
猫は知っていたは
日本のミステリー作家の
仁木悦子(にき・えつこ)さんの作品です。
女流ミステリー作家で
幼い時に胸椎カリエスという病気にかかり、ほぼ寝たきりの生活を送っていたそうです。
その為に学校教育を受けておらず独学で知識を身に付けて小説を書いたというすごい人で
日本のアガサ・クリスティと
江戸川乱歩から呼ばれたそうです。
1957年、第3回江戸川乱歩賞を受賞していますよ。
主人公は
作者と同じ名前の
仁木悦子(にき・えつこ)と兄の雄太郎(ゆうたろう)という大学生兄妹です。
この兄妹が東京の世田谷区にある
箱崎という医院に下宿するところから話がスタートします。
悦子は音大のピアノ🎹専攻の学生です。
箱崎医院には医大に通う2人の男の子の他に、年の離れた幸子ちゃんという幼稚園児がいて、幸子ちゃんにピアノを教える代わりに家賃を半額にして貰う約束でした。
なんだか、学生が下宿するって話に昭和レトロな感じがしました。
私がもし学生だったら賄い付きで銭湯に通う生活よりはワンルームマンションなりアパート選ぶと思います。
また、箱崎夫人に
大人のためのわかりやすいピアノ教本のことで尋ねられる悦子が本を買うのですが、代金が280円だなんて、今どき教本の新刊書こんな値段であるのだろうかとビックリでした。ブックオフなどの古本屋さんにもこの価格で教本はさすがにないのではって思いましたよ┐( ˘_˘)┌
仁木兄妹が引っ越して早々に
箱崎医院では、奇妙な事件があいついで起こります。
平坂氏という傲慢で嫌な態度の男性が突然行方不明になったかと思うと
「急用が出来た」という平坂氏からの謎の一方的な電話がかかって来たり。
箱崎家のおばあちゃんが物置に閉じ込められた直後に絞殺死体で発見されたり。
家永という横柄な態度の看護師の女性が毒を塗ったナイフで殺されたり。
家永看護師の今際の際に発した
「ネコ、ネコ」という言葉と
箱崎医院に飼われている黒猫のチミがこの物語では重要な意味を持ってきます。
ネタバレになりますが
一連の殺人事件の犯人は
箱崎医院の院長の箱崎兼彦(はこざき・かねひこ)氏でした。
兼彦氏は
傲慢な患者の平坂氏の症状を慢性虫垂炎と誤診してしまっていました。
実は悪性腫瘍だったのにです。
平坂氏が退院したあと、別の病院に転院するつもりだと知ったので
誤診した事を隠す為に、家永看護師と共犯になって、平坂氏が生きて居るかのように偽装させて、偽電話📞を家永看護師にかけさせていました。
おばあちゃんを殺してしまったのは
うっかり平坂氏の死体を見られていたからです。こちらは犯人の兼彦院長にとっては想定外でした。
家永看護師に対しては、共犯の口封じでした。
黒猫のチミは、毒を塗ったナイフ発射装置の重しに使われていたのですよ。
ネコを麻酔で眠らせておいて、後に目覚めて立ち上げると、ネコという重しがなくなり、毒を塗ったナイフが自動的に発射するような仕掛けを作っておいたのですよ。
最後はすごく後味悪くて、個人的にはやりきれませんでした。
箱崎院長は仁木雄太郎には真実をしたためて、警察に捕まる前に自殺してしまいます。
だけど、突然お父さんを失ってしまった幼い幸子ちゃんはどうなってしまうのだろう。
いつか幸子ちゃんが大人になって
実は溺愛されていた父親が、殺人犯だったなんて知ってしまったら
彼女はどうするのだろうか。
ふとそんな思いが
脳裏をよぎりましたね。