根拠発掘屋
「泣いて止めた。」
子どもの頃。
ぼくの家の隣には、
地区の公民館がありました。
公民館の裏には、
大きな箱ブランコがありました。
ブランコの向かいには、
ぼくの家の、
縁側の土壁がありました。
近所の上級生たちは、
そこでよく遊んでいました。
⸻
ある日、
上級生たちは、
箱ブランコを、
勢いよくこぎ始めました。
そして、
揺れる箱ブランコに、
ボールをぶつけました。
反動で飛んだボールは、
ぼくの家の土壁へ、
何度も当たりました。
壁は、
古く、
傷んでいました。
雨樋も壊れ、
雨が降ると、
雨水が壁を伝って、
家の中へ入ってくることもありました。
ぼくは、
本当に壊れてしまうと思いました。
「壊せ。」
そう言いながら、
上級生たちは、
ボールを壁に当て続けました。
ボールが、
壁に当たるたび、
ぼくは泣きながら、
「やめて。」
と、
何度も言いました。
でも、
誰も、
やめませんでした。
⸻
あの頃は、
貧乏なことを、
笑われることもありました。
だから、
ぼくは、
「うちだから。」
そう思いました。
⸻
根拠発掘。
本当に、
貧乏な家だったから、
こんなことをされたのか。
今となっては、
分かりません。
それは、
当時の【ぼく】が、
そう受け止めていただけかもしれません。
昔は、
ただ悔しい出来事として、
記憶していました。
今の私が振り返ると、
一つだけ違って見えます。
当時の【ぼく】は、
泣きながら、
「やめて。」
と、
何度も言っていました。
それでも、
やめてもらえなかった。
当時の【ぼく】にできたのは、
そこまででした。
続く。
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