気になる映画タイトルの翻訳 ①
●映画好きな私は、ときどきテレビを見ると、最近名作映画が
よく再放送されています。ところが、翻訳されたタイトルや字幕
などで気になることがよくあります。
●特にタイトルなどは、その映画がヒットするかどうかのキー
ポイントになり、映画関係者には大問題でしょうから、必然的
にウエートが高くなるでしょう。例えば、名作中の名作である
『風と共に去りぬ』は、”Gone With The Wind” が翻訳された
ものです。
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(絶対に、「風と共に去りぬ」…がいいわよ!)
●これは世界中で大ヒットした作品で、年配の方にはきっと
ご覧になった方が多いと思います。しかし、以前はあまり気に
ならなかったのですが、なぜタイトルが「風と共に去りぬ」の
「去りぬ」というふうに、そこだけが古文調になっているのか
疑問に思いました。
●いろいろ調べてみたところ、映画評論家として活躍された
淀川長治さんが、かつて配給会社にいたころ、この映画の
名付け親だったことが分かりました。彼はこの映画をなんと
かインパクトのあるものにするため、いろいろ考えあぐねい
た結果、「風と共に去りぬ」に決定したとのことです。
もし、彼が現代日本語でそのまま「風と共に去った」に翻訳
したすると、「風と共に去りぬ」の「ぬ」の意味する「去って
しまった」という「完了の意味」が出ないので、後世にまで
残るような印象のタイトルには、なっていなかった可能性が
あります。
●かつて多くの名作を作った小津安二郎監督が、「風と共に
去りぬ」という作品を、シンガポールで戦中に観て、「こんな
豪華映画を撮るアメリカに、日本が戦争で勝てる訳が無い」
と語ったという有名な逸話があります。観客のみならず映画
監督などにも影響を及ぼすわけですから、タイトル一つの
翻訳でも決して疎かにしない方がいいかもしれません。
●ちなみに、その他よく知られた作品があるので、ここで
いくつかのタイトルを紹介しましょう。
①『ムトウ踊るマハラジャ (Muthu)』 (1995、インド)
②『グース(Fly Away Home)』 (1996, アメリカ)
③『ピーター・グリーナリーの枕草子 (The Pillow Book)』
(1996英=仏=蘭)
④『恋愛小説家(As good as it goes)』(1997、アメリカ)
⑤『モンタナの風に吹かれて(The Horse Whispere)』
(1998、アメリカ)
⑥『メリーに首ったけ(There’s something about Mary)』
(1998、アメリカ)
(上の6点は、いずれもネットより転写)
●いずれも原題にみられない「踊るマハラジャ」、「グース」、
「枕草子」、「恋愛小説家」、「首ったけ」などの翻訳があり、
いかにも興味をそそるようなタイトルになっています。何の
違和感もなく観客を惹き付ける言葉になっているのは、映画
ストーリーの内容をよく理解していなければ、とてもできない
発想だと思います。
●次回は字幕にまつわる興味深い出来事を、いくつか紹介
してみたいと思いますので、どうぞご期待ください。
Kubotan 記す
(2020.03.23)