建物のおおよその形をつくっていく。
この方法は、私が建築を学んでいた修業時代に身につけたもので建築家の丹下健三の発案によるものと聞いている。
アトリエ事務所時代、丹下事務所出身の所長を含めスタッフがスタイロ模型を作成し、プロジェクトの案を絞っていく。
休日も自宅で模型を作成するために35年ほど前に購入したヒートカッターを今でも大切に使っている。
スタイロフォームに熱線を当てると、抵抗なくスッと切れていく。定規を使って正確に切るというより、手の感覚で角度や大きさを調整しながら、建築のボリュームを探っていく。建築をまず立体として捉える考え方である。
図面だけで考えるのではなく、まず形にしてみる。
模型を眺め、向きを変え、少し削り、またつくり直す。
そうすることで、図面上では気づかなかった建築の可能性が見えてくる。
今回も、住宅と保育園についてそれぞれ2案をつくった。
住宅では、建物のボリュームと庭との関係。
A3-S=1/100
保育園では、建物と園庭のつながりや、子どもたちが過ごす場所の広がり。
平面図だけでは捉えにくい空間の関係が、模型にすると見えてくる。
A3-S=1/200
この段階で答えが決まっているわけではない。
「こちらのほうが良いのかなぁ?」
「もう少し高さを出してみようかしら・・・」
「ここを開いたらどうなるのかぁ」
模型を前に悩み考え、また図面に戻る。
図面から模型へ。
模型から図面へ。
その往復を繰り返しながら、少しずつ建築の形を整えていく。
3Dモデリングが当たり前となった現在でも、手でつくるボリューム模型には意味があると思っている。
スタイロフォームを切り、手で削り、模型を眺める。
そこには、画面の中だけでは得られない、建築を考えるための時間がある。
30年前の修業時代に身につけたこの方法は、今も設計の中で生きている。
建築は、最初から答えが決まっているものではない。
つくりながら考え、考えながらつくる。
その過程の中から、確信を得た一つの建築が生まれてくる。
北本市における縫製工場計画
地元で長年操業を続けてきた縫製工場の新築計画。
現在は基本設計の段階。クライアントから提示された多くの要望事項を一つずつ確認しながら、建物全体の構成を整理している。
今回の計画では、長年の操業の中で培われてきた作業の流れや機械配置、材料や製品の搬入・搬出、そして働く人たちの動きなど、プランに対する明確で強い要望がある。その一つひとつには理由があり、これまで積み重ねられてきた現場の経験が、そのまま建築への要求となっている。
来週は、実際に工場で働く現場の方たちとの打合せを予定している。
これまで整理してきたプランをもとに、実際の作業動線や各スペースの位置関係について意見を伺い、計画をさらに深めていくための打合せとなる。
その打合せに向けて作成していた模型を活用する。
平面図だけでは伝わりにくい建物全体の構成や空間の関係を、模型によって立体的に確認する。実際に建物を使う方たちと模型を囲みながら、それぞれの要望や疑問を一つずつ整理していく予定である。
縫製工場には、一般的な建物とは異なる特有の設備や作業環境がある。多くの機械が並ぶ作業空間、それを支える設備、材料の搬入から製品の出荷までの流れ。それぞれの場所や動線には、長年の仕事の中で培われてきた理由がある。
設計図だけでは見えてこない現場ならではの意見を、今回の打合せを通して改めて確認したいと考えている。
一方で、基本設計と並行して行政との協議も進めている。計画地では開発申請に関わる手続きが必要となるため、建物の配置や敷地利用などについて、早い段階から行政との調整を行っている。
クライアントの要望、現場で働く方たちの意見、そして敷地や法規の条件。
それぞれを一つずつ整理しながら、建築としてまとめていく。
目指すのは、華美な建築ではなく、働くために必要な機能を備え、長く使い続けることのできる質実剛健な工場建築。
来週の打合せでは、この模型を囲みながら、現場の声を伺っていく。
北本市内 現場巡礼
夏の合間の少しだけ涼しい一日だった本日、北本市内で設計監理を行っている調剤薬局が無事に上棟を迎えた。
この4月に鶴ヶ島市での調剤薬局を竣工したばかりだが、違う事業者様からのご依頼で偶然に同用途の計画が続いた。
