ラオスからの帰途より | 写真家・小澤太一の『logbook』

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小澤太一のなんでもない毎日の記録集

日本のみなさん、サバイディ~♪

4/28に日本を出国。僕にとっては12日間という短いラオス旅を終え、日本に向かっている飛行機の中です。

今回も毎度のことながら、仕事ではない作品作りの旅なので、お気楽そのもの、毎日写真撮影三昧、GW大満喫ヤッホィ~~~!!のハズでした。当初の目論みは脆くも初日の飛行機に遅刻ギリギリ搭乗から始まり、日本円ほぼ無一文での海外出国、そしてパソコンのACコードを日本に忘れてくるという、ほぼ完全に自分の準備の悪さからくるドタバタで…いやぁ、ホントに大人として、撮影旅行が『ストラァ~イク~アウトッ、ゲームセッ!!』のはずでしたが、どうにかこうにか、首の皮一枚繋がっていて、なんとか旅をいい気分で終えられるのは、12日前には考えられなかったことです。終わりよければすべてヨシ!っていい言葉ですね。


最初の数日間は、日本でおさめてくるはずだった原稿に追われまくったり、けど、パソコンのACコードが無いので、いつまで電源持つがわからないし…そんな中、こちらで書いた原稿量が13ページ分もあったのが夢のようですよ。あれがホントに夢だったら、どんだけ撮影を満喫できたことか…いや、そんなことは、日本を出国前にやっておけ!という感じですよね、えぇ、わかっているんです。わかっているけどできないのが、ダメ人間なのですが。次回からは必ずそうします…はい、今は強くそう思っていますので。それでも人生初の(?)iPad miniで原稿書きしたりして、なんとか雑誌の連載も真っ白くならずに済みそうです。ということで、最初は人生最大級のピンチに感じていましたが、終わってみるとそこそこぐらいのピンチぐらいだったのかも??だいたいのことは、いろいろがんばればなんとなかるもんですね。【ノートパソコンが無くても、最悪、原稿を書いたり、送ったり、校正したりすることができる】という、どうでもいいスキルがアップしたんじゃないでしょうか。


さて、じつはラオスには年に1~2回ぐらいのペースで通っています。ラオスといっても、ほぼ目の前はカンボジアという、ラオスの中でもド田舎。タイのバンコクから国内線をもう一本乗って、そんでもって、バスやトゥクトゥクを乗り継いで陸路で国境を越えて、そしてボートまで乗り継いで、日本出発からほぼ20時間…の小さな島。歩いて1時間もあれば一周できてしまうぐらいのこの島が僕のラオスで一番好きな場所。行き始めた時には電気も来ていなかったこの島に、今では僕を見ると、『オォオ~!ユゥ、カムバァーック、アゲン?』と聞いてくるラオスの友人がたくさんできました。『ハゥメニー?』と聞かれて、自分でもちゃんと答えられないけれど、たぶん7~8回は来ていると思います。今まで行った外国の中では、一番訪問回数が多い国じゃないですかね、ラオス。それにしては全然意思疎通できないんですが。困ったもんです。でも、100円で借りた自転車であぜ道を走っていると、いろんなところから、『サバイディー!』って聞こえてくる気持ちよさ!なんでしょうかね、この気持ちは。山で登山者同士が、『こんにちは~』って挨拶する、アレにちょっと似ているような気がします。これだけでも行く価値があると思うんですよね。

