(1) 控訴人による選別

    控訴人による産業廃棄物の選別が手選別と磁力選別機により行われていることは、前記認定のとおりである。しかるところ、当審進行協議期日において見分された仲原選別場の選別の実態をみると、次のような問題点が認められる。

(甲192、206の1,2、214の1,2、答申控訴人代表者〈ただし一部〉)

   ア 残渣の取扱いについて

(ア) ベルトコンベアーにもせられた廃棄物は、フレコンバックから降ろされた廃棄物から粗選別で取り除かれて残ったもので、小さな廃棄物や廃棄物の破片の集号であり、木片・新建材の破片、石綿板の破片・塗料片・有機溶剤のくず、断熱材や吸音材の破片、繊維くず、畳くず、紙くず、漆喰くず、金属くず、ガラスの破片、生ゴミの破片、土砂などからなる建設混合廃棄物の残渣である。したがって、本来は管理型産業廃棄物として取り扱うべきものであり、控訴人も産業廃棄物所分業許可申請書においては、終末にピットを置き残渣を貯留し、管理型産業廃棄物として埋立処分を委託すると記載していた(甲215、216)。それにもかかわらず、控訴人は、現実には安定型産業廃棄物としてこれを埋立処分している(当審控訴人代表者)。

(イ) 控訴人代表者は、同人作成の陳述書(乙123)において、これを残渣ではなく、土や瓦礫であるとするが、これは当審進行協議期日における控訴人代表者の説明と明らかに異なり、信用できない。仮に、残渣ではなく、土や瓦礫をベルトコンベアーで選別しているのだとすれば、手選別の後、ベルトコンベアーで2度目の詳細な選別を行うという控訴人首長の選別方法自体が信用できないものとなる。

      また、控訴人は、行政当局の通知等によると、建設混合廃棄物から安定型産業廃棄物を選別(手、ふるい、風力、磁力、電気等を用いる方法により)し、熱しゃく減量を5%以下とした場合、当該廃棄物は安定型産業廃棄物として取り扱うことが可能となること(平成13年6月1日環境産第276号環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長通知=乙87)や、産業廃棄物を埋め立てる前に、最終処分場に搬入した産業廃棄物を展開して当該産業廃棄物への安定型産業廃棄物位階の廃棄物の付着又は混入のうむについて目視による検査を行い、その結果、安定型産業廃棄物以外の廃棄物の付着又は混入が認められる場合には、当該産業廃棄物を埋め立てないこととされていること(一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める省令=乙90)の反対解釈から、上記残渣を安定型産業廃棄物として埋立処分しても問題はないと主張する。

      しかしながら、上記の残存物は、もともとが前記のとおり、排出事業者によりほとんど分別されずに搬入された産業廃棄物から、目視による手選別により分別できる大きなものを取り除いただけのものであるから、石膏ボードや木材や石綿セメントのかけらや漏れだした有害物質等が多数含まれていると考えられるこの残渣を安定型産業廃棄物とすることはできないし、控訴人もそのように考えていたからこそ、当初は管理型産業廃棄物として埋立処分を委託することを計画していたはずである。したがって、控訴人の上記処理は、安全性に問題があるというほかない。

