正丸峠の怪① | Over rebel

Over rebel

REBELヤってま~す。
イジリ系です。あまり面白くないと思います。

自粛ムードでネタもなく、昔書いた短編でもUPしておきます。(⊙ꇴ⊙)

 

その話は、一時期よりも余り出向かなくなっていた青梅の会社に勤めている明郎の社員寮で、彼の同僚の啓介から聞いた。

この頃の俺達は、集まるとだいたい女の子の話か、バイクの話しをしていたと思う。

その時も、3人の共通の趣味であるバイクの話しから当時社会問題にもなっていた、峠のローリングの話しに何となく移っていき、誰から言いだしたでもなく“正丸峠の話題”が出たのであった。

話しが正丸峠の話題になると、それまで饒舌だった啓介は口数も少なくなり、

「どうしたの?」と言う俺達の問いに、ボソリとそういった後、話しを大袈裟に誇張様子もなく、淡々と話し出した。


 

==正丸峠に関する啓介の証言==

 

この会社に勤め初めて直ぐの頃だったと思う。

 

 

何かの用事で児玉の実家に週末帰る事になったんだ。当時お金もなくって正丸峠から秩父を抜けて帰ろうとした僕が残業をおえて、バイクで会社を出たのは、そうだな夜の九時頃だったと思う。

 

 
道は週末にも関わらず空いていて、その峠に差し掛かったのは10時ちょっと前頃だったよ。色々それまでにも、変な噂があったじゃない“あの峠”。だから速攻で通過しようと思って結構飛ばしていたんだ。
 
そして、頂上付近の売店の所まで来るとそこの停留所のベンチに女が“ポツン”と座っているのが見えたんだ。こんな時間に変だな!なんて思いながらも、その彼女の着ていた白い服が、確かワンピースかなんかだったと思うんだけど、妙に夜の闇の中に浮き立って見えて、目に付いたって言うがそこから目が離れなくなって、気が付くと僕はギアを入れたままクラッチを切って彼女の前にバイクを止めていたんだ。
 
目前で止まった僕にたいして驚く様子もなく、彼女は顔を上げて立ち上がり、こっちにゆっくりと歩み寄ってきた………正確に言うと歩いて来たんじゃないかも知れない!足は動いていたけど………そうまるで、動く歩道に乗っているようにスーーと…。
 

 

そして、ヘルメット越しのまるで僕の耳元でささやくように、

 

「ちょっと事情があって、タクシーの拾えるところまで乗せて言ってくれ」って声がしたんだ。
 
僕は、怖い。と言うよりも、ものすごい違和感と言うか“ここに居ちゃダメだ”みたいな感じにとらわれて、バイクを急発進させようとしたんだ。でも、ギアが高いまま入っていてエンスト!慌ててエンジンをかけ直している間に、彼女は“ガバッ”っとバイクの後ろに跨って、僕にしっかりしがみついてきたんだ。
 
なんと言うかな、背中にはゾクゾク冷たいモノが走ったんだけど氷のように冷たいって言うのと違って、決して触れてはならない物が、僕の背中にしがみついてきたみたいな感じだった。
 
そんな彼女を僕は反射的に右手で振り落としたんだよ、しっかりしがみついてた感触はあったんだけど、意外にあっさり“スルッ”って感じで、彼女は路上に膝と両手を着いたかたちで蹲った。
 
それからは、もう必死でギヤをガチャガチャやっと一速に入れて、バイクを急発進させた。あんまり急にクラッチを放しすぎたんで、仰け反って後ろにひっくり返りそうになったけど、なんとか体制を立て直して後ろを振り向いた。
 
そしたら、その女“四つん這いの恰好のまま”手足を動かさず、スーーっとこっちに向きを変えるとバイクの後を牽引しているように追ってきたんだ。牽引しているロープを彼女自身がたぐり寄せるようにコーナー毎に確実にその距離を詰めてね。
 
僕は、必死でもうホントに真剣に早く走ったよ、後ろも見ずにね。そして、国道の明かりが見えてホッとして、バックミラーを見たんだ。
 
乗っていたんだよ”僕の後ろに!もう身の毛がよだつってそのことだろうね、何をその後やったのか覚えてないんだ。ただその後通りかかった車の人が警察に通報してくれて、僕は救急車で病院に送られて居る途中だった。
 

後で、警察に呼び出されて簡単な事故の調書見たいの採らされたけど、
「速度超過による、ブレーキ・ミス」でかたずけられた。まあ、僕もホントの事は言えなかったけどね。

 

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啓介の独白は、俺達を黙り込ませるのに十分だった。

 

 

明郎と俺のグラスに注がれていたビールが、活性を失って無機質な琥珀色の“ただの液体”と化している。こういう話しをしていると、良くあることだが部屋の空気はどんよりと沈み、時間が停滞したかのようにその歩みを遅らせていく。

 

 
「居たんだよ!」啓介が話し終わっても、眉間に皺を寄せて“聞き入った”ままのポーズを取っている明郎が不意に口を開いた。
 
「えっ!」
 

「居たんだよ“その女”俺が行った時にも……・!!」

 

「前におまえが言った事があったろう。あの峠を通り掛かったとき変な気分になったって」

こっちを見て話し出した明郎に俺はうなずく。

彼はそこまで言うと、ナマ暖かくなっていたコップのビールを一気に飲み干し、話を続けた。


========百物語のように続く「正丸峠の悪い噂」。明郎の証言=========== 

 

