サムライはブルー | エキセントリックギャラクシーハードボイルドロマンス         

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〜文学、お笑い、オートバイを愛する気高く孤独な三十路独身男の魂の軌跡〜 by久留米の爪切り

朋友と書いて、ぽんゆう、と読む。中華人民共和国では友達、困ったときに助け合う仲間を意味する言葉らしい。僕は先輩と六本松にある名店、你好!朋友を訪れた。僕と先輩はポン友と呼べる間柄なのだろうか。何だかおバカな二人って響きを感じてしまうのは気のせいだろうか。

僕は名物トマトタマゴ丼、それに水餃子を二人でシェアした。結構な混み具合にも関わらず驚くべき提供スピードで提供されたそれらは非常にあっさりしていながらコクがあり美味であった。一気に完食して冷水を飲んでいると先輩は語り始めた。

「僕たちは一対一の勝負にこだわりすぎている。相手は組織的に戦っているにも関わらず、だ。常に局面的に個人技で挑んでいる。ただそれじゃあ偶発的なスーパープレイ、相手のミスでしか得点は生まれない。僕らはメッシじゃない。クリロナじゃない。この戦い方では限界がある。もっと組織的に戦術的に戦っていかねばならない。例えば相手が5バックで中央を固めてくるなら、後方で広く左右にボールを動かしながら相手ディフェンスを広げてスペースを生み、クサビのパスを入れる、サイドで数的有利を作りゴールライン付近まで抉ってマイナスのクロスを送ってディフェンスの背後を突く、そうした工夫が必要だ。そう。協力プレイ。コンビネーションが大事なんだ。婚活パーティに女子は大概二人組で来ているじゃないか。例えカップリングしたとしても、友達と一緒なんで帰りまーす、そんな事を言われるだろう。パスの受け手がいないならバックパスでキーパーに戻して攻撃を組み立て直してもいい。その子が微妙でも友達に可愛い子がいるかも知れない。次回合コン出来るかもしれない。広がるかもしれない。僕らは二人だ。つまりチャンスは二倍。今度何人かで遊びませんか。二対二で、かしいかえんに行きませんか、そうした誘い方をしてみよう。選択肢を広げよう。ゴールチャンスを増やすんだ。さあ、絶対に負けられない戦いがそこにはある。絶対W杯行くよ。アグレッシブに球際激しく。戦うよ!」

路面バスに揺られて、僕らは婚活パーティ会場に向かう。気分はアジア最終予選に挑むサムライブルーである。男性陣は圧迫面接が得意そうな人事部長、実直そうな経理、ギャンブル依存症、僕と先輩以外は大体そんな感じに見えて、女性陣は年増のフリーター、田舎のトレーナー姿のおばちゃん、肌が弱いのか顔面が赤く腫れ上がったフリフリの服、モンスターペアレントをマンチェスターユナイテッドと言い間違えた事がありそうな保母、ヨガが趣味のダルシム風といった面子で、試合が始まる前からまるでアウェーのサウジアラビア戦のような不穏な空気が漂っていた。心の可変システム。キラーパス。横パス。クサビ。ふかしたシュート。荒れたピッチコンディション。オフサイド。試合は膠着していた。僕は全然シュートを打てなかった。バックパスを繰り返していた。ハーフタイムに中間印象チェックというのがあったけど僕はどの女性からも好印象を持たれなかったようだった。選手交代で局面を打開したいところだけれども、僕は僕であるわけで交代する訳にはいかないんだから何とも歯痒い。先輩は得意のエンジェルスマイルで三人から好印象を持たれたと後から聞いた。

カップル成立したのは一組。経理とフリフリだった。惨敗である。僕と先輩、サムライはブルー。僕と先輩に彼女は出来るだろうか。結婚出来るだろうか。そして我が日本代表はW杯に出場出来るのか。非常に心配である。B442909481