1998年3月26日福岡地裁田川支部の住民勝訴の仮処分決定が出された後、3月31日に、住民会議は県知事に許可撤回の要請行動を行いました。はじめてバスいっぱいの住民が県庁に行ったのでした。要請文の内容は以下のとうりです。
福岡県議会への裁判の報告会開催のお願い
平成10年3月30日
福岡県知事麻生渡殿
川崎町大ケ原産業廃棄物処分場反対住民会議
代表委員
中野角男 中村信行 中嶋次一郎 江藤巌 久保山隆俊
藤井美成 岩本勉 野仲稲親 中村智 杉本利雄
桜の花もすっかり咲き揃い、春の訪れ喜びを実感できる今日この頃ですが、貴職におきましては、一層の御健勝のこと、御慶び申し上げます。また、県民の生活の向上と県政の発展の為の日夜を分かたぬ御尽力に心よりの敬意を表するものです。
川崎町大ケ原産業廃棄物処分場反対住民会議は、田川郡川崎町大ケ原(だいがはら)に福岡産業開発株式 会社が 計画し、福岡県知事が平成7年8月1日に許可した産業廃棄物処分場建設反対の運動を続け てまいりました。その川崎町大ケ原産業廃棄物処分場反対住民会議とは、大ケ原に産業廃棄物処分場反対という願いを実現するためにつくられた組織です。会員約1000名、最高決議機関として理事会をもち、理事は73名で構成しています。会の顧問として、手嶋秀昭県議、小田幸男川崎町長、西本恵川崎町議会議長、中野農業委員会会長に就任してもらっています。川崎町大ケ原産業廃棄物処分場反対住民会議は、産業廃棄物処分場反対を住民の願いを実現するために、川崎町民の有権者の過半数以上9866名の反対署名を集め、川崎町議会は大ケ原産業廃棄物処分場設置反対の請願を採択し、町、議会と共に手を携え、運動を進めてきました。
さて、一昨年の9月に福岡産業開発株式会社が、住民を無視して産業廃棄物処分場工事を強行したのに対して、私たち川崎町大ケ原産業廃棄物処分場反対住民会議は、工事禁止の仮処分を福岡地裁田川支部に提訴しました。そして、この3月26日にその決定が出されました。その決定は、住民の訴えを全面的に認め「産業廃棄物処分場の建設、使用及び操業してはならない」とする仮処分決定を下しました。
決定の骨子は、次の5点にまとめることが出来ます。
①処分場からの有害物質漏出の可能性
★産業廃棄物の安定五品目(廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず、陶磁器くず、建設廃材であり、法律上は安全といわれている)の中にも、他の汚染物質が残存、付着している。また、イオン化傾向の高い金属は、溶出する可能性がある。細菌が金属を溶かす可能性がある。このように、安定五品目であ
っても、環境を汚染し、水質を汚染させる危険性を否定できない。
★プラスチック、ゴムに含まれている添加剤が溶出し、水質汚染等を引き起こす可能性がある。
★安定型処分場には、安定五品目に混入しないはずの有害物質が交じっている例があり、これを分別することはできない。そして、遮水工の施されていない安定型の処分場では、有害物質が流れだし、水質の汚染が発生した実例が多い。
★福岡産業開発株式会社は「五品目以外のものが交じらないように、分別している」と主張するが、安定五品目以外のものが交じりやすい建設廃材の中から、その他の廃棄物を取り出すことは、分別処理の専門的知識、経験、陣容、処理態勢及び採算性等からみて、実効性についての疑念を払拭することはできない。
★現行法下で福岡県知事の設置許可を得ていることだけをもって、具体的な安全性が確保されているとはいえない。
②雨水、湧水及び排水について
★処分場にふった雨水や湧き水は、一部は透水管を通って調整池に流れでるが、その大半は、地下に浸透し、本件処分場は、それを遮断するような構造にはなっていない。このため、地下に炭鉱の坑道が走り、地盤沈下がおき、地層にズレができる。断層が存在しているなどの地下構造と地質の特質に照らすと、水は、地下に浸透する可能性がある。
★この予定地は、地下に北東方向に地層が傾斜し、坑道があり、石炭層が空洞のまま放置されているために、雨水、湧水は、処分場から北側約1.5キロメートルにある大峰浄水場でくみあげている深井戸に流れこみやすい構造になっている。
★したがって、処分場に混入した有害物資を含んだ浸出水が、地下に浸透したり、野呂ケ池にながれこんだり、近くの井戸及び大峰浄水場の水源を汚染する可能性がある。
③人格権侵害の可能性
★人は、生きていくためには、飲料水と生活用水の確保が必要である。そして、その水が汚染されていれば、長期間飲用することで、生命、身体の完全を害することは明らかであり、生活用水で不快感等の精神的苦痛を味わうことになる。したがって、人格権としての身体権の一環として、豊かな水を確保する権利がある。
★証明の公平負担の見地から、住民が、この権利侵害の可能性を立証した以上、業者は、権利侵害がおきないということを立証しなければならない。それができなければ、権利侵害が起きる高度の蓋然性の存在が認められるものとする。
★債権者の住民の中には、水道水と井戸水を使用しているが、井戸水が有害物資で汚染され、それが使用できなくなったとして、水道水だけを使用しなければならない、いわれはない。
④権利侵害の高度の蓋然性について
★以上のことから、債権者は、安全で、十分な飲料水と生活用水の確保という人格権の侵害として、 受忍限度を超えるものと判断し、人格権に基づく被保全権利の存在を認める。
⑤保全の必要性について
★本件処分場で安定五品目の選別方法及び排水対策では、水質汚染の防護策は、十全を期しているとはいい難い。選別した上で持ち込まれた有害物質は、雨水、湧水によって浸出し、地下に浸透し、更に野呂ケ池に流入して、水質汚染を惹起する危険性が極めて高く、処分場の操業で、いったん権利侵害が生じた場合、福岡産業開発株式会社には、原状回復の技術力、資力はなく、この汚染を除去できず、その侵害が永続的に継続するおそれがある。
この決定は、「安定型の産業廃棄物処分場からは必ず有害物質が流出する。」「有害物質は、水質汚染を引き起こし、飲料水や生活用水を汚染することで人格権としての身体権を侵害する」としているのです。「安定型の産業廃棄物処分場が安全ではない」ことを、裁判所が判断したものです。
とくに、「現行法下で福岡県知事所定の設置許可を得ていることだけをもって、その具体的安全性が確保されているということはできない」と仮処分決定が述べていることは、福岡県知事による「産業廃棄物処分場の許可申請書」の審査がズサンなことを意味しています。 安定型の産業廃棄物処分場の具体的な安全性について、福岡産業開発株式会社と福岡県の調査並びに審査が形式的で、実効性がなかったため、安全性についての調査を住民自らが、多額の費用と生活と仕事を犠牲にして行いました。裁判所は、住民の調査結果を認める決定を下したのです。その意味でも、産業廃棄物処分場の安全性についての審査を怠った県の責任の重さを指摘せざるをえません。
私達は、県知事におかれましては、この仮処分決定を受けて、大ヶ原の産業廃棄物処分場のきょ 化撤回を要請するものです。