今の時期のラオスは、田植え前の時期なので、田んぼは荒れまくってて、景色は植物の緑より地面の茶色が目立ち、また気候も安定していないから、スカっと晴れた空はあまり見られませんでした。雲が多く、そしてものすっごい暑い!僕が泊まっていたバンガローは一泊40000キップという、500円ぐらいの宿なのですが、大きなダブルベッドに蚊帳が釣ってあるだけの部屋。もちろんトイレやシャワーは部屋にはついていないですよ。天井にあまり動きがよくない扇風機がついているだけで夜は暑くてムシムシして汗かきまくり。でも窓、というか、ガラスはないけれど柵だけの木の窓を開けようにも、開けたら今度は無数の小さな虫の襲撃で恐ろしいことになるので、開けることもできない。。。しょうがないので、顔にウエットティッシュを置いて寝たりしていました。部屋にはでっかいゴキブリが2日に一回ぐらいは御訪問してくれますが、もうそんなのにも慣れました。ゴキブリぐらいでは死んだりしませんから。ところでアジアのゴキブリって、日本のよりも動きがノロいですよね。あれは大きいからでしょうかね?それとも日本のよりもいろんな意味で危機感がないから??サンダルで殺そうと思えば、絶対に殺せるようなノロさです。あとの掃除がメンドイので、殺さないですが。でも、お寺で遊んでいる時、頭の上に落ちてきた時は『チックショ~!!』って思いましたがね。あっ、そういう流れで言うと、この島は水牛がとても多いので、当然のことながら道を歩いていると、いっぱいウンコが落ちています。昼間ならうっかりしなければ大丈夫なんですが、真っ暗な夜とか、急なスコールが来てどこが地面で、どこが水たまりかわからなくなる時などは、全然大丈夫じゃないことがあります。全然大丈夫じゃなくても、撮影に支障があるか?、と言われたら全然ないので、全然大丈夫なんですが。

シャワーも当然ながら水しか出ないし、その水も真っ茶色のメコン川から吸い上げている水です。でも、一日汗びっしょりになった後、浴びるシャワーはめちゃめちゃ気持ちいいんですよね。シャンプーをして、その泡で体も一気に洗って汗を流しながら、着ていた汗でびっしょりのTシャツとパンツもついでに洗ってしまって干しておけば、次の日にはもうすっかり乾いています。だいたいの場合は、夜にいっぱい小さな虫が濡れたTシャツについていたりするので、朝はパタパタと払わないといけません。

今回の旅は、EOS-1DXとEOS 5D MarkIII、レンズは5本持ってきました。めずらしく17-40mm、24-105mm、70-200mmのズームトリオと、話題のシグマのArtラインの35mmと50mm、そしてテレコン1.4倍。あと、ライカMモノクロームにズミクロン35mm。出番が多かったのは、24-105mmと、シグマの50mmでしたね。いつもは14mmを持ってくるところを、17-40mmにしてみましたが、こちらはあまり出番が多くありませんでした。やっぱりここは14mmを使うぞ~!という気持ちと、なんとなく広角ズームでも…という気持ちとは違うんですよね。次回はやっぱり超広角は便利なズームじゃなく、不便のように思える14mmにしよっと。そして70-200mmもあまり出番が無かったなぁ。街や場所によって、使い勝手のいい焦点距離って変わると思うんですよね。広角がハマる場所、望遠がハマル場所、それぞれ国や気分によっても変わっていくと思うんです。今回のラオスでは望遠が全然ハマリませんでした。とはいえ、持ってこないで済むかというと、これもまだそこまでは思い切れない訳で(笑)

でもって、今回出番が多かった24-105mmや50mmなのですが、これはきっと今回は『サバイディー!』って挨拶があってから撮影することが多かったので、その距離感の中で写真にするとなると、どうしてもこのあたりの焦点距離になっていくのでしょうね。相手の懐に入ってから撮影するのか、相手をそっと見守るように撮影するのか、それによって当然レンズの使い方…というか、撮影する距離感も、そしてできあがりで表現できるものも変わってきます。それを考えないで、『高倍率ズームがあればなんでも撮れる!』なんて簡単に思ってしまうのは、ホントの意味ではなにも考えずに撮っているのと同義語?紙一重??…便利なほど便利じゃないんですよね、きっと。うまい人が使えばいいわけですが、そうでない人は、旅で何かを見つけたい時には、極端に言うならズームなんてキッパリやめて、単焦点を使うべきだと思うのです。だから…ということではないんですが、そんなことも理由のひとつで、僕は旅でも単焦点レンズを多用しているんですよね。