   イ 急性毒性物質等の取扱い

(ア) 実際に仲原選別場に持ち込まれた廃棄物の中には、①アスベスト含有塗材であるエマルアクリルタイル、②急性毒性物質であり、廃棄上の注意として、廃油と廃プラスチック類の混合物に相当し、処理は許可を受けた処理業者に委託する旨指示されているタキボンド#607、③急性毒性物質(皮膚への繰り返し接触は皮膚炎を起す危険瀬性があり、変異原性のおそれがある物質を含有している。)であり、環境に影響を与える恐れがあるとされ、容器やウエスなども廃棄物処理法に基づく焼却処理か、許可を受けた処理業者に委託する旨支持されているエポシール、④急性毒性を有するフタル酸系エステルを含有し、汚染容器・包装・空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去した後に処分する旨指示されているベルエースMS、⑤廃油と廃プラスチック類の混合物で、汚染容器・包装は内容物を完全に除いた後処分すると指示されているアイカエコエコボンド、⑥麻くずを含有し、内容物が漏れ出しているなんばん、⑦急性毒性を有する防カビ剤を含有し、70℃以下の引火性成分を含む混合物(特別管理型産廃)に分類され、空容器類を廃棄する時は、内容物を完全に除去した後に産業廃棄物として処理又は回収に回す旨指示されているセキスイシリコーンシーライト、⑧皮膚に炎症を起こす可能性があり、防カビ剤を含有し、使用後の空袋は管理型産業廃棄物となると注記されているのに、内容物が漏れだしているタイガーGLボンド、⑨石綿セメント円筒である浅野対価パイプ、⑩石膏ボード(平成18年7月の法改正により、石綿スレートや石綿含有の石膏ボードなどのあるベスト成形板については、収集・運搬にあたって破酔をしないこと、やむを得ず破酔又は切断が必要な場合には、散水により十分に湿潤化したうえ、積込みに必要な最小限度で破酔又は切断を行うこととなった。甲217)、⑪樹脂などが存在した。そして、上記のうち、①は空き缶が金属くずとして分別され、④は空袋が埋立物コンテナに、箱が密着不可分の小箱に分別され、⑤は内容物がまだ中に付着していると認められる容器が埋立物コンテナに分別され、⑥は内容物が漏れだしている状態のまま埋立物コンテナに分別され、⑦は口の周りに内容物が付着していると見られる容器が埋立物コンテナに分別され、⑨はケイカル板として分別されていた(甲221)。

      また、選別用の小箱の内側や外側には塗料状の付着物が確認でき、選別時に上記のような内容物が流れ出た可能性が認められたほか、廃プラスチックとして分別されたペットボトルの中には、内容物(ジュース類)が乾燥して内側にこびりついたと思われるものが現認できた。

(イ) 以上のような状況に関して、控訴人代表者は、答申本人尋問において、汚れたピットボトルは、安定型最終処分場へ埋め立てたり、中身が入っていたら償却したりするが、何が付着して汚れているのか、安定5品目以外のものが付着しているかどうかは確認していない旨、また、有害物質を含んだ化学物質が付着した容器については、中身が入っていれば安定5品目としては処理しないとするものの、ボンドの缶でも中身が若干入っていてボンドが乾いて固形化していた場合には廃プラスチックとして埋め立てる旨、それぞれ供述した。

      確かに、塗料かす、接着剤かす等も廃プラスチック類として例示され、厚生省の通知では、廃接着剤は固形状であれば廃プラスチック類であり、液状であれば廃油と廃プラスチック類の混合物であるとされている(乙120、121)。

      しかしながら、上記のとおり、毒性の強い有害物質を含有する接着剤等で、空容器についても廃棄上の注意が記載されているようなものについて、固形か液状化という区別だけで分別するのは問題であって、安全性についての認識が薄いないしは甘いといわざるを得ない。また、本件全証拠によっても、選別の際、作業員が接着剤かす等について固形化しているかどうかについて特に着目して確認しているような様子も窺えず、内容物が使いきられているようであれば、どれだけ残存物が容器に付着していようと埋立物コンテナに分別されているようであり、それぞれの接着剤等に支持されている廃棄上の注意は無視されている公算が高いといわざるを得ない。したがって、このような控訴人の処理は、安全性に問題があるといわざるを得ない。

   ウ ケイカル板に分別された木質ボード

     仲原選別場でケイカル板(ケイ酸カルシウムの板で安定5品目に属する。)に分別してあった物の中には木質系ボードである可能性があるものが混在していることが認められ、また、前記のとおり、石綿セメント円筒も混在していた。

   エ アスベストの取扱い

仲原選別場では、前記のとおりアスベストに関しては積替、保管ができるだけであり、選別したり、切断したりすることはできない(法の趣旨からすると、非飛散性アスベスト廃棄物は既に解体現場において選別を済ませるべきである。)が、実際には、他の廃棄物と一緒に持ち込まれ、すでに粉砕されているものが多く、またマニフェストに選別に丸印が記載されたものがあることから(甲222)、控訴人によって、選別処理(それもアスベスト作業用の防護マスクもせずに)が行われている恐れがある。

