病院での専門用語は難しい?
●私は、昨年の11月18日(月)から12月3日(火)までの2週間、生ま
れてはじめて緊急入院してしまいました。その後は通院治療などで
ブログを書く余裕がなくなり、数回休ませていただきことになりました。
実は、「膿胸」(のうきょう)という病名で、担当医からはじめて聞かされ
たときは、何のことだか分からなくてか、思わず聞き直してやっと納得
したものです。それでは、そのときの会話の一部を再現してみましょう。
医者:これは「膿胸」の可能性がありますね。
私 :は?「農協」ですか?
医師:そうです。初めは「肺炎」かと思ったのですが。
私 :先生、「ノウキョウ」っというと、あの農業協同組合の
略語の「農協」のことですか?
医者:ええ?いやいや、そうでなくて、「膿胸」という病気が
あるんです。
私 :はあ、そうですか。でも、よく分からないんですが。
それは、どういう漢字で書くのでしょうか。
医者:そうですね。「膿」という字と、「胸」という字を組み合
わせせて、「膿胸」となりますね。
私 :ああ、そういう風に表現するんですか。はじめて知り
ました。
●私はといえば、医者の説明でやっと納得したのですが、この会話は
はじめからチンプンカンプで、コミュニケーションが不成立でした。
つまり、お互いの理解が成立していないという、典型的な例ではない
かということです。
なぜなら、医者は専門用語の「膿胸」を当然のように使っています
が、患者の私が「ノウキョウ」と聞けば、「農協」という言葉しか思い浮
かばないので、当然噛み合わないわけです。その若い先生は、はじめ
は怪訝そうな顔をしていましたが、私が言葉の意味を確認したことに
より、先生はこの患者(私)の勘違いにやとうとう気づかれて、お互いに
大笑いしたものです。
なお、この「膿胸」という病気は、胸に膿が溜まり、肺の外部を覆うと
いう危険な病気だと考えられています。病状が悪化すると呼吸が困難
になって手術することになり、放っておくと数日後には危険な状況に
なるようです。
●さて、東京女子医大の説明では、「膿胸とは、胸腔内に膿性液が
貯留した状態です。早期のドレナージと抗菌薬投与、および手術が
治療の基本となります。 気管支、肺との間に瘻孔を生じた場合に、
有瘻性膿胸と呼び、より複雑な治療が必要となることがあります。
高齢者や糖尿病、免疫抑制剤服用者など、易感染性の患者に胸水
貯留と発熱などを認めた場合、本疾患を疑う必要があります。」と
なっています。
↑
(ネットで検索した膿胸患部=右下部分)
●上のレントゲン撮影にあるように、膿(うみ)が胸の中央辺りまで
真っ白になっており、肺下部に膿が一面に覆っていることを示して
います。本来、健康体であれば胸骨の殆どがきれいに見えるはず
ですが、このようになった場合はかなり危険な兆候だといえるよう
です。
●ところで、病院で言葉が分からなくて困ったことのある人は意外に
多いのでしょうが、ほとんどの人は元気になって退院するとそのこと
を忘れてしまうようです。
ただ、私の場合は言語行動に興味があり、今度の入院をきっかけに
して、病院ではどんな専門用語が使われているのか、気になったの
で調べて見ることにしました。
すると、いろんな場面を改めて考えてみると、お世話係の看護師の
言葉はときどき分からないし、医者と看護師が交わす会話も意味が
不明のときがありました。その都度メモにかいておけばよかったの
ですが、年のせいかせっっかく覚えていたつもりの言葉が思い出せ
ないのです。
そこで、退院後にネットで検索したところ、病名で分からないのが幾
つもあって、辞書をたびたび引く始末でした。このことから病院内の
日本語はどうなっているか、について少し考えてみることにしました。
●さて、急患は差し迫った状況で病院にいくことは想像できますが、
当事者は混乱してオロオロすることがよくあり、病院の担当者との
会話で困ることが非常にい多いそうです。
(マスク越しで聞き取りにくいのですが!?)
●しかも、担当医や看護師はマスク越しに会話をしていると、
口の動きが分からないので、患者は何を言っているのか理解
できません。院内感染という面から、咳などからの感染防止
なのでしょうが、こういう状況はなんとかならないのでしょうか。
さらに、患者が困るのは、薬の飲み方が不確かなときです。
例えば、「食間」と言われた場合、これは何時に飲めばいいの
か考え込んでしまいます。薬は「食前」に飲むことはまずない
ので、「食後」から次の食事の中間時間帯に飲めばいいので、
患者は適当に判断してしまうことになります。
余談ながら、日本語で「ショッカン」といえば、この同音異義語に
「食感、触感、食缶、食管、食幹」などがあるので、きっと日本人
でも判断に困るので、外国人はもっとは困るでしょうね。こうなる
と、もうセンター試験の漢字の問題もどきとなりますね。
●先程の「膿胸」の場合も、「農協」とい同音異義語のために、私
が混乱しただけなのかもしれませんが、よく調べていくと医学用語
は不必要なくらい難解な漢語(看護ではありません)を使っている
場合が多いような気がします。
例えば、「侵襲、寛解、予後、転帰、軽快、穿孔」という用語などは、
日本人でも分かりにくい医学関係の用語です。また、急性期、排泄、
疼痛などは、文字を見れば意味はわかりますが、音声で聞いただけ
では理解しにくい言葉もあります。ちなみに、上の用語を辞書で調
べてみると、次のように説明されています。
・侵襲(しんしゅう) ➜病気やけが、また医療処置などに
よって生体を傷つけること、また、
その刺激。
・寛解(かんかい) ➜白血病などの症状が一時的にあるい
は、永続的に軽くなること。「~導入療法」
・予後(よご) ➜①病気・手術などの経過について医学
的な見通し。「~不良」(=病気が回復
する望みが少なくない。
②病気が治ったあとの経過。
・転帰(てんき )➜落ち着く所。行き着く先。
「病が死の~をとる」
・軽快(けいかい) ➜病気が回復すること。
「一か月の療養で~した」
・穿孔(せんこう) ➜潰瘍(かいよう)などによって胃や
腸に穴があくこと。「胃~」
・急性期(きゅうせいき)➜病気にかかった当初の、症状が変化
しやすい時期。「脳卒中~の治療」
・排泄(はいせつ) ➜生物体が体内に生じた不用な物質を
体外に出すこと。排出。
・疼痛(とうつう) ➜うずくような痛み、ずきずきする痛み。
いかがでしょうか。日本人であれば漢字を見てなんとか意味が想像
できるできるでしょうが、やはり外国人には理解することとが難しい
かも知れませんね。
参考:『広辞苑』、『明鏡国語辞典』
kuubotan 記す。
(2020.01.21)