4、新たに取り組むべき問題点 | 自然栽培プロジェクトのブログ

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4、新たに取り組むべき問題点 


土壌侵食2




 化学肥料について、いろいろと考えてきましたが、もう少しこの課題について整理し、今後どのように進めば良いのかを模索してみたいと思います。



 過去数十年の農業の趨勢をみると、生産現場では様々な問題を抱えるようになってきました。それは、単に栽培技術が停滞することによって収量が伸び悩むといったことではなく、生産基盤であるところの土壌の荒廃が主たる問題となっており、それが減収の要因にまでなっているということです。



現在世界の耕作地のうち、約15億ha(米国とメキシコを合わせた面積よりも広い)が中程度から重度の土壌劣化がおきており、1年間に500万ha以上が砂漠化しているといわれています。これは、今までに農業の増収技術として繰り返してきた化学肥料、除草剤そして農薬の乱用が原因といわれており、さらには風雨や地下水位の低下などで土壌浸食や塩害が拍車をかけ、今後土壌劣化はますます進行すると懸念されています。



また、日本のような集約的な農業が行われている国では、窒素成分の過剰施用が著しく、土壌に吸着しきれない窒素成分が地下水へ流出し、周辺水系の富栄養化という深刻な環境汚染をもたらしています。この過剰窒素は、化学肥料の使用だけが原因ではなく、家畜糞尿堆肥や有機肥料の使用なども大きな懸念材料として挙げられています。有機農法を推進すれば、土壌が良くなり、環境が保全されるという概念が覆される一端でもあります。



 ところで、化学肥料というものはすべて塩類です。肥料には植物に必要な成分(窒素、リン酸、カリなど)とともに、植物があまり必要としない成分も含まれています。作物に吸収されなかった成分は、次第に土壌に集積してしまい、かえって植物に害を及ぼすようになります。

肥料を施用する際には、副成分の少ない肥料を用い、余計な施用量を出来る限り減らすことが、土壌を健康に保ち、加えて作物(特に野菜)を健全に生育させるために必要です。



肥料を大量に施用すると、野菜(主に葉菜類)には硝酸という有害物質が蓄積したり、日持ちが悪くなったり、また米のタンパク含有率が増加して食味が下がるなど、農産物の品質が低下してしまいます。

また、作物の根が不健全になり、土壌病害に罹りやすくなったり、特定の肥料成分が過剰蓄積して生理障害(過剰症)が起こりやすくなったりします。



肥料の有効成分は、主に窒素、リン酸、カリですが、化学肥料はその三要素を化学反応によって合成したり、その三要素を単独に含んでいる化学肥料を混合したりしてつくられます。



 一般に農家では、高度合成肥料として、窒素、リン酸、カリが15%-15%-15%ずつふくまれたものや、14%-14%-14%位含まれたものが多く使われています。もっとも作物や、土壌によって、その必要とする成分がことなりますので、多くの成分比率の肥料が販売されています。

  比較的有効成分の含有比率の低い8-8-8位のものも多く使われますが、比率の低いものは、たとえば硫酸アンモニウム(硫安)、塩酸アンモニウム(塩安)、硝酸アンモニウム(硝安)などを窒素原料とし、カリ源としても硫酸、塩酸、硝酸とカリの化合物を使われます。



  いずれにしても、硫酸や塩酸、硝酸といった酸性の成分を使用しており、製品にSO3ClNO3等がふくまれていますので、有効成分が作物に吸収された後の土壌は、酸性が強くなってしまいます。作物の多くは酸性土壌をきらいますので、土壌を中性に近づけなくては次の作物をつくる時の条件が悪くなってしまいます。

  そこで、土壌改良剤として、アルカリ性の強い消石灰、苦土石灰等を土壌に混入することで、土壌を弱酸性に調整します。ここで注意しなければならないのは、石灰とSO3が化学反応して出来るものが石膏であること、石灰とCLが反応して出来るものは塩化カルシウムであることです。つまり土壌を堅く固まらせてしまうということです。