   オ 埋立物の粒径の大きさについて

埋立物の最大粒径は概ね15cm程度にすることが望ましいとされている(甲100)が、仲原選別場では、埋立地のコンテナに入っていた廃プラスチック類は、建設工事現場や解体工事現場から排出された時の状態のままで、長い板状のものではその切断片が1m以上の長さであったり、木工用ボンドの容器では30cm四方の大きさであったり、青い色の養生シートは広げられたままであったり、断熱材は1m四方以上の大きさのままであったりした。

(2) 以上によれば、前記認定の、控訴人が優良企業として表彰され、内住処分場において現在まで水質検査で有害物質が検出されたことがない(ただし、地下水音が高温であったことには注意を要する。)など有害物質排出について消極的に働く事情を考慮しても、排出事業者による選別はほとんど機能していないし、仲原選別場における控訴人の選別も不十分なものであるといわざるを得ず、これらの事情を総合すれば、控訴任意は、排出事業者から混在して持ち込まれる有害物質を含有する廃棄物を完全に選別除去することを期待することはできない。

    以上に認定、説示してきたことからすれば、このような選別不十分な作業廃棄物が本件処分場に埋め立てられれば、有害物質が発生する高度の蓋然性が一応立証されたといえるところ、控訴人において、本件処分場に有害物質が搬入されないことを確実に保障する客観的証拠があること、及び、そうした有害物質が本件処分場に反有されても施設外に流出することがないことについての立証に成功したとみることはできないから、本件処分場において、有害物質が発生することが高度の蓋然性をもって認められたというべきである。

 6 結論

以上のとおり、本件処分場が建設され、操業された場合に有害物質が発生す

る高度の蓋然性が認められるところ、前記認定のとおり、有害物質が発生すれば、被控訴人らの井戸や大峰浄水場からの水道水が汚染される高度の蓋然性も一応認められるところ、控訴人において、本件処分場から流出した有害物質が被控訴人らの井戸や大峰上水道からの水道水を汚染することがないとか、これを確実に防止する証拠があることについて、前同様、立証に成功したとはいえないから、結局、本件処分場が建設され、操業されることになれば、被控訴人らの井戸や大峰上水道からの水道水が汚染され、ひいては、これらを飲用する被控訴人らの生命、身体、健康に大きな被害をもたらす高度の蓋然性が認められるものというべきである。そして、このような被侵害利益の性質とその内容からして、控訴人の主張する受忍限度論が採用できないことは、前記1()で述べたとおりである。

 なお、控訴人は、本件処分場を完成させても、知事の使用前検査を受けてこれに合格しなければならないので、当然には使用や操業を開始するとは限らないから、その合格の前の時点で、使用、操業によって生ずるかもしれない被害を理由として、本件処分場の建設等の差止めを認める必要はない旨主張するけれども、本件のような施設を多額の費用をかけて建設をしたのちに(少なくとも控訴人の自発的意思で)使用、操業をしないことは通常想定することはできないし、控訴人が本件処分場を完成させた時点で使用、操業の差止めを求めた場合には、司法判断が下される前に使用、操業が開始される可能性がないとはいえず、かつ、使用や操業に伴い被害が発生してしまうと、被害の性質上その回復が容易でないことからすれば、上記の被害発生の高度の蓋然性が認められる限り、建設、使用および操業のいずれについてもその事前の差止めを認める必要があるというべきである。

 そうとすれば、被控訴人らの控訴人に対する人格権に基づく本件処分場の建設、使用及び操業の差止請求は理由がある。

 したがって、その余の点につき判断するまでもなく、原判決は相当で、本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

    福岡高等裁判所第2民事部

          

