みらあじゅの恐怖博物館⑤ | 星導夜

星導夜

何気ない日常にも素敵なことが満ち溢れているように思います
日常のささやかなよろこび、楽しみを書き留めてみたいと思います

わたしは「恐怖博物館」の学芸員(キュレーター)をつとめるみらあじゅです。

ようこそ当恐怖博物館においでくださいました。  

私の創作した恐怖話がたくさん

この博物館には収められておりますよ。

本日は

「声はどこから」です。
声はどこから

夏休みに僕は市が運営しているアミューズメントパークでアルバイトを始めました。売店の販売員です。

午後から夜の時間帯に、先輩と中年の女性正社員と一緒に売店に入ります。

ある夕方、正社員の女性がオフィスに戻り先輩と2人きりになりました。

やがて迎える閉店時間。

消灯と施錠については、アルバイトがシフトで行う事になっています。
この日は、僕の当番にあたっていました。

3階建ての建物の3階からまわり、最後に1階に降りた後に渡り廊下を渡って商品のストックを置いて有る倉庫に入ります。
倉庫の電気がついて居ないかを確認すると入口の鉄扉を閉めて施錠します。
それから本館と繋がっている渡り廊下に出て、本館へと入る扉に向かって歩くのです。

歩いている途中で

「失礼します」という中年女性の声が、どこからともなく聞こえて来ました。

「はーい」僕はてっきり声の主をあの女性正社員さんだと思ったものですから返事をしましたが、ふと本館の扉の前に来た時に、さっきの声の事が急に気になってしまいました。

一体あの声はどこからしていたのでしょうか?

とにかくこのまま電気を消してしまうと真っ暗になってしまいますし、本館に入る扉に鍵をかけてしまうと、あの声の主を閉じ込めてしまう事になります。

しかし気になって見回したところ廊下には誰もいませんでした。

「電気消してしまいますよ。鍵もかけてしまいますよ」大声で僕は叫びましたが、やはり返事はありませんでした。

仕方ありません。僕は廊下の電気を消して、扉に鍵をかけました。

売店に戻ると、先輩が後片付けをしていたので、不思議な声のことを話してみました。

「先輩、社員さん、いらっしゃいましたよね?」

「いや、誰も来なかったし、もうあの社員さんお帰りになったよ」

「変ですねえ。声がしてたんですよ。40代位でしょうかね。女性の声でしたよ」

すると先輩の顔がみるみるうちに青ざめるのがわかりました。

「ねぇ君、その声はあそこの扉のあたりからしたかい?」と、さっき僕が鍵を閉めた扉を指さしました。

「ハイ、そうですが何か?」

「実はね、ここ出るんだよ」

先輩は両手をダランと下げました。

「幽霊だよ、幽霊さ。俺はあの扉のところで良く見るんだよ。上半身がなくて、下半身だけの女の幽霊をさ」

まさかと思いましたが、数日後昼間にも、お客様として来園していた子供が
「恐いよ、恐いよ、あそこに足だけのお化けがいるよう」と大泣きしていたので、僕は先輩の言うことを信じないわけには行きませんでした。

その年の夏休みだけで、次の年からはそこのアミューズメントパークのアルバイトは辞めました。

今はそのアミューズメントパークは無くなっています。

どうやら、あの下半身だけの幽霊の目撃談が後を絶たないので、来園者が減ったので、潰れてしまったとのことです。