僕が旅に出る1時間前に到着した、シグマのArtラインの50mm…。このスペック的には50mmのF1.4というなんでもないレンズなのですが、とにかくレンズの描写はなかなかうならせるものがありましたね。レンズの評論家ではないので、どれとくらべてどうかとか、レンズのタイプが何群何枚でなんちゃら式だから…なんてことにはあまり興味がないし、語れるほど詳しくもないんで、そのへんのことは詳しい人に全力でお願いしたい気分ですが、撮影した画像を見ると、『うむ、シグマ、やりおるのぉ!』と思うに十分なレンズでしたよ。このレンズ、1月下旬に、発売前のものを使わせてもらっていて、その写真はすでにCP+でも何枚かお見せしていますが、その時はまだベータ版の前の前の前の前…くらいな、相当初期状態で、いろいろアレな部分がアレだったり、アレだったりで、アレな部分もアレだったのですが、でも、その時から描写にはキラリと光るものがありました。これは製品版になったらどのくらいすごいかなぁ~と楽しみにしていました。それから3ヶ月が過ぎ…ようやく製品として完成して、おめでと~!!このちょっぴり大きく重たいレンズは、ちょっぴり外見から損をしちゃっているかもしれないけれど、でも、画質には大満足です。外見で撮れる写真は変わりませんが、画質で写真は変わります。わずかなボケ味の差、ほとんど違いがわからない線の細さ、見た目にはほとんど同じヌケ具合…L版プリントやモニターでブログサイズでしか写真を見てなかったらほとんどどれも同じような差しかない機材の違いも、撮り手がどこまで求めかによって、その差がしっかり出て来てしまうんです。今まで撮りっぱなしだった人はプリントをしてみることで、2Lで満足していた人はA4にしてみることで、A4プリントしていた人はA3ノビしてみることで、一度大きなプリントを作ってみることで、写真展をやってプリントそのものを評価されてみることで…求める画質はちょっとずつ変化していくことでしょう。それにあった機材、レンズなどを選んでいけばいいわけです。

【Artラインの50mmで撮った写真です。】

機材のことばかり書くと、なんだか仕事っぽくなるのでヤーメタ(笑)

じつは今、体のいくつかの部分、首回りや肘などの、デリケートな部分(?)がかぶれちゃってます。どうしたんでしょうかね。汗疹なのか、それともなにかの悪い病気なのか???メコンの水が合わなかったのかなぁ。まぁ、なんも薬がなかったので、ツバでもつけといたのですが、全然治りませんでした。いや、むしろツバが良くなかったのか、あまりよくない感じになっています。しょうがないので、帰ったら病院でも行かないといけないかも。そうそう、ラオスといえば、二年くらい前に来た時には、犬にプチっと噛まれたことがありましたね。いやぁ、ホントにちょっとだけ血が出ただけだったのですが、ツイッターで『今、ラオスで犬に噛まれちゃった(笑)』って面白おかしく書いたら、すごい数の『狂犬病、マジやばいっすよ!』という内容のメールやメッセージをいただいたのを思い出します。あれがあったから成田空港に着いてすぐに病院に行って狂犬病の注射を計6回も打つことになり、そのおかげで今、なんとか生きています。

あとですねぇ、ラオスの島にはじめてできた美容院(というか、床屋?)に行ってみました。30000キップという、400円ぐらいだったのですが、バリカンで一気に短くされました。やっぱり仏教の、お坊さんが周りにたくさんいる国で、『ショート、プリーズ』っていうのはいろいろな問題をはらんでいますね。おかげで髪を洗ってから乾かすのに10秒ぐらいで済むようになりました。中学生以来の坊主頭ですが、これはいろんな意味で病みつきになる魔の髪型ですね。

そんなわけで、体的にも、外見的にも、ボロボロの状態、ある意味、満身創痍になっちゃってます。帰国に際してラオスから再び陸路でタイに入り、タイの田舎に一泊したのですが、あまりに疲れちゃったので、数年ぶりにフットマッサージに行ってしまいました。うっかりホテルの近くにそんなお店を見つけたのです。1時間150バーツという、450円くらいのお店だったのですが、やってくれる男性(これ、めずらしくないですかね?結構マッサージ屋さんって、女性が多い印象です)がとてもニコニコしながら対応してくれました。こんなお店が家の近所にあったら、毎週行っちゃうでしょうね。しかも値段も日本の1/10以下ですよね?日本で行ったことがないのであまり詳しくないですが、やっぱりアジア旅の夜は、フットマッサージが一番楽しいです。

そのタイのホテルは、1泊400バーツという、1200円ぐらいのホテルですが、これまでラオスの島での生活にくらべて、部屋にエアコンがあるわ、テレビはあるわ、シャワーがあるわ、シャワーもお湯がでちゃうわ、ゴキブリはでちゃわないわ、バスタオルもあるわ、ベッドがフカフカだわ、ネットにも繋がっちゃうわで、最高に素敵すぎて、素敵死しそうでした。ウボンラチャタニーという空港から歩いていける、一番近い、周りの民家と違ってそこそこホテルっぽく見える…つまりはゲストハウスじゃなく、ちゃんとした外観のホテルっぽいホテルなのですが、超ベリーイージーな英語もさっぱり通じないという神っぷりな営業で、ここはいったい誰が泊まっているんでしょうね??