肥毒


化学肥料と有機質肥料には、それぞれ長所と短所があります。化学肥料の長所は、少しの量で大きな増収効果が期待できることです。有機質肥料の長所は、肥料としての効果以外に、土壌を軟らかくしたり緩衝機能を高めたりすることです。しかし、いずれの肥料も過剰に施用すれば問題を引き起こすのです。化学肥料では、土壌の酸性化や環境汚染の問題が生時ます。また一方、有機質肥料のみで農産物の高い収量を得ようとすれば、かなり多量の有機質肥料の施用が必要となり、これまた環境汚染につながってしまうのです。



先にも説明しましたが、化学肥料には食糧増産という大きな功績があります。米の食糧増産は、まさに機械化と化学肥料の産物であり、他の野菜なども同じく増産されてきました。

しかし、増産されたのはいいけれども、土が使い捨て状態になってしまったことが問題なのです。あまりにも簡単に増収できたものだから、化学肥料を使い過ぎてしまったのです。土が荒れて微生物が少なくなり、害虫が多発して畑を捨てざるを得なくなってしまいました。これは化学肥料の使い方が間違っているからです。



 化学肥料は、土に撒くとすぐに水に溶け、植物に吸収されてしまいます。化学肥料は昆虫や微生物の食べ物にならず、彼らは命を絶たれてしまうことになります。彼らが死滅してしまうと、土が痩せてしまうので、生命力にあふれた作物ができなくなり、出来るのは命のない作物ばかりということになってしまいます。

  このあたりから、人々は農薬を使い始めます。弱った野菜は病気や虫がつきやすくなります。すると、人々は毒性の高い殺虫剤や毒ガスである土壌くんじょう剤を土の中に打ち込み、またまた昆虫や微生物の皆殺しをやってしまいます。そればかりではなく、一本の草さえ許すまじとばかりに、これも毒性の高い除草剤に手を出してしまいました。草こそが、土を豊かにしてくれるものなのにです。



  ここに出てきた農薬は、ほとんどが発ガン性物質になるといわれているものばかりです。これらは残効性も高く、土や作物に浸透し、最終的には人間の体内に入って蓄積されていくものばかりです。野菜をいくら洗っても、決して落ちるものではなく、人の死因のトップがガンになるのも理解できるような気がします。特に除草剤やホルモン剤には催寄性もあり、新生児の死因のトップが奇形によるものであるのは、あながち偶然ではないと考えられます。




がん1
 


  そうした化学肥料や農薬は、土の循環を壊しただけでは終わりませんでした。土に多量に撒かれた化学肥料や農薬は水に溶け、ある時は雨に流され、地下水や川に入りこみ、窒素、リン酸、カリウムを多量に含んだ水になってしまいました。すると、それを食べて浄化しようとするコケが川の中に増えていきます。コケが増えすぎた川の中は酸素不足になり、コケが死に絶え、ヘドロとなって異臭を発散し、それが毒ガスを発生させるため、魚の住めない死んだ川になってしまったのです。化学肥料と農薬は、水の命までも巻き添えにしてしまったのです。このままでいくと、あとわずかな時間で自然のサイクルは修復不可能になってしまいます。それは、人間が住める環境が終わることを意味しています。地球に住む人類全体としての意識革命が起こらない限り、破滅に向かいつつある人類の運命もまた、変えられないでしょう。みんなが心から化学肥料や農薬をなくしたいと思った時に、それらは姿を消すのです。地球の未来、人類の未来は、私たちの考え方や心の持ち方にかかっているのではないでしょうか。



 私達が、自然栽培プロジェクトを実施していくことの意義が明確に理解いただける内容ではないかと思います。次代のために、この問題は真剣に考えなければいけないことだと思います。

 




土壌侵食1