(1) 控訴人による選別
控訴人による産業廃棄物の選別が手選別と磁力選別機により行われていることは、前記認定のとおりである。しかるところ、当審進行協議期日において見分された仲原選別場の選別の実態をみると、次のような問題点が認められる。
(甲192、206の1,2、214の1,2、答申控訴人代表者〈ただし一部〉)
ア 残渣の取扱いについて
(ア) ベルトコンベアーにもせられた廃棄物は、フレコンバックから降ろされた廃棄物から粗選別で取り除かれて残ったもので、小さな廃棄物や廃棄物の破片の集号であり、木片・新建材の破片、石綿板の破片・塗料片・有機溶剤のくず、断熱材や吸音材の破片、繊維くず、畳くず、紙くず、漆喰くず、金属くず、ガラスの破片、生ゴミの破片、土砂などからなる建設混合廃棄物の残渣である。したがって、本来は管理型産業廃棄物として取り扱うべきものであり、控訴人も産業廃棄物所分業許可申請書においては、終末にピットを置き残渣を貯留し、管理型産業廃棄物として埋立処分を委託すると記載していた(甲215、216)。それにもかかわらず、控訴人は、現実には安定型産業廃棄物としてこれを埋立処分している(当審控訴人代表者)。
(イ) 控訴人代表者は、同人作成の陳述書(乙123)において、これを残渣ではなく、土や瓦礫であるとするが、これは当審進行協議期日における控訴人代表者の説明と明らかに異なり、信用できない。仮に、残渣ではなく、土や瓦礫をベルトコンベアーで選別しているのだとすれば、手選別の後、ベルトコンベアーで2度目の詳細な選別を行うという控訴人首長の選別方法自体が信用できないものとなる。
また、控訴人は、行政当局の通知等によると、建設混合廃棄物から安定型産業廃棄物を選別(手、ふるい、風力、磁力、電気等を用いる方法により)し、熱しゃく減量を5%以下とした場合、当該廃棄物は安定型産業廃棄物として取り扱うことが可能となること(平成13年6月1日環境産第276号環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長通知=乙87)や、産業廃棄物を埋め立てる前に、最終処分場に搬入した産業廃棄物を展開して当該産業廃棄物への安定型産業廃棄物位階の廃棄物の付着又は混入のうむについて目視による検査を行い、その結果、安定型産業廃棄物以外の廃棄物の付着又は混入が認められる場合には、当該産業廃棄物を埋め立てないこととされていること(一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める省令=乙90)の反対解釈から、上記残渣を安定型産業廃棄物として埋立処分しても問題はないと主張する。
しかしながら、上記の残存物は、もともとが前記のとおり、排出事業者によりほとんど分別されずに搬入された産業廃棄物から、目視による手選別により分別できる大きなものを取り除いただけのものであるから、石膏ボードや木材や石綿セメントのかけらや漏れだした有害物質等が多数含まれていると考えられるこの残渣を安定型産業廃棄物とすることはできないし、控訴人もそのように考えていたからこそ、当初は管理型産業廃棄物として埋立処分を委託することを計画していたはずである。したがって、控訴人の上記処理は、安全性に問題があるというほかない。
イ 急性毒性物質等の取扱い
(ア) 実際に仲原選別場に持ち込まれた廃棄物の中には、①アスベスト含有塗材であるエマルアクリルタイル、②急性毒性物質であり、廃棄上の注意として、廃油と廃プラスチック類の混合物に相当し、処理は許可を受けた処理業者に委託する旨指示されているタキボンド#607、③急性毒性物質(皮膚への繰り返し接触は皮膚炎を起す危険瀬性があり、変異原性のおそれがある物質を含有している。)