今回は同テーマのシリーズ-3。「木」や「植物名」が入っている日本の慣用句を拾い出し、その英語訳を
示しました。辞書や種々の書物を参照しましたが、結果として、大した比較は出来ませんでした。とは言っても、
西洋人と日本人の自然に対する見方やコトバの扱い方の違いが少しは見て取れるのではと思います。
<筆者作成の会話文に慣用句を入れ込んだ以下の例文で比較してみます>
ある日、体育系の大学生のA君が、研究室仲間の女性Bさんとサロンで、
就活の話に①「花を咲かせて」(having the conversation lively)います。
A: 就職するなら②「寄らば大樹」( to look for a big tree when you want shelter)でやはり
大企業かな。 大手X社の面接はどうだったの?
B: 自分ではうまく受け応えできたと思ったのに、面接官は③「木で鼻を括った」ような
(to be blunt)無愛想な態度だったわ。
A: 何でだろうね?
B: 調子に乗ってX社のいい面だけでなく、良くないと思うことまでしゃべったからかしら?
A: ④「言わぬが花」(better leave it unsaid) (The less said , the better )というからね。
B: でも私、応募した会社に⑤「ゴマをする」(to polish the apple)のは嫌な性分なのよ。
A: 自慢話も要注意。極力抑えるようにしないとダメだね。君が研究室でリーダー役をこなし、素晴ら
しい成果をあげたことも、他の学生に少し⑥「花を持たせた」(give credit to )言い方にしないと
自己中心の人物だと思われるよ。
B: あーあ、ダメだ。 だって、大半の男子が⑦「ウドの大木」(be great trees , good for nothing
but shade)で、役に立たないからよ。 結局、研究室は ⑧「枯れ木も山の賑わい」(Anything
is better than nothing)(a bad bush that's better than open field)状態だったわ。
A: ところで、同じ研究室のCさんはどうなったの?
B: 彼女はいま、小さいけれど⑨「破竹の勢い」(leaping over nine hedges)で伸びているベンチャー
企業Y社を受けたのよ。すでに、大手のZ社から内定をもらっていたので、面接時に前と同じ
やり方で応答したら、見事に不合格よ。
⑩「柳の下にドジョウはいなかった」というわけね。(There are no birds of this year in last year's nest)
⑪「いい事ずくめはあり得ない」(There is no rose without a thorn)
A: ベンチャー企業も、「雨後の筍のように増えて」(⑫sprout like mushroom after rain)いるので、
よく調べる事が大事だね。
このご時世、ベンチャーと大企業の両方から内定をもらうといった⑬「両手に花」(doubly lucky)の
状態はあり得ないね。
B: わたし、今まで大企業一本やりだったので、だいぶ⑭「道草を食って」(to loiter )しまったわ。
中小企業も視野に入れて、早くどこか一社に受かるようがんばるわね。
A: 頑張ってね! (Keep up the good work !) (Hang in there ! )
以上14個の日本語慣用句・ことわざを挙げたところ、類似の意味の英語慣用句になっているのは、
9個でした。しかも、使われている木や植物が同じものは「tree」の一種のみというのは驚きです。
農耕と漁業が中心だった日本の社会では、自然のもの、特に木や植物、土地、魚に関する語彙、
慣用句、諺が欧米の言語より格段に多いと言われています。 一方で、狩猟民族で肉食中心だった
西洋社会の言語には家畜や野生獣の名称や食肉の種類を区別する名称が幾つもあります。
海外から入ってくるもの、逆に日本から海外に出て行く特殊なコトバやモノの名前が現地にない
場合は、そのまま発音通りに現地の文字(日本の場合は、カタカナや漢字、最近はAlphabetも)で
書かれ、その地域で普及して、結局、コトバの混合を受け入れる言語に発展していきます。
この点が、日本語のもつ顕著な特徴のひとつではないかと思います。
- 完 - (atom 石川 記)