「宗教の時間 唯識 心の深層をさぐる (上)」(多川俊映、著/NHK出版)を読了しました。
この本は、NHKラジオ第2「宗教の時間」の2022年4月から9月までの放送テキストです。私は、この番組を、「聴き逃し配信」で、全部聞きました。
著者によると、「唯識の特徴を端的にいえば、あらゆることがらをすべて心の要素に還元し、心の問題として考えようとする仏教」だそうです。
唯識の構造を簡単に書いてみると、人間の心は、前五識(眼識・耳識・鼻識・舌識・身識)、第六意識、第七末那識、第八阿頼耶識の層構造になっていると考えます。前五識と第六意識は、表面心で、認識することができますが、第七末那識と第八阿頼耶識は、深層心で、不可知とされているそうです。一般に言われる無意識とは、ちょっと違うかもしれません。
ここからは、私の理解ですが、唯識では、物事を、そのままに見ているのではなく、頭の中で描いた像を見ていると考えるのだと思います。この半年間で、前五識、第六意識、第七末那識まで学んできて、全部そうなっていました。ここから、さらに、私の勝手な思いを書かせていただきますと、カントの言う「物自体」と「現象界」に似ているのではないかということです。人間は、物自体ではなく、頭の中の現象界を見て生きているとするなら、唯識と似ているのではないかと、勝手に思いました。専門の方に聞いたら、あっさり違うといわれそうで、怖いです。でも、いろいろと考えを巡らせることのできる興味深い話を聞かせていただきました。
最後に、目次を記しておきます。
はじめに
第1回 唯識仏教とその祖師たち
第2回 様々な「心」の捉え方
第3回 前五識 五つの感覚世界
第4回 第六意識は「わが心」
第5回 第六意識をめぐって
第6回 自己愛の根源 第七末那識
以上です。