ウ 仲原選別場における選別作業の手順は次のとおりである。

(ア) 搬入

      排出事業所から搬入される廃棄物は、各現場を回って収集してきたユニックトラック(ユニック車)で搬入されたり、又は4トンのコンテナダンプに、袋詰めにされないままの状態か土嚢袋につめられた状態で搬入される。コンテナダンプは、1つの現場で1台にバラ積みあるいは土嚢袋につめた状態で積まれる。ユニックトラックは、複数の集積袋を混載することもある。

      ユニックトラックは、別紙3の展開場のBの位置に停止し、フレコンバックはユニックを使用して別紙3のAの位置に上下逆さまに降ろされ、廃棄物が取り出される。

(イ) 手選別

      降ろされた廃棄物は、その場で16人から17人の作業員の目視による手作業で分けられ、種類毎に別紙3の⑤の位置のコンテナ(約1㎥。以下「小箱」という。)に集められる。小箱がいっぱいになると、紙くず、木くず、金属くず、廃プラスチック類、可燃物、埋立物など、廃棄物の種類ごとにそれぞれの集積場所(コンテナ)に移される。

      選別の手順は、まずテレビや蛍光灯などの家電製品を取り出し、同パイプ、段ボール、合金、バッテリー、銅線、塩ビパイプ、アルミ缶、ペットボトル、コンクリートくず、アルミくず(ケイカル板)、タイヤ、金属くず、木くず等の再生可能なものや有価物を種類毎に取り出す(金属くずは金属を扱う業者にリサイクルのため売却される。)。同時に可燃物、草くず、木くず、廃プラスチック類、たたみ、クロス、その他の可燃物などの焼却できる物を種類ごとに取り出す。

      内容物の付着したプラスチック容器や袋は主に可燃物、汚れたペットボトルや間、ビニール、グラスファイバーなどは埋立物(安定型)として分けられる。

      小箱には複数の現場からの廃棄物が種類ごとに分別されて入ることになる。手選別で小箱に取り分けた後の残渣は、1つの小箱にまとめ、その後ベルトコンベアーに流し、再度選別する。

(ウ) ベルトコンベアーと磁力選別機による選別

      手選別後の残渣を集めた小箱は、フォークリグとでホッパー前に搬送され、少量ずつベルトコンベアーを使用してホッパーに移され、選別用ベルとコンベアーに流される。1つの小箱に入った廃棄物は、3回前後に分けて流される。ホッパーに廃棄物を投入する際、粉塵が舞い上がれば、ベルトコンベアーに設置された比較的小さな噴霧器を使用して水をかける。

      選別用ベルトコンベアーの両脇に作業員が10人ほど並び、数センチメートルの厚さで流れてくる廃棄物の中から、木くず、紙くずなどの管理型品目を取り出し、さらに廃プラスチック類やがれき類を取り出すとともに、廃棄物の中を探りながら可燃物などを拾い出していく。先頭の廃棄物が選別用ベルトコンベアーの橋まで来て、廃棄物がコンベアーいっぱいに広がると、いったんベルトコンベアーは止められ、もう一度廃棄物を拡販しながら目視で確認される。

      こうした確認作業が終わると、ベルトコンベアーは再度動かされ、コンベアーの最終端に取り付けられた磁力選別機で比較的低速で進むコンベアー上の廃棄物の中から鉄くず等(釘類等小さなもの)の磁力に吸着される物の有価物が取り出される。コンベアー上に残った廃棄物は、小箱の中に集められ、埋立物として保管され、安定型最終処分場へ搬出される。

(エ) 保管

      小箱に分けられる廃棄物は、種類ごとに決められた大箱(大型のコンテナや鉄の箱)にフォークリフトで運ばれ、移される。石綿含有廃棄物や石膏ボード、家電製品や蛍光灯(管球)等や管理型処分が必要な廃棄物は、本判決別紙のCの倉庫内の保管場所にそれぞれ決められたフレコンバックとコンテナに保管される。銅パイプ、段ボール、合金、バッテリー、銅線、塩ビパイプ、アルミ缶、ペットボトル、コンクリートくず、アルミくず、ガラスくず、(ケイカル板)、タイヤ、金属くず、木くず(再利用物)、草くず、木くず、廃プラスチック類、たたみ、クロス、可燃物、埋立物などそれぞれ決められた場所に大箱やフレコンバックのほか、コンテナでも保管される。