上棟は建物の骨組みが組み上がる大切な節目であり、これまで図面で検討してきた空間が実際の建物として形になり始める瞬間に立ち会う。
現場では柱や梁の配置、開口部の位置、待合スペースの広さなどを確認し、設計意図が正確に反映されているかを施工会社とともにチェック。
調剤薬局では、患者様が安心して利用できる動線計画や、スタッフが効率よく作業できる調剤室のレイアウトが重要になり、自然光を取り入れた明るい待合空間や、清潔感のある内外装となるよう細部まで配慮が必要となる。
今後は屋根・外壁工事、設備工事へと進み、完成に向けて現場監理を続け、地域の皆様に長く親しまれる薬局となるよう、取り組んでいきたい。
また、現在監理を行っている北本市内の住居兼用事務所では、内装工事が着々と進んでおり、クライアントであるご夫婦をお招きし、定例会議が行われた。
住まいと事務所を一つの建物に計画する場合は、「暮らしやすさ」と「働きやすさ」の両立が重要であり、今回の計画では、来客動線と家族の生活動線を分けることで、プライバシーを確保しながら快適な執務環境の実現を目指している。
現場では壁・天井の下地工事が進み、空間の広がりや各部屋のつながりが実感できるようになってきた。図面では伝わりにくい天井高さや採光、窓からの眺望も確認しながら、細かな納まりについて施工会社と打ち合わせを重ね、クライアントにおかれても工事途中の経過をご確認いただき、外周部の断熱材の施工状況をご確認いただき、建物への安心、愛着が増したことと実感している。
完成後は、住まいとしての居心地の良さと、来客を迎える事務所としての機能性を兼ね備えた建物となる予定であり、これからも現場の進捗を随時ご紹介してまいります。
現場巡礼。猛暑、酷暑日の合間、過ごしやすい一日で助かりました・・・。
地域に開かれた福祉施設 外観編
羽生市における障害者福祉施設「うぽぽい」の外観計画。
本施設では、利用者が安心して利用できることはもちろん、地域とのつながりを大切にした施設となるよう計画を進めた。その考え方を象徴する要素の一つが、用途に応じて設けた2つのエントランス。
利用者や職員が日常的に利用するエントランスと、地域交流や来訪者、災害時の避難場所の利用を想定したエントランスをそれぞれ配置することで、機能的で分かりやすい動線計画とした。異なる利用形態に対応しながらも、建物全体として統一感のあるデザインとなるよう配慮している。
■リピートとコントラストによる外観デザイン
外観デザインでは、「リピート(反復)」と「コントラスト(対比)」を意識している。
建物全体に共通する開口部や外装材のリズムを整えることで、落ち着きと統一感のある表情を創出し、2つのエントランス部分には同じデザインの下屋を設け、外壁仕上を塗壁とし、建物のアクセントとなるよう計画した。
繰り返し現れるデザイン要素によって建物全体のまとまりを生み出しながら、エントランスまわりを印象的に見せることで、それぞれの入口の役割が伝わる構成としている。
2つのエントランスへと続くアプローチには連続した下屋は、建物全体に一体感を持たせるとともに、来訪者を外構からエントランスへ自然と導くデザインとしている。
雨天時でも濡れることなく乗降できる車寄せ空間を確保し、送迎車両や介護車両が利用しやすく、利用者の移動負担を軽減するとともに、職員による介助も行いやすい計画としている。
下屋は単なる雨除けとしての機能だけでなく、建物に適度な水平ラインを与え、落ち着きと親しみやすさを演出し、快適なアプローチ空間となった。
また、エントランスに向かって伸びる下屋が建物の表情に奥行きを与え、影を落とし建物に奥行きを与えている。内部空間をより広く、高く感じさせるよう意図的に軒天上を低く抑えており、利用者用玄関と地域利用者用玄関を緩やかに結びながら、それぞれの入口の存在を分かりやすく示している。
外観デザインで採用した「リピートとコントラスト」の考え方は、このアプローチ空間に反映させ、連続する下屋による統一感と、エントランスごとの表情の違いによるアクセントが、施設の個性を生み出している。
■地域に親しまれる施設を目指して
福祉施設は利用者だけのための建物ではなく、地域とのつながりを育む場でもある。
そのため、本施設では閉鎖的な印象にならないよう、親しみやすさと安心感を得る外観、外構を目指した。平屋建て緩勾配の屋根形状の柔らかな印象を活かし、街並みに調和するデザインとしている。
