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「とある魔術の禁書目録22」 鎌池和馬 著

出版社:アスキー・メディア・ワークス

ISBN:9784078689724 値段:570円(税別)

とある魔術の禁書目録(インデックス)〈22〉 (電撃文庫)/アスキーメディアワークス
¥599
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あらすじ:「右方のフィアンマが企てる『計画』が、ついに発動する。『ベツレヘムの星』。十字教信者だけでなく、全世界の人間を「すくう」と言われる計画とは……。」


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ついにロシア編完結!シリーズ最長でした。神の右席編というでっかいくくりで行くと、12巻からですので11巻もの間続いていたという事になります。今回で散りばめられていた伏線は「ある程度」回収できました。購入した当初は「いよいよ禁書自体が終わりかなぁ~。はぁ長かったな」と思っていました。ええ「いました」とも。


思えば、1巻で白い修道女のインデックスと出会い、上条当麻の物語は始まりました。1巻で記憶を失いながらも、それでも変わることなくインデックスを守っていく事を決めた上条。それ以降も問題を抱えて悩んでいる「誰か」がいればその「誰か」を守るために戦いました。その中で一方通行にであい、浜面仕上に出会い、数々の強敵と渡り合い、そして彼は最終決戦の場にいるわけです。「世界を救う」とかそんなデカイ事は考えているわけはなく、ただ「目の前の困っている誰かを助ける」という事が彼を突き動かしていたわけです。


今回、上条の前に立ちふさがった最大の壁であるフィアンマとの違いはおそらくこの「救う」というものの考え方にあったのではないかと思います。フィアンマはあまりにも「救済」というものを大きくとらえ過ぎていて、目の前の事が見えていなかった。逆に上条当麻は、効率は悪いかもしれないけれど、「目の前の救済」にこだわった。この二人のあいだには共通のものとして「誰かを救う」というのはあったと思うのです。ただそれが「地球」だったのか、「人間」だったのかというそういう違いのような気がしてなりません。


正義とはそれだけ、茫洋としたものでとりとめのない事なのだと思います。どっちも「正しい」。ただ視点が違うというだけで。こういうと中二臭いんですけどね。


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さて、今回で上条当麻はインデックスにずっと隠していた「秘密」を話すことになる。これはシリーズを通して読者である我々が「いつ打ち明けるんだよ」と気にしていた部分であったのですが、遂に打ち明けましたね。ここがある意味「シリーズ」として一区切りついたなという感じでもあります。


一方通行も打ち止めを救う事が出来ましたし、黒い翼もまるで彼の心が浄化された事を示すかのように白い翼へと変化したというのも印象的でした。ここには「魔術的な考え」あるいは「体系」が彼の中にインプットされたからとも取れるかもしれないのですが。


浜面と麦野の戦いも決着。最終的には「お前は、滝壺を選んだんだろうが!」という麦野の告白めいたようなそうでないようなセリフをぶつけられていて、僕的には「まぁ!」となりました。それを浜面は僕のように「まぁ!」となるのではなく、肯定し、それでも麦野も助けたいんだと面と向かって言い放つわけです。浜面のくせに超イケメンなわけです。初登場したSSではそこまでイケメンじゃなかったというのに…。


勿論、イギリス清教、ローマ正教、ロシア成教のそれぞれのトップにもきちんと見せ場がありますよ!特に今までただのロリコンだと思っていたワシリーサが強すぎてワロタ。


と、もう見せ場がこれでもか!という位にあります。


勿論、「伏線」もどうようにこれでもか!ってくらいあります。


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まず、上条当麻。この巻内で彼はフィアンマに右手を切断され、彼の持つ第3の腕に吸収されてしまう。しかしながら過去の作品でも同様の事がありましたね。その時は、彼の右手に「ドラゴン」のような何かが見えたとかなんとかありましたね…。


