映画『永遠の0』感想(ネタバレ) | 雑記帳

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 休みの日にあまり部屋に引き篭もってばかりだとあれなので、映画を観てきました。
 永遠の0、第二次大戦の特攻隊員のお話です。
 結論から言うと、傑作ではないが良作でした。5月までロングラン決定したらしいので、まだ観てない方は是非。
 基本的に人間ドラマが主軸なので、艦これプレイしていない人でも楽しめます。というかバリバリの海戦空戦を期待すると肩透かしを食らいます。レイテとか期待してたんだけど……
 まぁ靖国神社の遊就館で泣いた身としては、絶対に泣くんだろうなぁとは思っていて、実際はその通りだったのではありますが、事前に思っていたのとは少し違っていたというか。
 以下はネタバレです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 先に書いたとおり、人間ドラマが主軸なのでそのあたりは正直楽しめませんでした。
 現代劇から始まって、主人公がチャラ男だった時点でこりゃー失敗したかなぁと思いました。チャラ男たちの合コンで主人公のチャラ男が激高するあたりなんて失笑すら覚えました。空気読めない典型的なネトウヨだコレ。
 序盤のミッドウェーはすげー良かった、赤城の三段甲板が出た時点でうおー、と。換装中に爆撃されて誘爆するあたりは涙ぐんでしまいましたよ。
 ただそっから先はひたすら退屈でした。主人公のチャラ男が感化されていくあたりは悪くなかったんですが、なんというか展開が急というか、ええ? そんなんで涙ぐむのあんたら、みたいな。このあたりはむしろ第二次大戦の史実を知らない方が感情移入できたんじゃないかなぁ。
 主人公の本当の祖父で過去編の主人公である宮部は全盛期の一航戦からラバウル航空隊まで経験して終戦間際まで生き残った歴戦のパイロットという設定なのだから、ソロモンはともかくスリガオ、エンガノあたりに触れもしないのはどうなのよ。
 特攻前の変わり果てた宮部のあたりとか、やっと話を聞けたヤクザのじいさんが叫ぶ場面だとか、鹿屋飛行場の「非理法権天」の旗だとか、見るべきところはたくさんありましたが、いかんせん人間ドラマ主体なのであまり楽しめませんでした。特に宮部の家族と生き残った現じいさんの場面とか、ほんといらなかった。
 ヤクザのじいさんが叫ぶ場面が夜戦カットインみたいで笑いそうになったのは秘密だ!
 新宿バルト9ですら日に2回上映レベルなのに、劇場はほぼほぼ満席でしたが、ドラマのあたりで鼻をすする音が多かった気がして、それがまた乗り遅れた感があって楽しめなさを倍増しました。うーん。
 
 
 とまぁ文句ばかり書いたわけですが、最後の15分あたりですべて持っていかれましたよ。えぇえぇ。
 テーマソングである「永遠の0」がまさかあの場面で流れるとは……ものすげぇ緊迫感のある音楽で、常識的に考えればラスト数分で流す曲じゃねーっす。それなのにもう完全に涙腺が決壊しました。
 祖父から最後の話を聞き終えて帰る途中、ふと立ち止まる主人公。幸せそうなカップル、楽しそうな親子連れ。「未来の日本はどんな風になっているんだろうな」宮部が過去に語ったという言葉を思い出す。
 すべての音が消える中、ゼロ戦のコックピットで敬礼する宮部を幻視する主人公。
 作中では徹底的に語られなかった宮部の最後の行動と、あれだけ退屈だと思っていたドラマ部分の場面が時系列を無視した形で次々に挿入されていく。一つ一つの場面は数秒で、その映像だけではあまりに言葉足らずなんだけれど、いままでの2時間半でしつこいくらいに描いてきたドラマ部分が見事にリンクして、見ている者の脳裏に強烈な印象を残していきます。
 そして宮部の米空母への特攻シーン。映画冒頭とここでリンク。
 旧式も旧式の零戦21型で、水面スレスレで接近するというVT信管の弱点を突いての突撃。「あいつはマジック・ヒューズの弱点を知っているのか!」「そんなことがあるわけが無い!」と混乱する米兵。
 翼に被弾しながらも天高く舞い上がる零戦。そこからの急降下。
 コックピットの宮部の顔には、不思議な笑み。
 暗転、タイトルコール「永遠の0」
 
 もう完全にラスト15分に持っていかれました。
 中盤の退屈な人間ドラマも、ラストのあのシーンを描くための伏線でしかなかったのではないかと思ってしまうほどに、最後にこの映画のすべてが濃縮されていた。
 正直、消化不良を起こしてしまうほどの密度でした。昨日のうちに感想を書かなかったのも、呆然としてしまってまとめきれなかったからです。今でも十分とはいえませんが。
 
 もう一度観に行きたいかと問われれば、NOと答えると思います。
 だけどブルーレイは恐らく買うでしょう。あのラストをもう一度見るために。
 
 
 最後に、全体を通して反戦色も戦争賛美色もあまり無かったのは好印象でした。
 わたしのようなウヨクは物足りないし、逆のイデオロギーの人もまた物足りないでしょう。それでいいんです、エンターテイメントに政治色など不要。
 これを見て戦争賛美だ! と叫んでしまう石田衣良や宮崎駿や井筒和幸は、揶揄でも比喩でもなく頭がおかしいと思います。