利用者や地域の方々を優しく迎え入れるエントランスのアプローチは、本施設の設計コンセプトである「地域に開かれた居場所」を象徴する空間のひとつであり、2つのエントランスがそれぞれの利用者を迎え入れながらも、一つの建物として調和する姿は、本施設が目指す「利用者と地域をつなぐ福祉施設」というコンセプトを表現している。
この福祉施設が末永く地域の皆さまに親しまれ、多くの交流が生まれる場所となることを願っている。
木造大空間による福祉施設 内装編
このたび、計画から設計監理まで携わらせていただいた羽生市における障害者福祉施設「うぽぽい」。今回は内部空間についてお伝えする。
施設の中心となる多目的室・食堂は、利用者が快適に過ごせるよう開放感のある大空間としました。構造にはテクノストラクチャー工法を採用し、柱や筋交いは木造在来であるものの、梁は鉄骨で構成され木造建築でありながら柱の少ない広々とした空間を実現しています。
年度内工事であり、申請業務と工期を短縮する狙いも併せ持ち、木のぬくもりを感じられる内装とすることで、利用者や職員が落ち着いて過ごせる環境づくりを目指した。
また、職員が利用者を見守りやすい平面計画とすることで、日々の運営にも配慮しました。自然光を取り入れた明るい空間は、利用者同士の交流や活動を促進する場となっている。
■利用者と地域に配慮した施設計画
敷地内には、利用者や送迎車両が利用する出入口と、地域住民や来訪者が利用する出入口をそれぞれ設け、動線の分離を図りました。これにより、安全で円滑な施設利用可能としている。
また、感染症対策として十分な換気計画を行い、各室に自然換気と機械換気を組み合わせた環境を整備しました。活動室など人が多く集まる空間では、ゆとりのある天井高さを確保することで空気容量を増やし、開放感と快適性の向上を図った。
さらに、木造大空間の特徴を活かし、利用者同士の交流が生まれやすく、職員による見守りもしやすい空間構成とし、勾配天井に架かる梁は、鉄骨のため木張りで化粧を施し、木の温かみを持たせている。
これらの工夫により、利用者が安心して過ごせるとともに、地域に開かれた福祉施設の実現を目指した。
■開放感と快適性を備えた内部空間
施設の中心となる活動室は、利用者がのびのびと過ごせる空間となるよう計画した。
木造大空間を可能とするテクノストラクチャー工法を採用することで、柱の少ない広々とした室内空間を実現している。
職員の見守りがしやすく、利用者同士のコミュニケーションも生まれやすい、開放的な環境となっている。
また、感染症対策の観点から十分な換気性能を確保するとともに、天井高さにゆとりを持たせることで室内の空気容量を確保。これにより、快適な室内環境の維持とともに、利用者が圧迫感を感じることなく過ごせる空間となっている。
また、水廻り空間については、日常的に多くの利用者が使用することから、清掃性や耐久性に配慮した計画とした。
洗面スペースやトイレなどの壁面には、汚れや水はねが生じやすい箇所を中心にメラミン不燃化粧板を採用している。傷や汚れが付きにくく、日々の清掃が容易であるため、衛生的な環境を維持しやすい仕上げ材とした。
また、耐水性・耐久性にも優れていることから、長期的な維持管理の負担軽減にもつながっている。利用者が安心して快適に使用できることはもちろん、施設を運営する職員の方々の管理面にも配慮した計画としました。
福祉施設では、使いやすさだけでなく、日々のメンテナンス性や衛生環境の維持も重要な要素となる。前回設計の施設では、コストを鑑み汚れ防止機能を持つクロス張りを一部水廻りに採用したが予期できぬ汚れが発生してしまった。本施設では、仕上げ材の選定においても機能性と快適性の両立を図っている。
浴室に関しても前回は、在来工法を採用し内装をタイル張りとしたが、メンテナンスを考慮し、大型のユニットバス(3m×6m)を採用し、防水性や清掃性に優れた計画としています。日々の衛生管理やメンテナンスがしやすく、施設運営の負担軽減にもつながっている。
さらに、入浴介助を必要とする利用者に対応するため、電動介護リフターを設置。利用者の身体的負担を軽減するとともに、介助を行う職員の負担軽減や安全性の向上にも配慮している。
