還暦を過ぎて、昔の想い出の一部がやたらと鮮明に蘇ってくることが多くなった
歳を重ねることで記憶が蘇る現象には心理学的・脳科学的な理由があるらしく、「レミニセンス・バンプ」(Reminiscence bump)と呼ばれる現象なんだそうだ
これは、人が中高年になると、主に10代後半から30代前半の記憶が特に鮮明に蘇りやすくなるというもの
この時期は人生の転機や感情的にも強く心が動く経験が多く、それが脳の中に深く刻まれているため、年を取ると頻繁に思い出されるとのこと
確かに、昔、親戚の爺ちゃんたちが、第二次世界大戦の経験談を事細かく、壊れたレコードプレーヤーのように繰り返し語っていた
小学生の私は何度も同じ話を聞かされて、「またか~」と嫌になっていたことを思い出す
脳の働きとしては、加齢によって新しい記憶を作って保持する能力が若い頃ほどではなくなる一方、昔の記憶は比較的保持されやすい傾向があるらしい
最近蘇った「小さなエピソード」のほとんどは大学生時代の出来事
その想い出は本当に温かく、そして少し切なさを伴うもので、まるで時間が一瞬巻き戻るかのように過去の幸せな瞬間を鮮明に呼び覚ます
巻き戻すと言えば、時計、この時計は大学入学のお祝いに親父が買ってくれた女性物のダイバーズウオッチ、一度も壊れることなく、あの当時からずっと秒針を刻んでくれている
たくさんの想い出の瞬間、この時計はいつも左腕で時を刻んでいた
物持ちが良いとよく言われるが、この時計はあの頃の made in Japanを象徴するような品質だからだと思う
話は変わるが、昨秋帯広を訪問した際に、夕暮れのグリーンパークを一人散歩してみた
学生時代、彼女のアパートがこの近辺にあった
お互いの生活の中にお互いがいつも居た
真夜中に些細なことで喧嘩になり、突然部屋を飛び出した彼女を探すため、この公園を息を切らして探し回ったことがあった
この公園はあまりに広く、端から端まで行ったり来たりするのは大変だった
400mベンチ、今となっては懐かしいが、その広さを恨んだものだった
(真夜中の公園のど真ん中で愛を育むカップルに遭遇し、びっくりして逃げて来たことがあった)
あの頃の幼い感情の中にある、まだ恋愛初心者が抱える「愛情と苛立ち」、今ではとても懐かしい
でも懐かしさと胸の締め付けられるような思いが交錯するのは、きっと、その時間が自分にとって特別な意味を持っていたからだと思う
彼女との生活は何気ない日常でありながら、心の深い部分に残る「幸せの象徴」だった
そう思うと、過去は単なる思い出ではなく、今もどこかで息づいているもののように感じられる
こうした記憶が頻繁によみがえるようになったのは、これまでの人生の歩みを整理し、自分のゴールを意識する時期に差し掛かっているからかもしれない
でも、過去の幸福な時間を愛おしむことは、決して後ろ向きなことではなく、自分の人生がささやかながらもいかに豊かで温かいものであったのかを再確認できているからと思いたい

