宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-を聴いて② | KUDANZササキゲン「散文と音楽」

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ササキゲンのソロプロジェクト KUDANZ(クダンズ)の日記

はい

前回が色々と昔のことを思い出しちゃって気持ち入りすぎた結果、脱線したまま本編入らずに終わってしまいましたので、今回はすぐに本題へ入ります。


今大会の出走馬を発表します。

01. 井上陽水 / SAKURAドロップス
02. 椎名林檎 / Letters
03. 岡村靖幸 / Automatic
04. 浜崎あゆみ / Movin’ on without you
05. ハナレグミ / Flavor Of Life
06. AI / FINAL DISTANCE
07. 吉井和哉 / Be My Last
08. LOVE PSYCHEDELICO / 光
09. 加藤ミリヤ / For You
10. 大橋トリオ / Stay Gold
11. tofubeats with BONNIE PINK / time will tell
12. KIRINJI / Keep Tryin’
13. Jimmy Jam & Terry Lewis feat. Peabo Bryson / Sanctuary

凱旋門賞ですか。。。

まず、いきなりですが個人的ベスト4をお伝えしつつ、感想を書きたいと思います。
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⭐︎❶⭐︎岡村靖幸 / Automatic

もう、完全岡村ちゃんの曲になっていました。
歌い出しの「7回目のベルで受話器を取った君 名前を言わなくても声ですぐ分かってくれる」
というところを聴いた瞬間に思ったのは、この曲の持つ、子供と大人の狭間にいる女の子の心情を
岡村ちゃんが歌った瞬間に、そっくりそのまま偏愛性に変換されて、岡村靖幸という器にピタッとはまるんですね。これはこのアルバムのディレクターさんまじでいい仕事してくれたなと思います。
特筆すべきところが幾つかあるので箇条書きにします。
・モッタリとしたハンドクラップの裏に入ってくるところがシンプルだけど気持ちいい
・サビ!マイケルの時代を彷彿とさせる後ろで急に鳴り出すシンセサイザー、4拍目のスネアの音の感じ
・「It's Automatic」のメロディを実は分かるか分からないかレベルで微妙にリアレンジしていて、具体的に言うと、原曲は「オート」までは同じキーですが、岡村ちゃんはオートの「ト」の時に一音下げて歌ってます。
要は「ファ ファ ファ レ# ド#」が「ファ ファ レ# レ# ド#」になってます。
たったこれだけの事でだいぶ聞こえ方が新鮮です。ネイティブな発音を意識していると思うので、「オォ~ロマァ~リッ」って感じなんですが、語感とメロディの兼ね合いで。若干「ロ」を潜らせていて、それがとてもファンキーで鳥肌が立ちます。
・後半にいくにつれて岡村節が色濃くなっていくので
「そばにいるだけで」は「somebodyいるだけれ」になりますし
「君とパラダイスにいるみたい」も「君とパラダイスっに イィ~ルミダイィッヒィ」となります。

もう、岡村さんぶっちぎりです。この一曲だけで買う価値ありです。但し岡村靖幸の良さが分からない人にとっては、Automatic公開レイプと捉えられる可能性もありますが(現にうちの兄は最初気持ち悪いと言っていたが、最後の方には段々クセになってきたと言っていました)
これを岡村ちゃんにオファーした人は、まさしくこれが聴きたかった、宇多田ヒカルの曲を岡村ちゃんの濃厚な深紅に染めて欲しかったのだと思います。やってくれるぜ!敬礼!
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❷AI / FINAL DISTANCE

歌い出しから、ぶっかぶか、深い。本物のシンガーの声ですね。当たり前ですけど尋常じゃない歌心と歌唱力。
いい歌を歌う人は歌が上手いとはかぎらなくて、音程が良くてもハートに響かない人は山ほどいるわけで。半端なく気持ちがこもっていて、尚且つ半端ない歌唱力です。圧巻。
アレンジも秀逸で、歌い出しピアノでの独唱から、ポチャンってなって、三部?のコーラスがピチカート気味に入ってきて1鳥肌、サビの瞬間で2鳥肌です。
全体通してコーラスワークが素晴らしいんですが、単純なコーラスではなくて、コーラスなのに主旋律の裏で動きまくるんですね。直角じゃない。おそらくコーラスアレンジに関しては全部AIが一人で考えて歌ってるからこそ出来る。
コード進行も若干変えていて、メジャーコードのところをマイナーコードに落とすことによって新しい旨み成分が出てます。
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③井上陽水 / SAKURAドロップス

