「柔らかい」ということについて。
柔らかいとは、どういうことなのか?
一般的には、前屈したり、両足を開いて胸を床に着けたりすることを柔らかいという人が多いです。
私は、違います。
今、私の前にいる年配の人は、そこに正しく座って、じっと本を読んでいる。
ほとんど動いていないにもかかわらず、とても柔らかく見えてしまう。
その隣で、若い学生が勉強している。
猫背になり、机と目が近すぎる。
それを見ると、肩と首が凝り、背伸びしたい気になる。
これは、とても硬く見える。
どうして、そんな見え方をするのか?
私が動きを分析するとき、変化の可能性がどれほどあるのかを考えるからです。
おそらく年配の人を押すと、首から股関節までが、しなやかに、滑らかに、受け流すように、それほど抵抗なく動かされるでしょう。
正しく座ると、座高は高くなります。
高さがあると、下に向かって、動き出すことができる。
要するに、強い筋力を使わなくても、身体を変化させることができるということ。
押されて危険だと思えば、力を抜いて(緩めて)身をかわすことができます。
だから、それほど抵抗なく動かされるのです。
足先は近くにあるため、地面を押すことができる。
これは、お尻を素早く移動させることができる(立つこともできる)ということです。
それに比べて、若い学生は動きにくい。
背骨を湾曲させている(下に垂れている)から、そのままでは振り向くこともできない。
その他の動きも、動くためには一度上がらなくてはならない。(猫背のまま、動くと怪我をするから注意)
時間と筋力が必要になる。
骨盤が後傾しているから、足を遠くに投げ出したり、足を組んだりを繰り返す。
足先に体重が乗らないので、お尻の位置を素早く動かすことはできないということ。
押されたら、腰に近い背骨だけが圧力を受ける。
この制限された状態を「硬い」と言います。
「柔らかい」とは、
・外部から受けた圧力を、滑らかに受け流す空きがある
・身体の中を流れる「重み」「圧力」「刺激」「思い」を適切な場所に、適切な速さで運べる
・そのときの、その状態から、弱い筋力で次の変化ができる
ということ。
両足を開いて胸を床に着けることができても、その状態からの変化は限られています(空きがない)。
それ以上、足は開かないし、胸は下に行けません。
それに、その状態からは素早く動けない。
動き出しに、筋力と時間がかかる。
血行が悪くなる。
柔らかい関節であっても、硬い姿勢ということです。
そもそも、そんなことをやって、何に使うのか?
使い道がない。
できるだけ数多くの関節を、ほんの少しずつ使っていくほうが、柔らかい動きになる。
腕を見てください。
指先から、掌、手首、前腕、肩を、優しく、緩やかに、とろけるよう動かす。
・どこかの関節が止まると、硬くなる
・どこかの関節が曲がりすぎると、硬くなる
・どこかの関節が伸びすぎると、硬くなる
・力が入ると(強い筋力を使うと)、硬くなる
腕は、柔らかく見えてきましたか?
柔らかい感触が分かったら、素振りです。
素振りの中で、その柔らかい感触を探してください。
何の素振りをするのかは、自分で考えてね。