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「魔剣天翔 Cockpit on knife edge」 森博嗣 著

出版社:講談社 ISBN:4062738945 値段:695円(税込)

魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge (講談社文庫)/講談社
¥730
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あらすじ:「アクロバット飛行中の二人乗り航空機。航空に浮ぶその完全密室で起こった殺人。エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣をめぐって、会場を訪れた保呂草と無料招待につられた阿漕荘の面々は不可思議な事件に巻き込まれてしまう。


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久々登場のVシリーズです。今回が事件としては結構大掛かりなもので、かなり楽しく読ませてもらいました。森さんの用意した密室が今回は飛行中の二人乗り航空機というんだから「どういうこと~?」と思わずその舞台を聞いただけでワクワクが止まりませんでした。


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今回は、航空機という事で、飛行中の描写が多かったわけですが、文章を読んでいると、「スカイ・クロラ」が脳裏をかすめます。おそらく後発の「スカイ・クロラ」の方が印象深いのは勿論、あちらの完成度が高いというのもあるのでしょうし、大抵の人は「スカイ・クロラ」=森博嗣というように「スカイ・クロラ」から知った人が多いためなのでしょう。しかし、「魔剣天翔」の描写を研ぎ澄ました結果「スカイ・クロラ」に行き着くというのが正しく、刊行当時は「スカイ・クロラ」を読んで「魔剣天翔」を思い出した人なんかもいるかもしれないですね。


それ位、本書でも飛行しているシーンの情景が浮かんでくるかの如く正確に描写されていますし、紅子さんの解説が所々入るので「だから、飛行機は空を飛べるんだ」というのがわかる。尾翼の役目だとか、航空機のどの部分が動くから空気抵抗が生まれるだとかね。普段はあまり気にもしない事、「飛行機なんて飛ぶものじゃん」と割り切っている部分。でもそこには確かな法則があり、力がある。どうやって飛んでるかなんて言うのは普段気にもしない。しかし、そこには「学問」に通じる何かがある。

いやぁ、不思議な感じですね。分からなくても良い。でもわかると楽しい。これが知的探求なんでしょうか。


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今回から、新キャラとして各務亜樹良(かがみあきら)が登場します。亜樹良というくらいだから「男」と思いがちですが、残念「女性」です。森さんらしい名前だけ見ると勘違いしそうな性別不詳キャラと言いますかね。


それから今回のキーとなる「エンジェル・マヌーヴァ」。これもここから先どこかでまたお目にするキーワードですので要チェック。


次作にも繋がるという事を考えるとその「エンジェル・マヌーヴァ」を所有している画家、関根朔太もキーマンですね。今回の物語の中核に位置するキャラでもありますし、次作にも名前が出てくるというので頭の片隅にあっても良いでしょう。


保呂草さんもここからドンドンときな臭い依頼を請け負ったりして、なかなかヘビーなことになりそうですね。今回も、犯人に仕立て上げられそうになる各務を助けてしまったが為に、厄介な立場に追いやられていきます。


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阿漕荘の面々で行くと、いつも飄々としている小鳥遊君がいつも以上に頑張る物語で、小鳥遊君ファンは期待していただきたい。ある意味、彼の生き方が決まった理由が今回少しだけ明かされますし。


紫子さんやへっ君は相変わらずでしたが、何故か飛行機に詳しすぎる紅子さん。「なんで、そこまで詳しいのですか?」と尋ねると、「昔付き合っていた人(ただし林さんではない)が飛行機に詳しかったから」とサラリと言っちゃう紅子さん。サラリと言って聞き逃してしまいがちになりますが、いやぁ、紅子さん、萌絵ちゃんとかとは違い、何人かの男性とお付き合いはあったんですねぇ。


しかし、へっ君がきいたからこそ紅子さんは答えたのでしょうが、聞き上手だなぁ、へっ君。彼の成長が楽しみですな。


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最高難易度と思われるこの事件のトリック。気付いてしまうと案外簡単なことかもしれない。しかし、気付かないと答えにはいきつかない。


という事で、久々のVシリーズの紹介でした。


次回の森作品は「堕ちていく僕たち」にでもしようかなぁ。シリーズ外作品です。

スカイ・クロラシリーズも来年は2作紹介したいですね。

Vシリーズはなんとか終わらせて、その次のシリーズへ繋げたいなぁ。


それでは、また次回。


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次回は、Dシリーズ。

全4巻にわたる物語の第1巻。

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