あるところに、車が大好きなおじいさんがいました。
車が大好きと言っても、
あの車も、
この車も、
う~んこっちの車もいいなあ
って色んな車が好きなわけではありません。
一台の車がとっても大好きなおじいさんでした。
水色の小さな丸っこい車。
おじいさんが横に立つと、ひょいっと、簡単に頭が見えてしまう小さな車。
えっ?
どのくらい大好きかって?
なんと、初めてその車を買ってから60年。
ず~っとその車に乗っています。
そして、毎日毎日、きれいに磨いて乗っているのです。
毎日ですよ、
一日も休むことなく、ず~っとです。
そんなおじいさん。
今ではおばあさんも死んでしまい、一人ぼっち。
今日も車を磨いています。
「や~れ、今日も車を磨いてどこに行くかのう?」
車を磨き終わると、一人でドライブに行くのが、おじいさんの日課です。
今日は海まで。
今日は山まで。
おばあさんが死んでしまってからは、
毎日、静かにおじいさんは一人で運転。
車が大好きなおじいさんですが、今ではちょっと寂しいドライブです。
でもね、実は今日はちょっと楽しみなんです。
なんと、今日走るとこの車、
走った距離が100万キロを超えるんです。
100万キロってどのくらい?
おっほんっ!
えー、地球1周が約4万キロ。
ということは……
なんと!
地球約25周分!
すっ、凄い!
失礼しました……。
とにかく、そんな凄い距離。
100万キロを超えるのが、
おじいさんの密かなお楽しみ。
999999キロから、ちょっとソワソワしちゃいます。
変な笑いも出ちゃいます。
「しぇっしっしっしっし~」
「もう少し、もう少し」
「しぇっしっしっしっし~」
すると、
カチャ。
ついに、100万キロになりました。
「お~、やったやった」
一緒に喜ぶ人もいませんが、おじいさんは嬉しそう。
見晴らしのよい丘の上に車をとめて休憩です。
おじいさんは車を降りて、つぶやいていました。
「やれやれ、ついに100万キロ走ったか」
「いや~こいつとは若い頃から、よく走ったな~」
「ばあさんともよく、乗った」
「はじめて出会った時も、
結婚してからも、
馬鹿話をしたり
ケンカもしたけど、
よ~く一緒にこいつに乗って
色んな所に行ったなあ……」
おじいさんは、車に手をかけ、
ありがとうを込めて、
ポンポンっと
軽く車を叩きました。
「よし、帰るか」
100万キロを超えた帰り道は、もっと寂しいドライブです。
「は~あ……」
と言いながら、おじいさんはエンジンをかけました。
ブルンッブルンブルン!
100万キロを超えても元気にエンジンがかかります。
すると、突然車のラジオのスイッチが入り、
大きな音が鳴り響きました。
パンパカパンパンパーン!
「おめでとうございます!
いやいや、おめでとうじゃないですね。
有難うございます!
あなたは、ついに100万キロを走らせてくださいました」
大きな音と一緒に、変な声も聞こえてきます。
「なんだ!? ラジオか?
つけていないけどなあ、おかしいな」
おじいさんは不思議そうに、車のラジオのスイッチを切りました。
すると、また勝手にラジオのスイッチが入り、変な声が続きました。
「おじいさん、おじいさん、ちょっときらないでよ、
せっかくお礼を言っているのに
僕ですよ僕、あなたが毎日磨いてくれた
水色の車ですよ。
く、る、ま」
「く く 車!?
何を言っているんだ!?」
「も~う、知らないんですか?
車は1人の人が、大事に100万キロ走ってくれると、
話が出来るようになるんですよ」
「そっ そんなこと、あるわけないだろ!?」
「そんなことって言ったって、
ほんとの事。
これ、車の世界の常識です」
つづく
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今日はここまで。
さあ、この先は何となく想像出来ちゃいました?
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あずまくも