〇「レディ・ベス」(2017)
ベス・平野綾、ロビン・加藤和樹
結局何を描きたかったの?というのが素直な感想。
ベスとメアリーの対立?
母アン・ブーリンの呪縛からの解放?
ベスの成長物語?
メアリー、アン、お付きの面々が入れ代わり立ち代わりソロナンバーを歌うものだから、肝心のストーリーが全然見えてこない。
ロビンとのラブロマンスが取ってつけたみたいで、ベスの歴史絵巻を描きたいならロビンいらないし、フィクションのラブロマンスを描きたいなら母やら取り巻きやら減らしてって感じ。
宮廷に出入りしてる楽師の設定ならまだしも、そもそも出会いに無理がありすぎるし。
古川雄大のフェリペ王子がエキセントリックで面白かったり、吉野圭吾はさすがの存在感だったり、個々に面白いシーンはあるのだけど、だからこそさらに印象が散漫になってしまう。
音楽を聴くのが好きな人にはいいのかもしれないけど・・・
肝心の和樹さんの感想、明るい役もできるんだな。
闇落ちしないし、拷問されないし、死なない。
遅ればせながら花總・山崎バージョンを見たので追記。
お花様はさすが品があって可憐でかわいいし、内に秘めたしなやかな強さを感じる。
育さんは自由で軽妙、ロビンは育さんのあてがきっぽい。
この2人のラブロマンスは別れるところまで含めて、わりと納得できた。
平野さんは庶民派で強さがそのまま表に出てきてるし、和樹さんは自由そうにふるまっていてもどこか重くて、ベスとロビンとしてはあまり相性がよくなかったのかも。
フェリペの元基くん、しっかり頭で考えて野心もある現実味のある王子。
古川さんは現実離れしたエキセントリックさが目立ってたので、芝居としてはすんなり馴染む。
メアリーははまこさんほどブスなおばさんに見えなかったので、フェリペがとにかく嫌なんだろうって思った。
〇「マタハリ」(2021)
マタハリ・柚希礼音、ラドゥ・加藤和樹、アルマン・三浦涼介
初演は和樹さんがラドゥとアルマンの2役を演じたとかで、短い動画は残ってるものの通しで見られないのは何とも残念でなりません。
役代わり2パターンを収録するくらいだったら、各バージョンごとに分けてダイジェストでもいいから初演映像入れてくれって思う。
マタハリとアルマン目線で見たらラドゥは敵役で嫌な奴に映るかもしれないけど、人が死んでいくのが苦しくて誰より早く戦争が終わることを望んでて、立場上アルマンみたいに逃げ出すこともできないし、押しつぶされそうな重責の中で必死にもがいてる。
立場が違うだけでアルマンと何も変わらない1人の男。
アルマンが任務のためにマタに近づいたってこと、ラドゥは最後まで言わないんですよね。
アルマンはラドゥがとっととばらすと思ってるみたいだし、保身のためならどれだけ人が死のうが気にしないとも思ってるみたいだけど、ラドゥはそんな人じゃない。
自分の感情を押し殺して、最善の方法を考えた結果がアレ。
アルマンは愛するマタの腕に抱かれて死んでいくけど、ラドゥは空っぽになったまま長い人生を生きていかなければならない。
命を落とすのがアンハッピーエンドとは限らない、愛する人の腕に抱かれて命絶えるのはハッピーエンドかもしれないって思います。
(だから「フランケンシュタイン」はハッピーエンド!)
せっかく両パターンあるので、比較も少々。
礼音くんのマタはふんわり包み込むようなやさしさと大きさがあって、この大型犬みたいな感じが宝塚時代から好きだったんだよなって再認識しました。
ちゃぴちゃんは硬質でどこか冷たさを感じる。
万里生ラドゥは全体としてはノーブルなのだけど、ちょっと変質的。
和樹ラドゥより芸術に対する造形が深そうで、感情も外に現れがち。
東アルマンと直接対決するところは負けそうって思った。
和樹ラドゥvs三浦りょんアルマンなら、まあラドゥが勝つでしょう。
最後和樹ラドゥは絶対に救われないって思ったけど、万里生ラドゥは誰かが受け止めてあげたら戻れるかもってちょっと思った。
とは言っても彼の周りにラドゥを受け止める人なんていなそうだし、今後は冷徹な仕事人間になるのかな。