"Proximal Stability for Distal Mobility"は、「遠位のモビリティには、近位のスタビリティ」という意味で、遠位の関節可動域向上や、それを制限しうる筋の柔軟性向上には、近位(体幹)がしっかり(安定)していないといけない、という意味です。言い換えると、近位がしっかりしていないと、遠位のモビリティを一所懸命向上しようとしても最大限の効果は期待できない、ということになります。遠位(脚/股関節・腕/肩関節)のさまざまな動きに対して、姿勢を維持できる体幹のスタビリティが必要です。ここでも矢状面の動きが鍵になります(Sagittal Blockade'-矢状面の制限:まず最初に解消すべきです)。
ちなみにこれは、Dynamic Neuromuscular Stabilization (DNS)の基本の考え方です。赤ちゃんが生後まず最初に確立するのが、矢状面のスタビリティです。頭部方向に位置している肋骨弓が足の方向に下がり、横隔膜がドーム状になることによって腹腔内圧を制御してこのスタビリティの基礎を確立します。生後3ヶ月くらいには、仰向けで股関節と膝関節を90度屈曲できるようになります。そして、両足をバタバタ(股関節の伸展・屈曲)しても体幹はしっかり安定するようになります。寝返り(回旋・身体のねじれの動き)をする前に、この矢状面がしっかりしなければいけません。赤ちゃんは、教えられることなくこのスタビリティを確立して、次の動きの習得へと進んでいきます。
ちなみに、体幹に対する足の長さは、大人の方が圧倒的に長いですが、大人で、この生後三ヶ月の仰向けの姿勢を維持して呼吸ができない人が多いのです。DNSでは、大人のリハビリでもまずこの3ヶ月の仰向けの姿勢の確立を重要視します。
一般的なトレーニングでも"Proximal Stability for Distal Mobility"は応用できます。たとえば、あお向けてハムストリングのストレッチをする際(膝をまっすぐにした状態で股関節を屈曲する)、身体の両脇で両腕で床をしっかり押すと、体幹が引き締まりストレッチの効果が上がります。同じようの方法がほかのエクササイズでも応用できます。
'Sagittal Blockage'とは、矢状面における動きが制限されていることを言います。Kinetic ControlのMark Comerfordが、引用しています。第一中足趾節関節(1st MTP joint)の伸展が制限されていると、足の外転・回内の代償が起きやすくなります。歩行や走行のプッシュオフの際、本来第一中足趾節関節が伸展するはずが、伸展の制限により足が外転・回内され、プッシュオフが第一中足趾節関節の内側になり、親指が外側に押されてしまいます。これが繰り返されると、親指が外転方向に曲がってしまう外反母趾になってしまいます。また、回内が過度に繰り返されると、アーチが落ちてしまいます。ちなみに、同じようなことは、足関節の背屈制限でも起こります。
Sagittal Blockadeは、もともとこの第一中足趾節関節(1st MTP joint)の背屈域の制限と、それにによる代償運動についてのものですが、足関節、股関節にも同じ考え方が応用できます。基本的には、矢状面の動きである屈曲や伸展が制限されると、他の面(水平・前額面)で代償運動が起きるということです。
股関節では、伸展・屈曲の制限は、腰椎での過度な動きを生じさせます。たとえば歩行・走行でのプッシュオフの際、股関節は進展します。この股関節の伸展が制限は、骨盤が過度に回旋(腰椎の回旋)・前傾(腰椎の伸展)によって代償されます。もちろんこれが繰り返されれば、組織への過剰なストレスにより、障害につながります。また、股関節の屈曲が制限されていると、腰椎の屈曲・回旋で代償されます。
リハビリ・トレーニングにおいて、水平・前額面での代償運動の矯正は重要ですが、その裏側にあるのは矢状面の制限であることがほとんどです。したがって、矢状面の制限(①可動性・域の回復、そして②回復した可動性・域を自動で動かせる筋力の回復)の対処をすることを忘れないようにしましょう。
Sagittal Blockadeは、もともとこの第一中足趾節関節(1st MTP joint)の背屈域の制限と、それにによる代償運動についてのものですが、足関節、股関節にも同じ考え方が応用できます。基本的には、矢状面の動きである屈曲や伸展が制限されると、他の面(水平・前額面)で代償運動が起きるということです。
股関節では、伸展・屈曲の制限は、腰椎での過度な動きを生じさせます。たとえば歩行・走行でのプッシュオフの際、股関節は進展します。この股関節の伸展が制限は、骨盤が過度に回旋(腰椎の回旋)・前傾(腰椎の伸展)によって代償されます。もちろんこれが繰り返されれば、組織への過剰なストレスにより、障害につながります。また、股関節の屈曲が制限されていると、腰椎の屈曲・回旋で代償されます。
リハビリ・トレーニングにおいて、水平・前額面での代償運動の矯正は重要ですが、その裏側にあるのは矢状面の制限であることがほとんどです。したがって、矢状面の制限(①可動性・域の回復、そして②回復した可動性・域を自動で動かせる筋力の回復)の対処をすることを忘れないようにしましょう。