5、野菜の硝酸態窒素値の問題について | 自然栽培プロジェクトのブログ

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5、野菜の硝酸態窒素値の問題について

先に、野菜の硝酸態窒素の問題について話してきましたが、再度この問題について取り上げたいと思います。

数年前にアメリカ・ニュージャージー州で自然栽培の消費者を対象にしたセミナーを開催しました。当時アメリカでは、グリーンスムージーの愛飲者が多く、特に若い女性に多く利用されていることが分かりました。日本でもグリーンスムージーの愛飲者が多くなっている今日、野菜の硝酸態窒素の問題は非常にシビアな問題だと感じました。



グリーンスムージーは、アメリカのスローフード研究家・ヴィクトリア・ブーテンコによって考案されたものです。


グリーンスムージー



〇グリーンスムージーの効能としては、

  病気の予防(がん予防、心血管障害、体重減少)や顔色が良くなるといった、健康面や美容面に効果あるといわれています。

  デトックス作用や消臭作用

-葉緑素は人間の体内に入ると、有害な金属や臭い成分と結合・吸着し、体外へ排出させる働きがあります。

-血中コレステロール値を下げる働き。

強い抗酸化作用があり、遺伝子や細胞を健やかに保ち病気の発症を予防する働きがあります。

○グリーンスムージーの問題点

グリーンスムージーの飲み方としては、毎日1リットル~2リットル程のスムージーを継続して飲むことで効果が上がるといわれており、高い硝酸態窒素値の野菜(特に葉菜)を使用することは、反対に健康を害する恐れがあると警告されています。

グリースムージーは、いろいろな効果があるだけに、自然栽培の野菜(硝酸態窒素値の低い野菜)を使用されることによって、より健康に役立つものになると思います。



○硝酸態窒素について

 硝酸態窒素(nitrate nitrogen)とは、硝酸イオンのように酸化窒素の形で存在する窒素のことをいいます。通常は、NO3-の形の硝酸イオンに金属が結合した硝酸塩の形で存在していますが、このうちNの部分だけをとって硝酸態窒素といいます。

また硝酸態窒素は通常、窒素化合物の酸化によって生じる最終生成物でもあるのです。



 土壌中の無機窒素は、アンモニア態窒素→亜硝酸態窒素→硝酸態窒素の3つの形で存在します。有機物が分解されると、まずアンモニア態窒素が生成されるのですが、硫安、尿素などのアンモニア態窒素の肥料が施肥されることもあります。これらのアンモニア態窒素は、土壌中の硝酸菌の作用で亜硝酸態窒素を経て、硝酸態窒素にまで変換されて作物体に吸収されるようになるのです。



ヒトをはじめとして、多くの動物が多量の食物を摂取した際に、飢餓状態に備えて余剰の栄養素を脂肪として体内に蓄積します。作物も同じように、過剰に摂取した硝酸態窒素を栄養素が吸収できない場合に備えて作物体に蓄える機能を有しています。

従って化学肥料、有機肥料を問わず、多くの窒素肥料を与えて栽培した野菜には、多くの硝酸態窒素が含まれていることになります。



話は変わりますが、私たちの食生活として、生活習慣病対策には野菜を多くとり、肉を少なくすることが望ましいといわれています。

厚労省も「野菜の摂取量が少ないと生活習慣病(日本では生活習慣に起因する疾病としてガン、脳血管疾患、心臓病などが指摘されており、それらは日本人の三大死因ともなっている)の発症リスクが高まる」と指摘しています。



○『野菜が糖尿病をひきおこす!?』 宝島社新書 著者河野武平

野菜を食べることは、生活習慣病の改善に一番であると何度も説明していますが、河野武平氏の『野菜が糖尿病をひきおこす!?』 宝島社新書では、硝酸態窒素の影響を以下のように説明しています。


栽培方法によって、野菜の硝酸態窒素の値が高くなり、この硝酸態窒素が「糖尿病」を初めとして、「慢性透析疾患」「腎臓・すい臓疾患」「アトピ-性皮膚炎」「癌」「胃炎」「甲状腺疾患」「肝臓結石」「リュウマチ」「痛風」「膠原病」「アルツハイマ-病」など、あらゆる成人病の根本原因であると著書は警告しています。



既に、硝酸態窒素における死亡事故(ブルーベイビー事件)や牛が死んだ事件を説明してきました。

これは、硝酸塩が血液に入るとヘモグロビンの鉄分を酸化させ、酸素が運べなくなり、酸欠状態を引き起こす症状です。特に、硝酸還元菌を殺す胃液が充分に分泌されない乳幼児にはたいへん危険な状態となるのです。

また、体内に取り込まれた硝酸塩は、消化器官のpHの影響を受けて亜硝酸に還元され、二級アミンと結合し、「ニトロソロアミン」(強力な発ガン物質)を生成するのです。中毒値に達したニトロソロアミンは、遊離基を放出してすい臓にあるベ-タ細胞を傷つけ、インシュリン生成を妨害するようになります。インシュリンの生成が不足すると、血液中の血糖値が高くなり、「インシュリン依存糖尿病」を引き起こすようになると、米国コロラド大学保健センタ-のコストラバ博士は警告しています。



畜産



○有機農業の問題点

安全でおいしい農作物を作っているつもりの有機栽培でも、有機資材の投入方法を間違えれば、人々の健康を損なう野菜を作っているケ-スもあります。

日本国としては、野菜の硝酸態窒素値の問題に関しては、何の対策も採られていなく、その問題点を隠しているのが現状です。それは、現在の農学の考え方では葉菜類の硝酸イオン濃度を下げることがとても難しいからです。

この問題は、野菜など農産物だけでなく、肥料や畜産廃棄物(糞尿)による地下水の硝酸塩汚染も深刻で、ハウス園芸地帯や大型畜産団地の場所と糖尿病などの疾病の発生場所と一致している現状があります。

 葉を食べるチンゲン菜、小松菜などの葉菜類が、特に問題になります。

硝酸化成する化学肥料は、問題であることは言うまでもなく、硝酸態窒素入りの化学肥料、特にハウスで追肥として施用される液体肥料は、化学肥料・有機質肥料に問わず野菜の硝酸態窒素を瞬時に大幅に増やすことになります。



有機質肥料としても、菜種油粕などの遺伝子組換肥料や畜産廃棄物(糞尿)は、飼料が遺伝子組換のため、腐敗分解を引き起こし、硝酸態窒素を多く発源するので、もはや畜産とリンクした有機栽培は安全とはいえないのです。

また、夏場のハウス栽培での葉野菜は生育が早く、硝酸態窒素がタンパク質に消化することが間に合わなく、どうしても硝酸態窒素が多くなるため、注意が必要です。



○EUにおける農産物における硝酸態窒素濃度の基準

世界的に見ると、硝酸態窒素の濃度に関しては、1999年にEUで「野菜に含まれる濃度の統一基準」が定められています。

2011年に改訂された基準値では、ホウレンソウなどは3,500ppm以下、加工・貯蔵される野菜の硝酸態窒素濃度は2,000ppm以下となっています。

この基準を超えると「汚染野菜」として破棄されてしまうのです。日本の野菜の硝酸態窒素値を測定すると、破棄されるべき汚染野菜の値の野菜が多くあることに驚かされます。

しかし、残念ながら日本(アメリカも同じ)では、水質での基準はあっても野菜の硝酸態窒素の安全基準がないのが現状です。

日本人の硝酸態窒素摂取量は世界平均の約倍もあるのに、このままの状況でいいのでしょうか。


   
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