6、野菜における硝酸態窒素の基準値について
前節でも説明したように、残念ながら日本(アメリカも同じ)では、水質での基準値はあっても野菜の硝酸態窒素の安全基準がないのが現状です。
現在、この基準値を運用しているのはEUのみで、「野菜に含まれる濃度の統一基準」として定められています。
WHOは、食品添加物としての硝酸塩の1日の許容摂取量(ADI)(Acceptable Daily Intake)を決めていますので、硝酸態窒素も硝酸塩であることから、このADIの値を利用して、野菜の硝酸態窒素の安全値について、大まかな目安を算出したいと考えました。
① WHOが定める硝酸塩の1日の許容摂取量
(ADI=Acceptable Daily Intake) 3.7mg/体重1㎏/日
※この場合、食品添加物としての硝酸塩の1日の許容摂取量であり、
硝酸態窒素も同じ硝酸塩であることから、この値を利用して計算
することとした。
※硝酸塩は発色剤として食品添加物に使われている。
ハムやソーセージがピンク色で美しいのは硝酸塩のおかげです。さらに発酵調整剤としてチーズ、清酒にも添加許可されている。
② 体重が50㎏の人の硝酸塩(硝酸態窒素)の許容摂取量
-体重50㎏の人の1日の許容摂取量は、3.7mg×50㎏=185mg/日
-日本人の平均的食生活から硝酸態窒素は概ね90%を野菜から摂取
185mg×0.9=166.5mg
-日本人の一日の平均的野菜の摂取量は約300gである。
166.5 mg×1,000g/300g≒554ppm
③体重40㎏~70㎏の人を考えると445ppm~775ppm、平均は610ppm
-全ての野菜を生食で摂取する場合は、野菜の硝酸態窒素値は
600ppm前後(445ppm~775ppm)が安全基準ということになるの
で、600ppm以下の野菜を栽培することが理想的であるというこ
とになる。
-しかし、現実的には、現在の栽培技術では600ppm以下の野菜
を栽培することは難しいことであると思います。
-実際には、調理の過程で値が半減するといわれていることから、
野菜の硝酸態窒素の値は、概ね1,200ppm(900ppm~1,500ppm)
以下に抑える栽培ができることが望ましいということになる。
-以上の結果、グリーンスムージーに使用する葉菜(コマツナ、
ホウレンソウ等)は、生で使用する場合が多いので、野菜を使用
するときは、洗ったり、簡単な湯煎等を行ってから使用すること
を心掛け、1,200ppm以下の野菜を使用することが望ましいのでは
ないかと考えられます。
④またWHOでは、硝酸態窒素の単独致死量は4,000mgと定めている。
-これは、4,000ppmの野菜を1㎏食べると死に至ることになり、ま
た10,000ppmの野菜であれば、400gを食べると死に至る値に相当す
ることになります。
-これらの数値は、現実の生活のなかで起こり得ない事例ではない
ように思われますので、気を付けたいところです。
〔注 意〕
この硝酸態窒素のADI(1日の許容摂取量)の推定に際して、JECFA(FAO/WHO
合同食品添加物専門家会合)が、その基準値を設定することに対して以下の
ような意見を表明していると農水省のホームページで説明しています。
野菜は、硝酸態窒素の主要な摂取源ですが、野菜の有用性はよく知られてお
り、野菜中の硝酸態窒素がどの程度血液に取り込まれるかのデータが得られ
ていないことから、野菜から摂取する硝酸態窒素の量を直接 ADIと比較する
ことや、野菜中の硝酸態窒素についての基準値を設定することは適当ではな
いと説明しています。
今回の計算された硝酸態窒素の安全値に関しは、あくまでも目安となる安全
値であり、それがどれくらいの値になるかを試算したものです。