利用者一人ひとりが自分らしく過ごせる居場所となるよう、光・木・空気を感じられる空間づくりを心掛け開放感のある共用空間と落ち着いて過ごせる居場所を適切に配置した。自然採光と自然換気を積極的に取り入れ、木質感のある内装によって温かみと安心感を創出し、利用者や職員、地域の方々が心地よく集い交流できる施設を目指した。
次回、外観編に続く。
障害福祉センター「うぽぽい」
令和8年3月末にお引き渡しが完了した羽生市における、障害福祉センター「うぽぽい」。
地域福祉の充実を目的とした身障者福祉施設の新築計画において、設計・監理業務まで携わらせていただいた。
本計画は、補助金事業として進められ、関係機関との協議、事業計画の整理、入札対応を経て、無事に竣工を迎えることができた。
今回は、計画の経緯を振り返りながら、竣工に至るまでのプロジェクトの流れをご紹介する。
本計画地は地元の地主さんから無償譲渡された農地を計画地とし、事業初期段階から農地転用および開発許可に関する行政協議を進めた。
福祉施設という公共性の高い用途である一方、周辺環境への配慮や排水計画、接道条件など、多角的な検討が必要となる。
特に、農地転用許可申請では、事業の必要性や土地選定理由、周辺農地への影響対策などを整理し、関係機関との協議を重ねながら地元測量事務所と協力し手続きを進めた。
こうした許認可業務は、事業スケジュール全体に大きく影響するため、設計業務と並行し、補助金に関しては埼玉県との協議の上、進行管理を行った。
■計画の背景
事業者様とは、7年前に加須市における障害者グループホーム、理事長ご自身の住宅に続き3件目の設計依頼となった。今回は、身障者福祉施設として利用者数増加への対応を目的として、新たな身障者施設の整備計画となる。
施設には、利用者の安全性・快適性だけでなく、職員の動線計画や地域とのつながりも求められた。
また、補助金事業としての採択を前提としていたため、限られた予算の中で必要機能を整理し、事業実現性を高める計画が重要となった。
■基本計画・補助金申請
事業初期段階では、施設運営者様と綿密なヒアリングを行い、必要諸室や運営方針を整理に重点を置いた。
- 利用者動線と職員動線の分離
- バリアフリーへの配慮
- 災害時の安全確保
- 将来の運営を見据えた可変性
- 地域との交流スペースの確保
これらを踏まえ、補助金申請に必要となる事業計画書や配置計画、設計者による工事費の検討を進めた。
■実施設計・コスト調整
補助金採択後は、実施設計へ移行。
近年の建築コスト上昇もあり、機能性を維持しながらコストバランスを整えることが大きなハードルとなった。
また、福祉施設特有の設備や法的要件も多く、当初は不慣れな設計見積となる部分もあったが、関係業者や専門メーカーと協議を重ねながら、一つひとつ仕様を整理し纏め上げ、補助金事業では限られた予算内での調整が求められるため、必要機能とコストのバランスを丁寧に検討し、事業者様と方向性を共有しながら設計を進めた。
特に以下の点について重点的に検討。
- メンテナンス性を考慮した材料選定
- 省エネルギー性能への配慮
- 利用者が安心できる空間デザイン
- 職員負担軽減につながる設備計画
施設利用者にとって、毎日を過ごす大切な場所となるため、温かみのある空間づくりを意識した。
■入札・工事着工へ
設計完了後は、入札資料の作成および入札対応を行った。
ここまでの業務において、基本計画における建築士のクリエイティブな発想に費やす時間とは別に、事業を確実に実行するための補助金申請の書類作成や面積調整、担当者との折衝に多くの時間を費やした。同じく補助金事業だった7年前のグループホームでの業務における悪夢の再現となった・・・。(泣)
入札業者からの質疑応答への対応や工事内容の整理を進め、施工者決定後は工事監理業務へ移行。
工事費高騰の中、なんとか予算内での工事費となったこと、胸を撫で下ろす。
工事期間中は、定例会議を重ねながら、品質・工程・コスト管理を実施。
そして補助金事業であるが上、着工、上棟、竣工と3回にわたる埼玉県による検査に係る精神的な疲労・・・。
現場では、実際の使い勝手を確認しながら細部調整を行い、施設運営者様と施工会社様と連携しながら完成を目指した。
■竣工