その部屋についてぼんやりしてさっきまでいたラオスのことを思い出していたら、FBに『明日、バンコクの空港に襲撃に行きます!』っていうメッセージが。しかも二人から。一人は今回の旅の大恩人でもある、最近バンコクに住み始めて、そのバンコクからわざわざ24時間かけて僕が忘れたACアダプターをラオスまで届けに来たおかげで恋を見つけた(と書くと、語弊があるかな??)熱帯写真家の中島さん、そしてもう一人はバンコクに気がついたらずーっと前から(もう10年以上?)住んでいて、どういうわけかタイのオリンピック関係の写真もオフィシャルカメラマンとして撮っているスポーツカメラマンの安藤くん。最近、ふたりはバンコクでとても仲良くされているそうで、そろって襲撃を計画してくれた模様でした。僕のトランジット時間を考えると、一時間くらいしか時間もないので、わざわざ空港まで来なくてもいいですよ~とメッセージしたら、『いけず~』って(笑)どんなやねん!!でも、こうやって、突然にわざわざ会いに来てくれるのってうれしいものですよね。3人お互い、距離的にも環境的にも全然違う生活をしていますが、それでもみんな写真の世界で勝負をしている人だからこそ、お互いの近況を話し合って、そして情報交換して、そんで『ACアダプターを忘れるなんて、超ダメダメですよ!あっ、でもそういえば僕も撮影現場についてカメラ見たら、バッテリー入ってなかったこと、あったなぁ(笑)』『今度はどこに届けましょうか?』…そんなふうに、三人でののしり合ってたら(?)、あっという間に一時間ちょっと過ぎてしまい、またもや飛行機ギリギリに…中島さん、安藤くん、ホントにありがとうね。短い時間でしたが、お会いできてよかったです。お互いこれからも、忘れものには気をつけて、撮影していきましょうね。そして、今日の話の続きをお互いから聞かせてもらうの、楽しみにしていますので!日本からお二人のご活躍、ささやかながら応援しております。なにかあったら、いつでも相談くださいね。バッテリーを届けることはできないかもしれませんが。


一年の1/3が終わってしまいましたね。クリスマス→お正月→成人式あたりにナウルを、そして3月にアフリカを旅してきて、今年予定している旅は、あと6月、そして8月は決まっています。あとは年末まで行けないだろうなぁ。ということで、下半期はあまり海外には出ません。なぜなら写真展があるからです。今、みなさんにはキヤノン(銀座→仙台→名古屋)と72ギャラリーでの写真展ダブル開催をすでにお伝えしています。そこに向けて、そろそろ本気でいろいろ取り組んでいかないと準備がヤバそうです。写真展の準備、本気になればなるほど、やることもいっぱいあって、それに追われる毎日…そしてじつはまだ内緒にしていることもあるんですよね。それについては、近々にまたこのブログでもみなさんに報告させていただきますので…とにかく去年までは撮って撮って撮りまくる、インプットに重点を置いてきましたが、今年はぜひアウトプットをがんばっていく年にしたいと去年から決めていますので。とにかく今後のコザワの活動にも、多大なご声援、どうぞよろしくお願いいたします。

ということで、飛行機はすでに沖縄上空を通過してします。もう一時間もすれば羽田空港に到着ですね。明日からの撮影に備えて、ボロボロになった体も休めたいし、旅の後処理(洗濯とかデータのバックアップとか)もあるし…でも毎度のことながら、旅が終わった直後は、やりきった感でいっぱいです。もうこれ以上撮れんだろう…と。でもあとからデータを見返すと、『全然だめじゃ~ん!!』って間違いなく思うはずです…そう思うから、また旅に出ちゃうわけで…それが僕が旅に出る理由です。