(オ) 搬出

      大箱のほか、コンテナにも分けられた廃棄物は、再利用物はリサイクル業者へ、可燃物は焼却場へ、埋立物は安定型最終処分場だけでなく、管理型最終処分場へも搬出される。

(以上につき、甲192、206の1,2,214の1,2、乙85、106,108、当番控訴人代表者)

   エ 控訴人は、本件処分場と同じ安定型最終処分場である内住処分場でこれまで廃棄物処理を行ってきたが、そこでの平成6年、7年、10年、12年、14年ないし16年の水質検査等の検査結果では、国の定める基準以上の有害物質が検出されたことはなかった。

(乙22、25、26、38、39、42、43、67、86の14、110、111)

     ただし、平成17年、18年は、福岡県の立入検査時には観測井戸に水が全く溜まっておらず、浸透水採取口から水が出ず、下流地下水の採水も水がないためできなかった。福岡県は、浸透水、地下水が検査できない状況は維持管理ができていないことになるので、指導書を出すか検討することとなった。              (甲189の16、212)

     平成19年は、別の場所に深井戸を掘って浸出液を水質検査したが、検査結果では、国の定める基準以上の有害物質は検出されなかった。ただし、気温16.5℃に対し、水温は27.6℃及び31.7℃と地下水音としては高温であった。               (乙110~112)

     また、控訴人は、平成9年11月の福岡県による内住処分場の立入検査では、解体物を搬入したり、一部木くずが混入していたため、木くずの除去を指導された。さらに、平成10年9月には、埋立地上部の数年前に生めて覆土した地面にひび割れがあり、そこから硫化水素様の臭気が発生しているとして、調査と対策の報告を求められたが、行政処分はなかった。

(甲207、208、乙39、当審控訴人代表者)

   オ 控訴人は、平成15年10月15日、内住処分場及び仲原選別場透の登録組織における産業廃棄物の廃棄物処理事業及びリサイクル活動並びに解体工事業について、ISO14001環境マネジメントシステムの認証を取得した。また、平成10年には、福岡県産業廃棄物協会から優良企業として表彰された。                 (乙68、69)

     控訴人は、昭和63年からその所有する新宮中間処理上に関して地域住民と鉱害防止協定を締結し、毎年2回定期総会を開いて住民に焼却炉排ガスのばい煙等の測定結果やばいじん・焼却灰のダイオキシン類測定の結果等を報告してきた。平成19年、20年の検査結果では、国の基準を超える有害物質は検出されなかった、平成20年には、控訴人代表者が社団法人全国産業廃棄物連合会から地方功労者として表彰されている。

(乙125~131〈各枝番を含む〉)

(1) 排出事業者による選別

    起訴人は、排出事業者がまず産業界器物を処理基準に従って処理すべき義務を負うから、基本的に安定5品目以外の廃棄物は持ち込まれないと主張する。しかし、当審進行協議期日における見分の結果によれば、仲原選別場に排出事業者から持ち込まれる廃棄物中には、木材、紙くず、繊維くず、有機溶剤又はその容器祷、石膏ボード、電気製品、新聞紙やペットボトルなどの一般の廃棄物が相当量混入していることは明らかであり(甲192,206の1,2、214の1,2)、そのほか、石綿含有廃棄物も持ち込まれている(甲222)。また、それゆえに控訴人は仲原選別場での選別処理を余儀なくされているのである。したがって、排出事業者による選別は、ほとんど機能していないに等しく、この点は本件処分場の安全性には全く寄与していないと認められる。

    控訴人代表者は、当審本人尋問において、排出事業者による選別について、適正なところが多いと思う旨供述するけれども、状況認識がきわめて甘いといわざるを得ない。結局のところ、控訴人代表者も、現実には産業廃棄物のほか一般廃棄物も、また安定5品目だけではなくそれ以外のものが、すなわち、あらゆる種類のものが混淆して仲原選別場に運ばれてきていて、安定5品目の選別が適性かつ十分に行われるかどうかは、もっぱら控訴人自らによる選別にかかっていることを認めるに至っている。