本事業は補助金事業であったため、年度内竣工が求められる厳しいスケジュールの中で進行。
設計段階から確認申請・開発許可・入札スケジュールを逆算し、関係機関との協議を早期に進めることで、工程遅延の防止に努めた。
工事期間中も、施工者・事業者・行政との連携を密に行いながら工程管理を徹底し、無事に年度末での竣工・引渡しを迎えることとなった。
福祉施設は、単に建物をつくるだけではなく、利用者の日常や安心を支える大切な社会基盤。今後も地域に根差した建築づくりを通じて、安心して利用できる施設整備に取り組んでまいります。
■感謝
今回のプロジェクトでは、補助金事業特有のスケジュール管理や行政協議、コスト調整など、多くの検討事項が山積みであった。
その中で、関係者の皆様と丁寧に協議を重ね、無事に竣工まで進めることができたのも、事業者様、施工担当者、設計ブレーンとのより良い建築を創り上げる気持ちの共有がなされたことと改めて感謝いたします。
設計の詳細については次回に続く。
小さな調剤薬局のかたち
これまで院内で機能していた薬局を、院外の独立した調剤薬局として計画する開発申請を伴うプロジェクト。
規模としては決して大きくありませんが、医療と地域をつなぐ拠点としての役割を担う、鶴ヶ島市における調剤薬局の計画が今月末で竣工となります。
院内から院外へ移行するということは、単なる「場所の移動」ではありません。患者さんにとっては動線が変わり、心理的な距離も生まれます。外観は過度に主張せず、既存医院、周辺建物に溶け込みながらも「入りやすさ」を大切にしています。
内部は限られた面積の中で、待合・受付・調剤・投薬という機能を無理なく整理する必要があります。その中で意識したのは、単なる効率性だけでなく「居心地」と「安心感」です。家具造作はその重要な要素となりました。
受付カウンターは、患者さんと薬剤師の距離を適切に保ちながらも、圧迫感を感じさせない高さと奥行きに調整。待合のベンチは壁面と一体化させ、空間に広がりを持たせています。また、木質の素材をベースにすることで、医療施設特有の緊張感を少しでも和らげることを意図しました。
調剤スペース側の造作は、機能性とメンテナンス性を重視しつつ、外から見えすぎないよう配慮しています。視線の抜けと遮りのバランスを取りながら、働く側にとってもストレスの少ない環境を目指しました。
私にとって調剤薬局の設計は初めてで保健所、調剤器具メーカーとの調整等、小さな建築ではありますが、その中に求められる要素は決して小さくありません。
空間構成、コスト等限られた条件の中で、どこまで質を高められるかが問われます。
今回の調剤薬局も、そうした設計の積み重ねによって、ご利用いただく皆様にとって長く必要とされる場所になることを願っています。
生成AIに驚愕ーCGパースを描いていただく
知り合いの建築家のSNS。
クライアントの前で作成した手描きのインテリアスケッチを生成AIに読み込ませCG風の完成度の高いプレゼン技術を紹介していた。
そんな馬鹿な!と思いつつ、これまで描いてきた「手描きパース」を生成AIに読み込ませてみた。
正直な感想は――驚愕・・・「マジか!」
↓今月末、竣工予定の羽生市福祉施設におけるスケッチパース
鉛筆のタッチ、遠近の癖、陰影の付け方。
それらを読み取り、わずか数分でCGへと変換してしまう。
↓2016年作成 北本市宗教法人整備計画における鳥瞰スケッチ
↓2018年 北本市デーノタメ遺跡の考察における鳥瞰スケッチ
コピー用紙に色鉛筆やマーカーなど、淡く色付けをしたスケッチパースが色濃くリアリティーが増した商品となる完成パースに昇華する。
通常(私の認識では)、手描きでメリハリのあるパースに仕上げる場合、厚みのあるボードに下図を転写し、不透明水彩の絵具やエアーブラシを使い仕上げていくため仕上に数日を要することとなる。
多少、意図とは違う表現もあるが、時代が変わったことを、肌で感じた。
生成AIはすごい。
生成AIは脅威ではなく、強力なプレゼンツールとなる。
手描きで構想を練り、AIで瞬時にビジュアル化し、さらに設計精度を高める。
これは、小さな設計事務所にとっても大きな可能性を感じている。
また新しい武器を手に入れたような感覚。
驚きと同時に、少しワクワクしている。
え!同業の皆さん、もう知ってるって?
