<前回の続き>
午前10時、長男の家に到着。
初めて中に入ると…うわ…汚い…。流しも風呂場も…これはヒドい…。そしてこの部屋は何だ。なんでこんなにポスターが貼ってあるんだ。服も散乱して…ここで引きこもりか…。救うと言ってもどこから手を付けたらいいんだ…。
取りあえず3人で近くのファミレスで朝食。そのあとホームセンターで掃除用具や台所用品をそろえていざ清掃!の前に、せっかくここまで車で来たんだから東京見物に行こうか!おお!あれは国会議事堂か!
そうだ!東大に行こう、東大に。何か感じるものがあるかもね。
ってことで駐車場は…っと…高い高い!12分で500円?なんじゃこりゃ!オレは近くをグルグル回っているから、お前らだけで行ってきてくれない?
(息子が撮影↑)
30分後に迎えに行き次男に感想を聞く。中の人間はどうだった?
「どこかの私立高校かな。偏差値の高そうな生徒たちが集団でいた」
ほ~う、なんで私立の高校生だと思った?偏差値高そうというのは?頭よさそうって思ったの?
「制服着てたし…あとは東大見学に来るってことはそれなりのところなんだろうと思って」
なるほどね。大学生は見た?歩いてなかったの?
「見たよ」
それで?やっぱりすごそうだな~って思った?
「う~ん、どうだろう。オレよりは頭良くないかなって思った」
え……?
ワハハハハ!エライッ!いま時が止まったよ!ひどい成績なのに自分の方がすごいと?お前は傾奇者か!こりゃモノホンのバカだな!でも嫌いじゃないぞそういうのは!いや~~~~~いいッ!素晴らしい!
そうだよお前は天才なんだよ。オレの今までの人生でお前より頭がいい人は見たことがないからな。試験用紙に一切なにも書かずに最後の中3模試の数学で100点って。全部頭の中でやったんだろ?関数もだろ?そんなこと普通の人間はやんないしできないから。なのに前回の古典のあの点数…。(長男に)知ってる?こいつが何点取ったか?
「知らないな」
聞いてないの?じゃあヒントをやろう。今回の学年末テストでオレがテコ入れした結果、なんと…古典の点数が70倍になったんだよ!(次男笑)
長男「70倍?ってことは…前回は1点しかありえないじゃん(笑)」
そうなんだよ。1点だよ1点!オオマイゴッド!
長男「逆にどうやって取ったんだよ。どんな問題だったの?」
次男「え~と…源氏物語の作者は誰かって問題で…」
アハハハハハ!いや~~~なんだその問題は!それは誰でも当たるわ!ウケる~~~!
次男「ほかは記号も全部ハズしちゃって…」
それなのに東大生を見てなんだっけ?今なんて言ったっけ?
「え…オレよりは頭良くないだろうなって」
これだもんな。お前はなんて素晴らしいんだ。まあその意気や良し!これからだから。一緒にがんばろうな!
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見物を終えて長男の住まいに向かう。次男はすぐに寝たので、そのすきに…と長男に今の思いを尋ねると、
4月からは学校に通う、それは祖父や祖母の気持ちを汲んでのことで、自分自身はいまだに卒業して就職するイメージが湧かない、お金とか地位とか名誉はいらない、好きな趣味をして生きていければいいかな…なんて世迷言を抜かします。好きなことをしてもいいけど生活は?ということでいろいろなパターンを話すも、何も刺さっていなさそう。
(そうだった…昔からこういうことを話すと常にそっぽを向かれていた。今は引きこもっている最中だし…。なおさらこういう話はやめておこう…)
向こうからは何も話さないのでこちらから他愛もない話を適度に振りました。しかし、ありきたりな返答しかありません。そんな中、長男が言った一言がグサリと私の胸を貫きました。「オレはバカだからな…」
ちょっと待て。そんなことはないぞ。お前だって、ま~ったく勉強しなかったのにN高に行っただろ。入試前の1か月もまったくやんなくて(当時同居していた)じいちゃんが涙を流して訴えたのにやらなかった。それでも受かってんだから。毎日ものすごい量の勉強をやっていながら落ちた人たちの前で今のことを言えるの?
「いや、それはそうだな…」
合格掲示板の前で、名前が無かったあの子に申し訳ないと言ったの覚えてるか?つまりお前にはそのぐらい才能があるんだ。バカってことはないだろ。
城山三郎って小説家を知ってるか?政治経済の文豪でさ。その人の著作に「粗で野であるが卑ではない」というのがある。つまり生き方がどんなに粗っぽい粗雑な人間であっても、どんなに野蛮な人間であってもいいが、卑しい人、自分を卑下するような人間ではあってはいけないということだ。つまり「オレなんてどうせ…」とか「バカだから…」なんてのはダメだということだ。今度買って送るから読んでみな。
さっきこいつ(次男)がなんて言ったか覚えてるよな?東大生よりも自分の方が上だと思っているんだ。それでも一昨年、こいつは家出をしたあと「自分はバカだから」ってたびたび言っていた。その都度オレは、それだけはやめてくれって思って、そうじゃないこと、お前がいかに天才かということを必死に訴えた。
人間、「自分なんて」と思った瞬間に枠が狭くなる。枠というのは伸びしろの部分な。上限が決まっては視野も行動も狭くなる。でもさっきこいつは自分の方が頭がいい発言をした。まだまだ粗で野ではあるが、卑ではなかった。親としてはそれさえ聞ければひとまず安心だ。お前には今日いろいろ話したけど、今日は一つだけ、これだけでいいから肝に銘じておいてくれ。
「それはそうだね…わかった」
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家に帰ってからはメラミンスポンジでシンクをゴシゴシ。隣のコンロも取ってその下も床も風呂周りも隅々までキレイにしました。
しっかしよ~…たとえイケメンでもこんなに部屋が汚くては女の子も寄り付かないわな…。
長男「逆に女の子がいないからこんなに汚くなったんじゃない?」
ハハハハ!なるほど~そうかもしれないな!