1930年代。当時の英国の新型車レイルトンのサードギア(トップギア)がとても静かでスムースなのを自慢したことが名前の由来。
自慢したのは英国人‘‘ガース・グレンデニング’’。
彼はコアントローの独占販売権を持っていた実業家。コアントローの販促にこのカクテルを活用し、大いに成果を挙げました。

スコッチウイスキーをベースにしますが、ここでお手軽なブレンデッドスコッチを使用してはなりませぬ。バランスの取れない薄っぺらな味わいに仕上がりますゆえ。
シングルモルトスコッチを選んでくださいませ。
クセがあったり重厚だったりするモルトも良いのですが、私は‘‘グレンリヴェット12年’’を選びます。
深さと軽やかさが同居し、ボリューミーでありながらキレのある後口にまとまりますので。

ベースだけが違う同じレシピのカクテルたち(サイドカー、ホワイトレディ、XYZ、バラライカ)がスタンダードカクテルとして人気を博しているのになぜサイレントサードだけ日陰に佇まなくてはならないのか、と思っていました。

私見ですが前述の、ベースにするウイスキーを美味しいシングルモルトにしてこなかった(ゆえに美味しくなかった)ことが原因のひとつではないかと思います。あくまでも私見です。

とても美味しい一杯です。
そうですね、市民権を得るためにここからムーブメントを、、!  


《レシピ》
・グレンリヴェット12年・・・30ml
・コアントロー・・・・・・・15ml
・レモンジュース・・・・・・15ml


●シェーク


先日‘‘グラスホッパー’’を取り上げました(No.019参照)が、言葉が足りなかった、クリーム絡みでこれを抜きには語れなかった、と焦りながら筆を取った次第であります。

このカクテルの名前は、元々は‘‘アレクサンドラ’’でした。
デンマークから英国王エドワード7世のもとに嫁いだアレクサンドラ王女に寄せて作られたのだそうです。
いつの頃からか‘‘アレキサンダー’’となっており、何だかゴツそうな強そうな雰囲気となりました。

ジンをベースにしていたものがブランデーへと替わるなど味わいの変遷も見られます。
アレキサンダーが印象的に登場する映画「酒とバラの日々」では‘‘ブランデーアレキサンダー’’と呼ばれており、1962年当時はまだ、ネーミング変遷の過渡期だったことが窺えます。

現代のアレキサンダーはブランデーをベースにするとの認識でほぼほぼ固まってきました。

さてさてクリームの件ですが、グラスホッパーと同じように植物性ホイップを使用することに変わりはありません。
しかしさらにアレキサンダーのクリームは、ホイッパーでもこもこに泡立ててから使用するのです。固めに仕上げても大丈夫です 。

もこもこホイップはメジャーカップで量れませんので、「おおよそ30mlを泡立てたらこのくらいだろう」という量をすくいシェーカーに入れます。
ホイップすることでカクテルの口当たりがびっくりするほど滑らかになります。この一手間を加えるか否かでまったく別物になるのです。

ではグラスホッパーのクリームもホイップすれば良いのでは?となりますよね。
高アルコール度数のお酒(ウイスキー、ブランデー、ウォッカ等)を使用するカクテルの場合は問題ありません。
しかしアルコール度数が低く糖分の多めなリキュールだけの組み合わせカクテルの場合は、その口当たりが‘‘野暮ったくしつこく絡みつく’’ような感触になってしまうのです。

なので私はカクテルによってクリームを使い分けるのですが、上記感想はあくまでも個人的なものですので、グラスホッパーなどのリキュールベースカクテルにホイップしたクリームを使用しても何ら問題はありません。

少々長くなりましたね、ごめんなさいです。

それではあらためまして、びっくりするほど滑らかなアレキサンダーをご賞味くださいませ。


《レシピ》
・ブランデー・・・・・・・・・・20ml
・ブラウンカカオ(エギュベル)・・ 20ml
・植物性のクリーム(ホイップしたもの)・・30ml分


●シェーク

※グラスに注ぐ際にストレーナーにて氷片を取り除く

雨音に調和するのがサティの‘‘グノシェンヌ’’。
そして雨の日にこそ美味しいのが‘‘バンブー’’。

雨が降ると聴きたくなるのがグノシェンヌだったりします。そして飲みたくなるのがバンブーだったりするのです。私はね。

日本における創作カクテル第一号として1890年に横浜で誕生しました。
考案者は‘‘ルイス・エッピンガー’’。
横浜の外国人居留区に開業した横浜グランドホテルの支配人兼バーテンダーでした。

船乗りたちが各港で伝えたおかげで、世界中で人気のカクテルとなりました。

その味わいは竹の如くまっすぐで鋭く、きりりと引き締まっていて、潔い後味・風味はまさに竹を割ったような清々しさで。

竹を割ったようなその味わいを生み出すのがステアという調製技法です。
それは素材の味をはっきりと生かすために静かに混ぜ合わせる技術。
バンブーは元々混ざりやすいシェリーとベルモットの組み合わせですから、オクターブではバースプーンを回すのを10回以内で仕上げます。
そこでしっかりと冷えたものにするために、シェリーもベルモットも0℃に近い冷蔵庫にてあらかじめ冷やしておきます。

伺ったところ、先輩バーテンダーM氏のバンブーの捉え方は私と全く一緒でした。
先輩バーテンダーH氏はさらに氷の温度と形へのこだわりもありました。
繊細なカクテルゆえにシビアに向き合う姿勢が引き締まった味わいに反映してくるのですね。

いかがでしょうか。
食前酒にピッタリな美味しさなので是非ともお食事の前に、雨が降っていなかったとしても、オーダーしてみてくださいね。


《レシピ》
・フィノシェリー・・・・・・40ml
・ドライベルモット・・・・・20ml
・オレンジビターズ・・・・・1dash


●ステア