(2) 控訴人による選別

    控訴人による産業廃棄物の選別が手選別と磁力選別機により行われていることは、前記認定のとおりである。しかるところ、当審進行協議期日において見分された仲原選別場の選別の実態をみると、次のような問題点が認められる。

(甲192、206の1,2、214の1,2、答申控訴人代表者〈ただし一部〉)

   

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イ これに対し、控訴人は、川崎町においては、現在その上水道施設の普及率は99%であり(乙17)、被控訴人らが実際に井戸水を使用しているかどうか疑問があると主張し、井戸の蓋が閉まっていたり、電気のコンセントが抜けているとの写真を提出している(乙77)けれども、井戸水が汚れないように井戸の蓋を閉めるのは通常であることや、控訴人が指摘する電気のコンセントは井戸とは無関係であること(甲151)から、上記認定を覆すに足りない。

(1) 被控訴らの井戸の汚染

    前記認定のとおり、被控訴人E、同G及び同Lを除く被控訴人らは、本件予定地の付近に居住し、井戸水を飲料水又は生活用水として使用している。

    ところで、採鉱学等に詳しい九州大学名誉教授森祐行によると、地下水の移動については次のようにいわれていて(甲144)、これに反する証拠はない。すなわち、

地下水面以下の狭義の地下水は、土の粒子の間がすべて水で満たされている

飽和状態で存在しており、この飽和地下水は、水頭の大きいほうから小さい方へ緩やかに異動する。したがって、本件処分場地下水位(水頭)が被控訴人らの井戸の地下水位(水頭)に比べて大きければ、本件処分場地下の地下水は被控訴人らの井戸に向かって移動することとなり、それは谷を越えて地下水位が等しくなるようにゆっくりと水位が上昇することになる。また、地下水位は常に変動しており、雨が降れば地中の水の量が増え、飽和水面(地下水位)は上昇し、雨がなくて乾燥すれば、段々と飽和水面(地下水位)は加工する。したがって、地下水位(水頭)の大小による地下水の移動は固定的なものではなく、雨の量などによって常に変動する可能性がある。そして、岩石、砂、土の構成は様々であって均一とはいえず、岩盤には亀裂や節理が発生しているし、地層には断層作用も生じる。そのため、水は水頭が減少する方向に移動するが、これは地層の傾斜方向と一致することもしないこともある。また、地下水は、地下の圧力の作用でさまざまな動きをする。さらに、毛細管現象により、飽和部分の水位を超えて水が不飽和部分に上昇することもある。

    以上のとおり、地下水の動きは予想ができず、少なくとも被控訴人中原春夫、同江藤和利、同岩丸博重の井戸の深さは、本件予定地よりも低い場所にあるし、(甲141)、本件予定地付近の地層の傾斜は東であるとしても、断層や坑道跡地等の存在の影響があると考えられるから、被控訴人らは、仮に本件処分場から有害物質に汚染された水が地下に染み込んだ場合にはいずれも被害を受けるおそれがあると認められる。

    控訴人は、本件予定地と被控訴人杉本利雄宅の間には高低差約20mほどの谷があり、その谷底を川が流れているので、本件予定地地下の飽和地下水は、谷から被控訴人杉本利雄宅に移動することはないと主張し、その旨の意見書を提出する(乙76)。しかし、前記認定のとおり、本件予定地周辺の地下に坑道や湧水などが存在し、複雑な構造となっていることや水頭は常に変動する可能性があることなどからすれば、単に表面上の地形のみから本件処分場の浸出水が被控訴人杉本利雄宅に影響しないとは認められない。したがって、控訴人の上記主張は採用できない。