建築とコミュニケーション能力
羽生市における身障者福祉移設の現場では足場の撤去が進み、ようやく建物の全貌が現れた。
図面や模型で何度も確認してきた外観ですが、実際に空の下で立ち上がった姿を見る瞬間は、設計者として何度経験しても特別もの。
プロポーション、開口のバランス、外壁の質感。スケール感が最終確認される重要な局面でもある。
内部では仕上工事が本格化している。
仕上材は、単なる“見た目”ではなく、耐久性・メンテナンス性・コストバランスまで含めた総合判断となる。
特に公共性や利用頻度の高い建物では、素材選定が将来的な維持管理費に直結重要な工事となる。
今回の計画は開発申請を伴う案件でもあり、設計と並行して膨大な行政協議を進めてきた。
敷地測量、排水計画、雨水処理計画、緑地率などなど…。
設計図面の裏側では、法令と技術基準との整合を一つずつ確認する地道な作業が続いている。
建物そのものだけでなく、敷地全体の成立性を担保することが、設計事務所の重要な役割となる。
今回の計画は開発申請を伴う案件でもあり、設計と並行して膨大な行政協議が必要となる。
設計期間もタイトだったことから、クライアントから紹介をいただいた地元の測量事務所の協力を仰いだ。
情報を共有していたつもりであったが、開発図面と現場にて手違いが発生してしまった。
原因は単純な伝達不足。
監理業務は、クライアント、施工者、行政、近隣、関係会社など、多方面との情報ハブでもあります。
今回改めて感じたのは、
「図面以上に、言葉と確認が重要」ということ。
メール一本、電話一本、事前共有の一枚資料。
その積み重ねが現場の安定につながることを痛感する出来事であった。
外部足場が外れ、内部も仕上げ段階に突入。
いよいよ竣工が視野に入ってきたた。
最後まで気を抜かず、納まり・品質・工程を確認しながら進めてまいります。
外構工事含めた完成後の姿を、また改めてご報告いたします。
2026年 新年のご挨拶
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2026年を迎え、設計事務所及び、当ブロブは開設から17年目に入りました。
改めて振り返ると、決して平坦な道のりではなく、その時々で悩み、立ち止まり、考え続けてきた時間の積み重ねだったように思います。
建築設計は、人、土地、状況と向き合う総合的な判断を要する仕事だと感じています。
敷地の環境、クライアントの想い、制度や予算、工事の現場——それら一つひとつに正解があるわけではなく、毎回が手探りです。
17年という時間の中で、社会の状況や建築を取り巻く環境も大きく変わりました。
法制度、補助金、求められる性能や説明責任は年々複雑になり、設計者に求められる役割も広がっています。
そうした中でも、流行や効率だけに流されることなく、「その場所にとって本当に必要な建築とは何か」を考え続ける姿勢だけは、これからも変えずにいたいと考えています。
時間を重ねる一方で、まだまだ学ぶことは多く、設計事務所として人として未熟だという自覚もあります。
だからこそ慢心せず、一つひとつの仕事に緊張感を持ち、丁寧に積み上げていく一年にしたいと思います。
これまで関わってくださったクライアントの皆様、施工者の方々、ブレーンやスタッフの大矢ちゃん、そして日々このブログを読んでくださる方々に、心より感謝申し上げます。
本年も、設計の現場で感じたことや考えていることを、できる限り正直に発信していくつもりです。
2026年が、皆様にとっても実り多い一年となりますように。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
令和八年 元旦










