なんと一曲目で陽水さんです。。
このアルバムの存在を全く知らずに最初この曲を兄貴の車で聴いて、「???」「ん?陽水さん?なんだこの曲聴いたことないん?これ宇多田ヒカルの曲じゃん!!何で?!」
となりました。やられました。なんですかこの全く別物のアレンジ。カリプソ?ジャイブ?詳しくないのでわかりませんが、まさかラテン系のノリでSAKURAドロップスを聴く日が来るとは思いませんでした。
陽水さんの歌のリズム感素晴らしいですね。
「桜さえ 時の中で」のところも、曲のアレンジによせて「さくっらさっえ ときぃのっなかで」
っていう微妙な跳ね方してて、こういう細かいところにくすぐられます。
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④浜崎あゆみ / Movin’ on without you

いや、浜崎あゆみチーム超すげ~ッス。まずプロデューサーのアレンジがすごい。Yohanne Simonという方。
浜崎あゆみが宇多田をやるならここしかないでしょっていうところにズバッときた。
兄貴と話した。
「俺ら聴かなかったけど、あんだけ昔みんなしてウーハー乗せた車で浜崎あゆみ聴いてた理由が分かるよね。」
まさにそれで、例えばその頃聴いてたケミカルブラザーズの Hey Boy Hey Girlなんかを友人の車でガンガンにかけてドライブしてた頃のあの高揚感を思い出しました。

それと同時に、やっぱ第一線でやってる人って、抜け感が全然違うなと思いました。
この抜け感っていうのは音、アレンジだけじゃなくて何よりも「潔さ・迷いのなさ」です。
これは限られた人間にしかできない事ですね。
リズムアプローチが面白くて、イントロで
「タッタタッタッ タッタタッタッ」ていう、割ともったりした感じなのかなと思ったらすぐに
「ターツタッタッタッンタッ ターツタッタッタッンタッ」って重さが取れて
次のセクションでは四つ打ちで疾走感が出てる。
文章だと分かりづらいと思いますが、車でいうギアチェンジの加速していく流れがとても爽快で気持ち良いです。サビまでの上がり方が秀逸で、Aメロの時は二拍目と四拍目にアクセント置いてのってて、Bメロで一回休ませてくれるんだけど、サビでは全部の拍で頭振っちゃう、みたいな。そこまでの乗せ方の流れが完璧だなと思います。
あとはサビの裏で「moving on」って二回歌うんですけど、一つ目は低めで二つ目は高温で抜ける感じっていうのもいいですね。全体通して、曲を末広がりに仕上げる場合のお手本みたいなアレンジでした。あゆ。

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という訳で個人的TOP4を独断と偏見で勝手にご紹介させて頂きました。
もっと他の曲も書きたいのですが、僕これ何時間も書きながらずっと一枚のCD何回も聴き続けてるので、この辺で止めておこうと思います。
一つだけ番外編で、
タイトルが「13組の音楽家による13の解釈について」なんですが、中でも加藤ミリヤさんは割とシンプルに、原曲に忠実に歌っていて、最初は正直とくにピンとこなくて、でも何度アルバムを通して聴いているうちに、ああ、このシンプルなアレンジはこのアルバムに絶対必要だなと思いました。
他があまりにもアルバムタイトルよろしく、独自の解釈をして吐き出しているので、純粋な宇多田ヒカルファンには若い子達もいるだろうし、ちょっとよくわかんないなぁってもしかしたら思うかもしれない。そういったニーズに対してこの加藤ミリヤさんのFor Youはかなり優しさを持ってるなと。
曲中で宇多田の名曲ボニー&クライドの一節を入れてたり、歌声を聴いてると相当好きなんだろうなと察せられます。

本当に捨て曲なしのアルバムだなと思います。

ちなみに兄貴は大橋トリオが一番好きだそうで、姉にもあとで聞いてみようと思います。

他人のアルバムをこんなに長々とレビューするのは初めての事ですが、そのくらいテンションがぶち上がったのです。
日本の宝、宇多田ヒカルに感謝。
宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-/Universal Music =music=

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あと、全然関係ないんですが、以前暇なときに書いた
「架空のバンドの架空のディスクレビュー」
http://ameblo.jp/kudanz/entry-11623859835.html
これもよかったら見てください。願わくばこの企画流行って欲しい。


あー!疲れた!バカだな俺!
こんなんしてますけど入院前の療養の日々で曲もぽちぽち上がってきてます。
毎回思うけどアルバム作るのって、ほんとに精神的にくるよね。
気が遠くなります 笑
とりあえず気長にやります。
またなんかあったら書きます。バモラ!