一から順に見直し、最後に本歌取り(本歌の一部を取って新たな歌を詠み、本歌を連想させて歌にふくらみをもたせる技法)をして、今の時代の短歌を作ってみます。
本歌取り その84
その84 ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂(う)しと見し世ぞ 今は恋しき
藤原清輔朝臣(ふじわらきよすけあそん:1104~1177) 藤原顕輔(あきすけ)の子。
六条家の一人として歌学・作歌にすぐれ、「袋草子」 「奥義抄」 の歌学書があり、勅撰集入集歌は八十九首。
「出典」 題しらず 新古今集・雑下
「歌意」 この先も生きながらえれば、この頃のことももう一度懐かしく思い出されるのだろうか。
昔、つらいと思っていたときでさえ今では恋しく思われるのだから。
「主旨」 つらく苦しい現実に対するささやかな慰めを見出そうとする心情。
「鑑賞」 「憂しと見し世ぞ今は恋しき」 という下の句によって、そのころはたえがたくつらかった過去を、今はなつかしむ心境になっていることを、現在の心の支えにしています。
しかし、つらかった過去を楽しんでいるのではなく、苦しかったからこそ、今も深く心にしみついて懐かしまれている。
だから、それを知りつつ、「ながらへばまたこのごろやしのばれむ」 と、現実の苦しみにたえようとしています。
ながらへば: 今後も生きながらえたら。
また: やはり。 もう一度。
このごろやしのばれむ: 今のことが懐かしく思い出されるだろうか。 「や」 は軽い疑問。 「む」 は推量
憂しと見し世: つらいと思っていた過去。 「みし」 の 「し」 が過去を示す。
本歌取り
古希からの しあわせ探し
「ながらへば 孫の喜ぶ 絵を描きし 俳画や歌の しあわせ探し」
毎日、楽しく続けています。