その話を、行きつけのバイク屋で知り合って、結構気が合いよく遊んでいたケンっていう奴に話したら、なんか行きたがっちゃってさ……・・そいつの86で夜中デッパリかけたんだ。

 

そいつは、その手の話が好きで「怖い、怖いツアー」とか言って、色々そういうところに出かけてるみたいだった。

 

行くまでは、快適なドライブだったよ。ケンはおもしろい奴で車の中では、笑い声が絶えないくらいだった。

 

そして、正丸峠に着いた。国道からトンネルの前を左に折れて。あそこ、こっちから行くと解りづらい道だろう、一度通り過ぎちゃってトンネルの手前をUターンしてきたんだ。

 

峠を登っていくと標識が有って、「正丸峠」って書いてあった。その看板をみて、

「おおー、ここだここだ!」なんてケンは、はしゃいで車がすれ違えない所も有るような細い道を結構なスピードで登っていったんだ。

 

そして、頂上付近の売店の前まで来て、ケンが「ジュース飲みたい」って言って、そこの自販機の前で車を止めた。その時初めて、バス停の所に立っている“その女”に気づいたんだ。

 

暗闇に目が慣れたって言うよりも、“はっ!”と気づいたっていう感じだったな。

 

考えてみれば10時過ぎで、バスなんか来るわけ無いんだ。最初から変だったんだよ。でもケンは、

「ナンパしちゃおうか!」なんて、ケラケラ笑って、

「ジュース買いに行きながら様子見てくるよ」と言い残して、サッサと車を出て行った。

 

その時“その女”は顔を上げてケンを見た。それまで女のいるバス停の方をチラチラ見ながら、自販機の方に向かっていた彼は、自分を見ている女に気づいて足を止めた。

 

俺はその女の顔を見て“ゾッ”とした。顔に表情が無いんだ。ちょうど逆光で輪郭だけ浮き立ってるみたいに細かいディテールがぼやけている。

 

ケンも気づいたのか、顔から笑いが消えている。まずいと思った。

 

「とにかく早くここから離れなきゃ」それだけしか考えられなかった。そして、助手席から運転席に乗り移ると窓を開けて

「ケン、早く車に乗れ!!」って叫ぶと、急いでエンジンをかけ店の横のちょっとした隙間で方向転換して、ヨタヨタ戻ってきたケンを乗せて車を急発進させ、その場を離れ峠を下ったんだ。2人とも後ろなんか振り向く気になれなかったし、国道に出て結構にぎやかなドライブインを見つけて、一休みするまで一言も口をきかなかった。ただ、そのドライブインで車を止めて降りるようにケンを促すと、

「あいつ、顔が…・・無かったよ!」と半べそかきながらケンが言ったのを覚えている。


 

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「完ぺきに滅入っちゃったね、もうよそうよこの話は!」明郎の話が終わり、妙な沈黙が支配し始めたのを嫌うように啓介が切り出した。

 

それから俺たちは、近所の24時間営業のファミリーレストランに夜食を食べに行き、帰ってくると、“自分の部屋に戻る気になれない”と言う啓介を含めた3人で明郎の部屋で雑魚寝した。

 

俺の寝た位置から、洗って縮んでしまったらしいカーテンの隙間から、夜の闇が顔をのぞかせていて、そこから今にも人が顔を出すような気配がして目が離れない。

 

しばらくそのままでいたが、寝返りをうって、壁に顔を向けるようにして、やっと眠りについた俺は夢を見た。

 

==========連鎖的にその夜、俺の見た悪夢。または暗示?============

 

俺は、川沿いの堤防の上を歩いている。見覚えのある景色で実家の近所にあるサイクリングロードだ。とにかく“散歩”のような感じで歩いている。

 

すると、後ろから幼い女の子の声が聞こえて衝動的に振り向いた俺は、その女の子を見て“ギクリ”とした。ヨチヨチ歩きのおぼつかない足取りで、こっち向かって歩いてくる少女の顔は、大人の表情をしている。

 

すると、その少女はおぼつかない足取りでは有るがこちらに向かって、ものすごいスピードで歩み寄り、俺の右足にしっかりとしがみついた。

 

あわてて逃げようとする俺を上目使いに見て、“ニヤリ”と笑った少女は、そのまま口を開け太股に噛みついた。

 

「なんだー!こいつは!!」すでにパニックになって、振り回した右足から首がちぎれて少女の体が“スルリ”と落ちていく。首だけになった少女は、凄い形相をして、噛みついたまま上目使いに、にらんでいる。なんとか引き剥がそうともがいていると、ちょうどタイマーが切れたようにその首はポロリと足から離れ道に落ちて、まるで壺のようにコナゴナに砕け散った。

 

そして、バランスを失い倒れ込んだ俺の横を、白装束の旅支度をした一行がお経を読みながら無関心に通過していく。

 

全員が通りすぎるのを、呆気にとられて見ていた俺の顔を、最後尾の老婆が不意にのぞき込み、その皺だらけ口元をほころばせて、言い聞かせるように呟いた。「ご注意、あそばせ!」

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そこで目が覚めた、すでに日は高くなっていて、カーテンの隙間から差し込んだ日の光が、俺の体に当たっていてグツショリ汗をかいていた。

 

寝苦しかったんだ!それに夕べの雰囲気を引きずったまま寝たからな!”まだ静かに寝息をたてている2人の横で、悪夢の原因をなるべく楽観的に自分に言い聞かせようとしていた。

 

しかし、今になって考えると、それから数年後に起こる出来事を“その夢”は暗示していたのかも知れなかった。

 

つづく