追う夕陽の赤は標識で先回りしてくるけど時限短し | 愚奏譜

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ワタシ、かなでの備忘録みたいなもの。
割と内向き・オタクなハナシが多くなりそうです。

読書のハナシです。
どちらも葉室麟です。
『墨龍賦』PHP文芸文庫
帯にある通りです。
解説の澤田瞳子さんは『若冲』も書いて筆名を上げましたし、一時期画家主役作品が世間で流行ってたりしました。
主役は河北友松。近江浅井家遺臣の出で出家したりして、狩野永徳(年下)の弟子。「友である斎藤利三」と帯にはあるけど、劇中で一番友情描写にページを割いているのは安国寺恵瓊の方。
出が出だから、主家の仇を討ちたい願望があったりしての「武人の魂」が燻るけど、絵師としてクラスが段違いの永徳にあてられて絵に気合いを入れたりです。
結果は表紙の通り。絵師ならば作品の強さがあれば勝ち。
単なるゲージツ家の葛藤だけでなく、「武人の魂」燃焼のために有名戦国武将なんかの知己を得たりします。坊主時代の繋がりで、前出の安国寺恵瓊や尼子関連山中鹿之助。そして斎藤利三、その主である明智光秀。
かつて織田信長を「書きたくない」とか言ってた葉室麟なので、明智光秀周りはモエます。
本能寺関連でもヒトネタ入れてます。
他にも絵師エピソードで二天一流の彼もで出てきますけど、最重要なのはやはり斎藤利三との繋がり。
実は次代で勝つ斎藤利三。だから作品冒頭もそこから。

昨日も今日も明日も乱世のままならば、しなくても良かった悩みかもしれないけど、平和に向けては多々あったであろうこと。
こんな風に昇華できればいいけど、なかなかそうはいかない。知れずに繋がった想いのネタばらしは気持ち良かった。



『津軽双花』講談社文庫
短編集です。
収録作品は、帯にある石田三成息女辰姫と徳川家康養女満天姫の表題作『津軽双花』。淀の方主役の『鳳凰記』。石田三成主役の『孤狼なり』。斎藤利三主役の『鷹、翔ける』。
主役を並べてみれば、キラキラハッピーエンドが一つも無いことが一瞥で分かります。
大ネタとかは全作品共有してますので、連作的にも楽しめます。
関ヶ原、豊臣、大坂の陣、そして本能寺の変。葉室麟解釈が入ってます。前述の『墨龍賦』と被っていても微妙に違います。
尊皇家としての豊臣とか、関ヶ原は展開含めて三成プロデュースだった、とか。
ただ、斎藤利三だけは「はいはい良かったね」みたいなカンジ。

『津軽双花』は、ダブルヒロインだけでなく津軽家自体よく知らないから、最後までハラハラ。東照宮があるのは知ってたけど、そういう理由もあったのね。
お二人だけでなく、夫の津軽信枚も出来物描写だけど、それに見合った苦難。
ワタシは最後の最後のオチは知りたくなかった。


二作に共通する重要人物が明智光秀。
大河で盛り上がってるミスター本能寺。
最近じゃ歴史秘話ヒストリアで医者キャラ史料が紹介されたりしました。
あんまり光秀周りはピント来ないんだよな。
あと、明智家長宗我部家ラインのネタも最近のトレンドだから積極的に取り入れてる。この辺もあんまりモエない。