(3) 大峰浄水場の深井戸の汚染

    前記認定のとおり、被控訴人E、同G及び同Lは、大峰浄水場からの水道水を飲料水又は生活用水として使用している。

    大峰浄水場は、本件予定地の北やや東側に直線距離約1500mの場所にあるところ、本件予定地の付近は、東側に地層が傾斜しており、かつ、その地下には坑道跡等が、同坑道が深部のため盤圧で崩落しているにせよ、あるいは浅所で未だ空洞のままであるにせよ、存在していることに加えて、断層も存在していることからして、一体となった堆積層とは異なり、間隔がある分、水が浸透しやすい状態であることは否定できず、本件予定地付近の地下水が大峰浄水場において取水している深井戸に流入しやすい位置関係及び地形状況となっている。(甲5、38、61、64、115)。したがって、本件処分場からの有害物質によって汚染された水が地下に染み込んだ場合を想定すると、大峰浄水場からの水道水も汚染される可能性が高いといえる。

    なお、大峰浄水場は、前記認定のとおり、現在、深井戸からの取水を休止しているけれども、非常時、渇水期などには深井戸から取水して各戸に給水する可能性がないわけではないし、そのために点検管理をしているというのであるから、大峰浄水場からの水道水を使用している上記被控訴人らも本件処分場による水の汚染の影響を受けるものと認められる。

 5 有害物質発生の蓋然性

(1) 被控訴人らの井戸の使用

    後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

ア 控訴人は、前記基礎となる事実(1)イのとおり、福岡県嘉穂郡に安定型最終処分場である内住処分場を設置し、昭和62年8月ごろから稼動させているが、その埋立が限界に近づいている(控訴人代表者によれば、平成20年3月時点でほぼ埋立が完了している状況になり、今後、同処分場を最終処分場として使用するつもりはないという〈=乙114。)ことから、本件処分場の建設を急いでいる実情にある。また、控訴人は、昭和63年12月に、同県糟屋郡新宮町に中間処理施設として焼却施設と破砕施設(以下「新宮中間処理場」という。)を設置したほか、同郡粕屋町大字仲原字川崎1774番地、1779番6に廃棄物の積替、保管場所を所有していたが、これは平成8年から選別のための中間処理施設(仲原選別所)となった。(甲1の13,58,1218,2023、111、187、188の各

16、215、乙11、12、15の1,2、40の15、70)

イ 控訴人は、建設廃棄物も取り扱っているものの、その廃棄物については、一般の建築物を解体あるいは新築する際の廃棄物である安定5品目以外のあらゆる物(例えば、しっくい、家電製品、塗装、畳、新建材、壁土泥、モルタル付木材、湿気とり、スレート、廃靴、アスベスト、電気配線、絨毯、電話機、バッテリー、電池、カーテン、シロアリ防除剤付コンクリート、ブラインド、雨どい、カセット、ビデオテープ、防音材、流し台、風呂桶、壁紙、電球、蛍光灯、家具、断熱材、殺虫剤等)が混入しやすいため、廃棄物の中から安定5品目を取り出し、その他の廃棄物については中間処理に回すか、あるいは管理型・遮断型処分場で処理する必要がある。

     控訴人は、他の産業廃棄物処理場において現に実行している安定5品目の選別方法として、① 収集・運搬した廃棄物をすべて仲原選別場に搬入し、② 搬入に際し「マニフェスト」(積荷目録制に係る産業廃棄物管理票)の記載と搬入する廃棄物の照合を実行し、③ 仲原選別場において、従業員の「目視」によって廃棄物の選別を行っている。

     また、控訴人は、福岡地方裁判所田川支部の本件処分場建設差止めの仮処分決定(同庁平成8年()第25号事件ほか)後、仲原選別場について約500万円の費用をかけて改装し、ベルトコンベアーと金属選別用の磁力選別機を購入すると共に、保管場所についても段ボールや木くず類毎に保管ヤードを設けて廃棄物が互いに混入することがないようにし、選別作業において、できる限り有害物質が混入しないようにしている。

(以上につき、甲65の113、67の111、69、71の2

          73~75、80、87、99、110~115、196~205、乙15の1,2、21、40の15、41、105~109、113、114、当番での控訴人代表者)