であり、環境に影響を与える恐れがあるとされ、容器やウエスなども廃棄物処理法に基づく焼却処理か、許可を受けた処理業者に委託する旨支持されているエポシール、④急性毒性を有するフタル酸系エステルを含有し、汚染容器・包装・空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去した後に処分する旨指示されているベルエースMS、⑤廃油と廃プラスチック類の混合物で、汚染容器・包装は内容物を完全に除いた後処分すると指示されているアイカエコエコボンド、⑥麻くずを含有し、内容物が漏れ出しているなんばん、⑦急性毒性を有する防カビ剤を含有し、70℃以下の引火性成分を含む混合物(特別管理型産廃)に分類され、空容器類を廃棄する時は、内容物を完全に除去した後に産業廃棄物として処理又は回収に回す旨指示されているセキスイシリコーンシーライト、⑧皮膚に炎症を起こす可能性があり、防カビ剤を含有し、使用後の空袋は管理型産業廃棄物となると注記されているのに、内容物が漏れだしているタイガーGLボンド、⑨石綿セメント円筒である浅野対価パイプ、⑩石膏ボード(平成18年7月の法改正により、石綿スレートや石綿含有の石膏ボードなどのあるベスト成形板については、収集・運搬にあたって破酔をしないこと、やむを得ず破酔又は切断が必要な場合には、散水により十分に湿潤化したうえ、積込みに必要な最小限度で破酔又は切断を行うこととなった。甲217)、⑪樹脂などが存在した。そして、上記のうち、①は空き缶が金属くずとして分別され、④は空袋が埋立物コンテナに、箱が密着不可分の小箱に分別され、⑤は内容物がまだ中に付着していると認められる容器が埋立物コンテナに分別され、⑥は内容物が漏れだしている状態のまま埋立物コンテナに分別され、⑦は口の周りに内容物が付着していると見られる容器が埋立物コンテナに分別され、⑨はケイカル板として分別されていた(甲221)。
また、選別用の小箱の内側や外側には塗料状の付着物が確認でき、選別時に上記のような内容物が流れ出た可能性が認められたほか、廃プラスチックとして分別されたペットボトルの中には、内容物(ジュース類)が乾燥して内側にこびりついたと思われるものが現認できた。
(イ) 以上のような状況に関して、控訴人代表者は、答申本人尋問において、汚れたピットボトルは、安定型最終処分場へ埋め立てたり、中身が入っていたら償却したりするが、何が付着して汚れているのか、安定5品目以外のものが付着しているかどうかは確認していない旨、また、有害物質を含んだ化学物質が付着した容器については、中身が入っていれば安定5品目としては処理しないとするものの、ボンドの缶でも中身が若干入っていてボンドが乾いて固形化していた場合には廃プラスチックとして埋め立てる旨、それぞれ供述した。
確かに、塗料かす、接着剤かす等も廃プラスチック類として例示され、厚生省の通知では、廃接着剤は固形状であれば廃プラスチック類であり、液状であれば廃油と廃プラスチック類の混合物であるとされている(乙120、121)。
しかしながら、上記のとおり、毒性の強い有害物質を含有する接着剤等で、空容器についても廃棄上の注意が記載されているようなものについて、固形か液状化という区別だけで分別するのは問題であって、安全性についての認識が薄いないしは甘いといわざるを得ない。また、本件全証拠によっても、選別の際、作業員が接着剤かす等について固形化しているかどうかについて特に着目して確認しているような様子も窺えず、内容物が使いきられているようであれば、どれだけ残存物が容器に付着していようと埋立物コンテナに分別されているようであり、それぞれの接着剤等に支持されている廃棄上の注意は無視されている公算が高いといわざるを得ない。したがって、このような控訴人の処理は、安全性に問題があるといわざるを得ない。
ウ ケイカル板に分別された木質ボード
仲原選別場でケイカル板(ケイ酸カルシウムの板で安定5品目に属する。)に分別してあった物の中には木質系ボードである可能性があるものが混在していることが認められ、また、前記のとおり、石綿セメント円筒も混在していた。
エ アスベストの取扱い
仲原選別場では、前記のとおりアスベストに関しては積替、保管ができるだけであり、選別したり、切断したりすることはできない(法の趣旨からすると、非飛散性アスベスト廃棄物は既に解体現場において選別を済ませるべきである。)が、実際には、他の廃棄物と一緒に持ち込まれ、すでに粉砕されているものが多く、またマニフェストに選別に丸印が記載されたものがあることから(甲222)、控訴人によって、選別処理(それもアスベスト作業用の防護マスクもせずに)が行われている恐れがある。
