<前回ブログの続き>

 

 

受験のメンタルは大きく3段階あるという話のつづきを。

 

私が男子に言ったのは以下。

 

 

受験のメンタルは大きく3段階ある。まずは第1段階、試験に対して緊張する人、不安を感じる人だ。お前は夏からずうっとここだったな。

 

敵を簡単に認めるから自分にはとてもかなわないと思って不安になる。このステージを乗り越えるには、自分よりも「頭がいい友達」はいない、敵はすべて下郎、自分が受からなかったらいったい誰が受かるのかと信じ込むことだ。

 

当たり前だが表立って言うのではなくて心の中で信じ込むことだ。口にしてしまうと「なんだあいつは」「イキってるな」「図に乗りやがって」と周囲から疎まれる。だからオレは先生に授業で当てられたとき、首をひねりながらわざと間違った答えを言って周囲の妬みをかわすことをよくしていた。それをやれとは言わないが、オレが一番!というのはあくまで心の中で思うことであって、表には出さないことだ。

 

 

自分の話で悪いが、オレは最強、絶対受かる、落ちるわけがない。こう無理やり思うことで不安をかき消す戦術は高校に入っても続いた。自分よりも頭がいいヤツはいない。この問題は誰も解けない?なら解くのはオレだろう。常にこういうスタンスでいた。すると実際に解けないなんてことがあっては情けないからよく勉強もした。そのせいで好成績も取れた。第1段階のビクビクするステージから完全に脱却でき、メンタル的にはこの路線で間違いないと確信した。

 

 

しかし…大学入試の前期試験に落ちた。どこか傲慢だったんだろうな。前期に落ちて、後期までの2週間は死ぬほどやった。今は何曜日の何時なのか分からない、今食べているおにぎりが朝ごはんか夜ごはんか分からない極限状態が何日も続いた。

 

 
 
入試の日。試験会場に着いて着席したときに不思議な感覚に包まれた。
 
受かるとか落ちるとか、自分はできるとかできないとかまったく頭に浮かんでこない無の状態になったんだ。なぜか森の中にいた。目の前には透き通った湖が広がっていて。波ひとつない鏡のような湖だった。そこに陽光がキラキラと差して湖面が反射しているのが見えた。
 
 
のちに将棋の羽生さんと競馬の武豊さんの対談本で知るんだけど、ゾーンに入ると駒の動きが光って見えるとか、芝生が光って見えるというのがあったそうだ。オレはそれを読んで妙に納得した。こういう状態になると勝ち負けとか、欲や不安は完全に頭から消えるんだ。ただ目の前のことに集中するだけになる。そういえば藤井聡太もタイトルを取りたいとか一度も言ってないね。ただただ将棋の真理を追究しているようだ。ああいうメンタルになれたら最強なんだと思う。

 

 

ということでまとめると、精神状態は大きく3段階あると思っている。

 

①落ちるかも、合格したいという不安や欲のある状態

②自分は受かる、落ちるわけがないと自己暗示をかけ強い気持ちを持つ状態

③真理追究に徹する無の状態

 

お前は今どの段階だろうか。オレの場合は中1~中2が①の状態で、中3~高3が②、高3の最後の2週間が③の状態だった。これを意識してみてくれ。

 

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この男子生徒の受験1週間前、お母さんから電話をいただきました。

学院の受験前は不安を口にすることも多かったが、学院に合格してからはそういうこともなくなり、家でもずっとストイックに勉強してきた。なのに、ここにきてなんか……あきらめたというか、よく分からないけれども、以前ほどの熱を感じなくなってしまった。家で勉強をしていないわけではない。しかしどこか緊張感が足りないように感じている。本人に聞くわけにもいかないので電話をした。先生はどう見ていますか?という内容でした。

 

私はこれを聞いて心の中で「よし!」とガッツポーズしました。もしかしたら③の状態になったのかもしれない。不安でもない、力んでもいない。この状態なら本番で力を発揮できるかもしれないと思いました。

 

この話が来週に控えた高校入試の参考になれば幸いです。