そして今回は、あの時以上の謎の現象が起こります。切断された上条当麻の右手に膨大なエネルギーが集まる。その間に上条当麻は誰かと話しているそぶりを見せる。その力を捨てるような発言をすると、切断されたはずの彼の右手が彼のもとに戻ってくる。その代償作用なのか、フィアンマが吸収したとされる右手からは力が失われてしまったらしく、フィアンマが欲しがっていた力を結局上条当麻から奪う事は出来なかったわけです。まるで、上条当麻にしかその力は扱えないかのように。それだけ彼の右手は特殊なものであるかのように。はたして、彼は誰と対話をしていたというのでしょうか。


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次に、「滝壺理后」について。え?浜面じゃなく、滝壺なの?えぇ、そうなんです。なんと彼女に「八番目」の可能性が浮上してきたんです。なんの「八番目」だよ!といわれるかもしれないのですけど、学園都市で「八番目」と言ったらアレしかないですよね?


そう、「レベル5」の8人目。彼女の能力はまだまだ成長する可能性があるようでその能力を育てあげれば、「誰かの誰かの能力を譲渡したり、逆に奪う」ことが可能になるというのです。能力者を育てる都市が「学園都市」というのであれば、それを個人で賄う事が出来る彼女の能力は正に「学園個人」。能力名には「おいおい」と突っ込みを入れたくなりますが、今までの常識を覆しかねない滝壺の能力。さらに学園都市はレベル5量産計画なるものを立てているようで、能力解析をした新手のスーツまで慎重。


これにより学園都市の軍は「レベル5」ではないのに「レベル5」の能力を個々人が有するという計画をあらわにしてきました。ある意味、「レベル5」ですら、「解析が済めば使い捨てる」という存在。もう黒い面があからさま過ぎますよね。これはあくまでも滝壺が能力を完成させるまでのつなぎのような側面もあって、彼女の能力はそんなスーツすらなくとも良いわけで…。


学園都市が浜面たちをあえて泳がせていた理由もどうもこの辺が理由らしいですなぁ。これから彼女らがどうなっていくのか。どうも先行きが明るくはまだなさそうですよね。


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また、アレイスターも遂に表舞台に登場せざるを得なくなりわずか700秒ですが、地上に姿をみせる。しかし、それを真っ先に補足した存在がいます。それがイギリス清教。指示をしていたのはそのトップである「ローラー=スチュアート」。彼女は学園都市のトップがアレイスター・クロウリーであることを確信。その上で彼女は「戦勝国である学園都市からむしり取るだけむしり取る」という算段をする。


彼女、そしてイギリス清教がこれからどのように学園都市と付き合っていくのか。まだまだ分かりません。


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SS2で出てきた「魔人」という単語。その「魔人」が本編にも関わるようになってきました。「魔人」=オッレルス。しかし、彼の口ぶりでは「オティヌス」という存在に「魔人」の座を奪われたみたいです。


彼は瀕死のフィアンマを助け出すわけですが、その真意は不明。彼が言うには「オシリスの時代」から「ホルス(クロウリー)の時代」を知るためらしいです。この「オシリスの時代」とか「ホルスの時代」とは何を意味しているのか。謎は深まるばかりです。


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人間たちの動向を見守る「エイワス」と「風斬氷華」。この二人もまた意見を対立させているようです。しかし基本は同種の存在。はたして、この齟齬がいずれ大きな何かを産むのか。「エイワス」としては人間のイレギュラーな行動に興味をそそられるらしいのですが…。アレイスターすらも上から目線で見ている「エイワス」という存在。彼とアレイスターの関係もこれから語られていく事になるのでしょうか。


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フィアンマの行動は危うく人類滅亡の瀬戸際まで来ていました。それを登場人物の一人一人が最後まで自分のなすべき事をしたおかげでそれを防ぐ事が出来ました。しかし、それは上条当麻の「死」をもって終結させたわけなのですが…。


次巻からは上条当麻が世界を救った「後」の話になります。世界はどのようになっているのか。そこら辺に注目しながら、次巻をお待ちください。


それでは、今回はここまで。


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次回は、Vシリーズです。


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おそらく、今年は次を含めてあと、5回だと思われます。

それでは、新年に向けてボンボン紹介していこうと思います。