オ 埋立物の粒径の大きさについて
埋立物の最大粒径は概ね15cm程度にすることが望ましいとされている(甲100)が、仲原選別場では、埋立地のコンテナに入っていた廃プラスチック類は、建設工事現場や解体工事現場から排出された時の状態のままで、長い板状のものではその切断片が1m以上の長さであったり、木工用ボンドの容器では30cm四方の大きさであったり、青い色の養生シートは広げられたままであったり、断熱材は1m四方以上の大きさのままであったりした。
(2) 以上によれば、前記認定の、控訴人が優良企業として表彰され、内住処分場において現在まで水質検査で有害物質が検出されたことがない(ただし、地下水音が高温であったことには注意を要する。)など有害物質排出について消極的に働く事情を考慮しても、排出事業者による選別はほとんど機能していないし、仲原選別場における控訴人の選別も不十分なものであるといわざるを得ず、これらの事情を総合すれば、控訴任意は、排出事業者から混在して持ち込まれる有害物質を含有する廃棄物を完全に選別除去することを期待することはできない。
以上に認定、説示してきたことからすれば、このような選別不十分な作業廃棄物が本件処分場に埋め立てられれば、有害物質が発生する高度の蓋然性が一応立証されたといえるところ、控訴人において、本件処分場に有害物質が搬入されないことを確実に保障する客観的証拠があること、及び、そうした有害物質が本件処分場に反有されても施設外に流出することがないことについての立証に成功したとみることはできないから、本件処分場において、有害物質が発生することが高度の蓋然性をもって認められたというべきである。
6 結論
以上のとおり、本件処分場が建設され、操業された場合に有害物質が発生す
る高度の蓋然性が認められるところ、前記認定のとおり、有害物質が発生すれば、被控訴人らの井戸や大峰浄水場からの水道水が汚染される高度の蓋然性も一応認められるところ、控訴人において、本件処分場から流出した有害物質が被控訴人らの井戸や大峰上水道からの水道水を汚染することがないとか、これを確実に防止する証拠があることについて、前同様、立証に成功したとはいえないから、結局、本件処分場が建設され、操業されることになれば、被控訴人らの井戸や大峰上水道からの水道水が汚染され、ひいては、これらを飲用する被控訴人らの生命、身体、健康に大きな被害をもたらす高度の蓋然性が認められるものというべきである。そして、このような被侵害利益の性質とその内容からして、控訴人の主張する受忍限度論が採用できないことは、前記1(②)で述べたとおりである。
なお、控訴人は、本件処分場を完成させても、知事の使用前検査を受けてこれに合格しなければならないので、当然には使用や操業を開始するとは限らないから、その合格の前の時点で、使用、操業によって生ずるかもしれない被害を理由として、本件処分場の建設等の差止めを認める必要はない旨主張するけれども、本件のような施設を多額の費用をかけて建設をしたのちに(少なくとも控訴人の自発的意思で)使用、操業をしないことは通常想定することはできないし、控訴人が本件処分場を完成させた時点で使用、操業の差止めを求めた場合には、司法判断が下される前に使用、操業が開始される可能性がないとはいえず、かつ、使用や操業に伴い被害が発生してしまうと、被害の性質上その回復が容易でないことからすれば、上記の被害発生の高度の蓋然性が認められる限り、建設、使用および操業のいずれについてもその事前の差止めを認める必要があるというべきである。
そうとすれば、被控訴人らの控訴人に対する人格権に基づく本件処分場の建設、使用及び操業の差止請求は理由がある。
したがって、その余の点につき判断するまでもなく、原判決は相当で、本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
福岡高等裁判所第2民事部