パパコーチ8人が「息子強化に必死」な状況に陥ることになったきっかけは、自分かもしれないという事務局長(前回のつづき)。

 

話は子どもたちが小学校入学前に遡ります。

 

私たちが住む地域の少年団は毎週土曜、未就学児向けのサッカー教室を開いています。親の負担は、年間の保険料(月数百円程度)を払うだけ。運営は事務局長などパパコーチOBの有志が行っていました。

 

長男は土曜に保育園の日も多くて参加したことがなかったのですが、毎回出席の熱心なご家庭もいました。


そう、現コーチとその息子たちです。

 

実はこのサッカー教室、パパコーチの「スカウト」の場でもありました。この少年団は基本的に、各学年の運営を各学年の有志が中心となって担います。今後の運営の軸となりそうなパパをスカウト、そして6年間活動し、今度は次世代の子どもたちのためにコーチOBとしてサッカー教室を担う…


このサイクルで、

少年団は地域で長年続いてきました。

 

事務局長「ただやっぱり時代なのか、最近はコーチを引き受けてくれる人がなかなか現れない年もあって・・・」

 

実際、長男の一つ下の学年はなかなか監督(パパコーチの代表)が決まらず、事務局長がしばらく監督を兼任していたと聞いていました。

 

一方でこの学年は、パパコーチが幼稚園時代から非常に熱心。サッカー教室中の声かけや球出しなどの簡単な指導、後片付けにも積極的に関わり、小学校入学前にはパパコーチだけでほぼ運営ができる体制になっていました。


これは事務局長に言わせると

「近年まれにみる学年」だったそう。

 

そして、2月に行われたキンダー(未就学児)の大会でも好成績を残します。

 

「この代は子どもたちも、非常に見所がある。皆さんの熱心な指導で強化していけば、もう10年以上出ていない都大会にも出場できるかもしれない」

 

大会の打ち上げの席で、事務局長はそう言ってパパコーチ家庭を激励。この8家族が中心となり、小学校入学後の運営を担うことがすんなり決まったそうです。

 

うん。話が見えてきたぞ・・・

 

都心エリアにあるこの少年団は元々あまり強くなく、高学年は公式戦でブロック大会1、2回戦負けがほとんど(少年サッカーチームが800以上ある東京は16ブロックに分かれていて、そこを勝ち抜いたチームしか都大会に出られません)。これまでは純粋に「サッカーを楽しむ」ことを主眼に運営されていて、そういう立ち位置の少年団だと聞いていました。

 

しかし入団してみると、

聞いていたのとなんか違う?

・・・と思うことも多く。

 

「つまり、この学年だけは最初から『都大会出場』を掲げて始まったのですね」


「そうです。それがコーチ陣の方針でスタートしました。1年の頃はそれでもよかったのです。でも2年になると・・・」

 

コーチ8人とその息子+数人の子どもたち、で運営されていた1年のうちは表面上、問題は起こりませんでした。が、2年になってコロナの緊急事態宣言が明けると、一気に入団者が増えて25人以上に。初心者も当然いますし、週末に楽しく体を動かしたいという理由で入ってきた子やその保護者もいます。

 

そこに生じた熱意の差、

強化だけに舵を切れないジレンマ・・・

 

「この学年の運営体制を立ち上げる当初、ここはあくまでも『少年団』であることは説明した、つもりです。でも、どこまで伝わっていたか・・・。この学年は突出して団員数も多いですし」

 

なるほど、と思っていると、

 

「だからといって、コーチの息子中心のチームにしていい理由にはなりませんよね?」とNさん。

ああ、この人がいたんだった…

 

「はい。ですから私と代表がコーチ陣に今一度、少年団の運営について話します。特に安全管理については団全体の信用にかかわることなので、全学年のコーチ会議を近く招集しようと思います。しばらくお待ちいただけませんか」

 

事務局長にそう言われ、さすがのNさんも矛を収めました。代表もうなずき、相談は終了。

 

「なんか疲れたね。お茶でも飲んでいこうか・・・」

区民会館前でNさんとうまく別れ、キーパーママと歩き出すと、後ろから声がしました。

 

「お二人にはもう少し、聞きたいことがあるんだけど」

(さすがに次回で直訴編終わります)